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7 「私」が命を捨てることには、何一つの迷いも無かった。

「魔法剣・フラッシュフレイム!」


 ミネルの握る剣の刃先へと業火(ごうか)(ほとばし)る。


 互いの眼光が互いを捉え、戦いの火蓋は切られた。


 地竜の凄まじい咆哮(ほうこう)が空間を反響し、辺りに散らばっていた岩石が宙を舞う。


 その全てがミネルへと襲い掛かり、斬撃と交錯(こうさく)して焼き切れ、粉塵(ふんじん)と化す。


 威力においては互角の攻防だが、ミネルの方が明らかに消耗が激しい。


 ただでさえ、剣の輪郭に寸分(たが)わず魔力の形を重ねるという、魔法剣の維持には高度な集中力が求められている。


 魔法剣の効果が一瞬でも切れて、再び発動させるまでの隙を突かれれば、ミネルは確実にやられる。


 即ち、ミネルの勝ち筋は、短期決戦のみ。


「ここで、決める!」


 降り注ぐ岩石の軌道を捉えたミネルの視界。


 疾風の如き身のこなしで攻撃を躱し切り、地竜に向かって一直線に駆け抜け、跳躍する。


「いけるぞ!ミネル!」


 落下の勢いと全開の火力を乗せた一撃を込めて、ミネルは地竜の頭部目掛(めが)けて剣を振り下ろした。


 解き放たれた業火が刃から溢れ、踊り狂う火花が閃光を散らした。


 しかし、その刃は地竜に届かなかった。


 岩石で築かれた防御壁が、地盤を真下から突き破るように、地竜の目の前に立ち塞がっていた。


 斬撃の威力を完全に殺されたミネルの剣から、魔力が消える。


 焼き崩れた防御壁の向こう側から、嘲笑うような地竜の眼差しが光る。


「ミネル!後ろに避けろ!上からだ!上から来る!」


 ミネルの真上から降り注ぐ巨大な大岩の不意打ち。


 着地して回避する余裕も無く、覆い被さるように眼前へと迫る大岩に向けて、剣を構える。


「ミネル!」


 重厚な衝撃がミネルの細い腕に()し掛かり、火花が眼前で散る。


 耐え切れずに剣が弾かれ、大岩はミネルの右腕に衝突しながら軌道を()れて、地盤を転がって砕けた。


 ミネルは仰向(あおむ)けになって、倒れ込む。


 流血に包まれた右腕は、もう動かせない。


 剣は視線の遥か遠くで、大岩とぶつかって刃毀(はこぼ)れしたその刃を銀色に光らせている。


「ミネル!早く立て!立ってくれ!」


 牙を剥いた地竜が足音と共にミネルへと迫り、大きく口を開く。


「フレイム――――」


 同時に、火の粉の形をしたミネルの魔力が、掌に収束し始める。


 開花寸前の蕾の如く、魔法を創り上げていく。


 残された可能性に全身全霊を賭けて、指向性を持った爆裂の波動攻撃を瞬時に形成する。


「――――ノヴァ!」


 掌から放たれる輝きが最高潮に達した刹那(せつな)、ミネルの視線は地竜を外れて、遠くから様子を見守っていたアルフへと注がれる。


 地竜がその巨躯の重みで圧し掛かるようにして噛み付こうとする寸前、何一つの迷い無く、ミネルは魔法を解き放つ直前の掌をアルフの頭上に向けた。


「え?」


 アルフの頭上から落ちてきていた大岩、ミネルの右腕を再起不能にした一撃を上回る、必殺に相当する威力のものが、影すら残さず爆散し、目まぐるしい光を放つ。


 直後、地竜の牙がミネルの身体を深く、深く裂いた。

[ご連絡]

コロナの症状が回復してきたので執筆ができるようになりました。

なので、投稿できる日には午前10時にも投稿したいなと思います。

もしかしたら勝手にやめることになるかもしれませんので、ご了承ください。

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