2 SS級迷宮、崩落。
エミリー率いる六名のパーティによるSS級迷宮探索が開始された。
今が昼なのか夜なのかも、深い地下からでは知りようも無く、ただ半日が経過したことしか分からない。
「反応が出た!後方600メートル、左から来る!」
そう叫ぶのはパーティメンバーの一人、アルフより一回り小柄な青年のラルクス。
周囲の生物が放つ気配を立体的に捉える探知系統の魔法、それを常時発動し続けることで魔物による奇襲を未然に防いでいる。
後ろを振り返ると、大蛇がその巨躯をうねらせながら刻一刻と迫っていた。
「私が斬り込みます!エミリーさん、援護で仕留めてください!」
即座に剣を抜いて、駆け出したのはミネル。
「分かった!皆も、ミネルに続いて!」
ミネルの全速力が乗った鋭い突進と共に切っ先が大蛇の腹を刺し、鮮血を噴かす。
後続の数人も安定した動きを重ね合わせ、連携して斬撃を刻み込む。
「魔法を撃つ!みんな離れて!シャイン・バーニング!」
真っ白い閃光の筋が何本も、エミリーの突き出した掌から前方へと射出され、大蛇の急所である喉元に収束していく。
破裂した肉片が赤く舞い散り、断末魔が暗い地下を反響した。
「やっぱ、すげえな.....」
大蛇を一方的に討ち破った一部始終を、目の前で眺めていたアルフ。
自分に出来ることは何も無い。
きっと、仲間がどれだけ追い詰められても、一歩も動けやしない。
動いた所で、邪魔になるからだ。
どれだけ頭と身体で分かっていても、それでも無力さが心を締め付ける。
「ミネル、さっきはありがとうね。あなたが真っ先に挑んでくれたお陰で、魔法を創る余裕が生まれた。あれほど大きな魔物がいきなり現れても物怖じしないあなたには、尊敬するわ」
「そんな、エミリーさん。いつものことですよ。先手必勝あるのみ!そういうところが私の取り柄なんですから」
炸裂系光魔法により無惨に抉られた大蛇の遺体へと、アルフは視線を置く。
そこからは、今も血が溢れ出て、赤黒い水溜まりを広げている。
あれだけ大きな怪物を、エミリーは掌をかざすだけで仕留めることが出来た。
もしも、ここにいるのが自分一人だけだったなら、どうなっていただろう。
成す術無く、食い殺されていたに違いない。
想像するだけで、死という存在がこちらに近づいているように感じた。
「ラルクスもありがとう。あなたがいるからこそ、私たちは安心して戦えたわ。これからも―――」
その言葉を遮ったのは、地鳴りだった。
「エミリー!魔物の気配じゃないぞ!これは――」
ラルクスの声を最後に、軋みだした地盤が崩壊し、アルフの視界は湧き上がるような暗闇に呑まれた。
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