11 待ち伏せの先客
魔界都市の城壁が地平線の最奥から湧き上がる。
「見えてきた。あそこが王都だよ」
「ようやくかよ...」
青色の屈強な筋肉に、黒く鋭利な骨格を纏うアルフの身体は、ゴブリンの大男を背負いながら平野を走り抜けていた。
「てかなんでお前は走らねえの!?」
「いや君、スタミナも脚力も俺の数十倍はあるじゃない。走った距離が五キロを超えた辺りでさ、感じたんだよね、種族格差を。浮き彫りにされた、古来より魔界に蔓延る社会問題を。あの時さ、これくらい準備運動ですよねって感じの息遣いだったよ、君」
「俺、息遣いで煽った覚えないんですけど!?というか、別にペース落として欲しければ落とすし、別に休憩したければ休憩するくらい全然良かったんですけど!」
「劣等種族のプライドに懸けて、なんか嫌だったから張り合ったまでさ」
アルフの肩の上に跨りながら、ゴブリンの大男は爽やかな雰囲気で意味不明なことを言い除けて見せる。
「何そのかっこつけ方。うざいです」
そんなやり取りを交わしながら、魔界都市へと辿り着いた二人。
「ようやくここまで着いた~」
一軒の宿屋を前にして、ゴブリンの大男は誇らしげに言い放つ。
「じゃあそろそろ俺の肩から降りてもらえます?」
「ああ、ごめん。忘れてた」
アルフはコブリンの大男を肩から降ろすと、さっそく宿屋の扉をこじ開け、中へと入っていく。
「身体が大きいせいかな。なんか若干狭く感じるな」
「まあ、それは仕方が無いよ。俺たち大型種に対応しているとは言っても、ロビーは共通の広さになってる訳だし、まあ個室の広さは問題無いと思うよ」
ゴブリンの大男が受付の初老から部屋の鍵を受け取り、アルフを先導して廊下を進む。
「ここっぽいな」
アルフの声に頷くと、差した鍵を回して、解錠する。
「ふぅ~!つっかれたぁ~!」
こじ開けた扉の奥に広がる床と壁、そして天井。
部屋に佇んでいたのは、壁沿いに置かれた寝具や照明、最低限の家具と
―――――
「おかえりなさ~い。脱走兵くん」
見慣れない、少女の人影だった。
柔らかく弾力のありそうな青髪のボブショートヘア。
見た目は人間だが、一度、人間を辞めたアルフには直感的に分かることがあった。
「我の名は魔界王アイリ。この魔界を統べる者である、って訳でよろしく」
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