4 かけた迷惑の数なら俺が圧勝だ!
アルフは、筋力にだけは自信があった。
自分の伸ばせる分野がそこだけだからと、理由は情けないものの、貴重な長所である以上は今まで鍛え続けてきた。
「はぁ...はぁ...見つけたぞ、ミネル!」
だから、ラルクスより早くミネルを見つけることが出来た。
「アルフ、さん!?」
ミネルがいたのは、周囲と比べて天井が少し高い、ところどころが苔に包まれた岩場だった。
「ごめんなさい、勝手に出歩いて。ただ、少しの間、気持ちを落ち着けたかったというか...いや、迷宮で単独行動なんてもはや自殺行為ですよね!何やってるんだろう、私...迷惑をかけるはずじゃなかったのにな...」
表情を伏せて、落ち込んでいる様子のミネル。
「なるほどな。でもまあ、それ分かるよ。周りに誰かいると気まずくなっちまうよな。でも自殺行為っつってもなあ、そもそもここ、超高難度のSS級だぞ?ミネル一人でも俺たち二、三人でも、その難度に相当する魔物に襲われたら余裕で死ねるしな!」
「そんなネガティブなことをポジティブにひけらかさないで下さい!」
「それに、かけた迷惑の数なら俺が圧勝だ!」
「ふふっ...ですね!」
堪え切れなくなり、思わず吹き出して笑い出すミネルに釣られ、不意にアルフも笑ってしまう。
「本当に、変わっていませんね。出会った時から」
緩やかに互いの笑い声が収まったタイミングで、ミネルは懐かしそうに、静かにそう呟いた。
そして、二人の間に流れる静寂を、何かの気配が掻き消した。
「お前ら、今すぐそこを離れろ!上から気配が複数くる!俺たちの中でまともに戦える戦力はミネルしかいない!そこから早く逃げるんだ!」
ラルクスの声が響き渡る。
「アルフさん、危ない!」
いきなりミネルに片腕を脇ごと掴まれたかと思うと、直後、投げ飛ばされる。
それから一秒も経たない内に、自分のいた位置に瓦礫が降り注ぐ。
その光景を、アルフは宙を舞いながら目にした。
「なんだ、こいつら...大きい!」
岩のような硬い図体を持った地竜が十数匹、瓦礫の山へと一斉に降り立つ。
唸り声を上げながら、一斉にアルフとミネルへと襲いかかった。
面白かったら☆を送ってください!
感想を書いてくれたら(基本的に)返信します!