3 俺は一体、何をしているのだろう。
「――――さん!アルフさん!良かった!ラルクス、アルフさん起きたよ!」
「全く、よりによって使えん荷物持ちと同じ穴に落ちるとはな」
アルフが重い瞼を開けると、ラルクスの握る松明の灯りが視界に飛び込んでくる。
「ここは?俺たち、どうなったんだ?」
身体を起き上がらせ、周囲を見回しながらアルフは尋ねた。
「アルフさん、ここには私とラルクス、そしてアルフさんの三人しかいません。私たちは真上から落ちてきたんです」
「まっ、真上?」
「はい。奇しくも、風魔法の扱いに長けていたラルクスが一緒だったお陰で、私たちの身体が地盤に衝突する前に落下の勢いをしっかり緩和してくれたので、三人とも怪我は無さそうです」
「そう、だったのか」
もしも、支援系魔法のエキスパートであるラルクスがいなかったら、決して無事では済まなかった。
またしても、アルフは心の中で、無力な自分を呪った。
「どこか、体調に異変はありませんか?私も急に身体が落下したので、意識を失いかけました。少し、具合が優れないんです。ここは十分に身体を休めて、そのあとに方針を決めませんか?」
「うん。そうしよう」
またしても、自分に対する怒りを顔に出すまいと、アルフは懸命に笑顔を作った。
エミリーは、無事だろうか。
焚火に当たって寝そべりながら独り、アルフは何度もそう考える。
エミリーとは、同じ村の出身であり、親友だった。
同じ街のギルドに加入し、同じパーティに入り、同じ場所を冒険した。
それなのに、差は開いていく。
エミリーには、魔法の才能があった。
全系統に適性を示した逸材。
逸材の周りに集まる人間もまた、単なる凡人のはずが無い。
自分の周りから遠ざかる背中を、いくつも眺めてきた。
それでもエミリーは優しかったから、見捨ててくれなかった。
『みんな、アルフはこのパーティに必要だよ。アルフが重たい荷物を背負ってくれるから、いざという時に救える仲間の命がある。アルフはとても優しい人だから、きっとみんなの力になってくれる。だから、お願い。アルフを追い出さないで』
けれど、アルフは分かっている。
きっと、いつかこのパーティから追い出される日が必ず来る。
そうなる前に、自分でエミリーの下を離れなければならない。
なのに、今の自分は何をしているのだろうと、アルフは思う。
「おい、雑魚煩悩最弱荷物持ち野郎」
「え、なんて?」
濃縮された悪口を背後からぶつけてくるのは、ラルクスだった。
「ミネルは、どこに行った?」
アルフは咄嗟に身を起こす。
その背中を、冷や汗がなぞった。
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最近、熱と咳が酷かったのでpcr検査したら陽性だったため、ここのところ執筆に取り組めていません。
ストックが残っている内は連載できますが、ストックが尽きた場合は連日投稿ができなくなるかもしれません。
それまでに治ったらいいなあ、と思っています。