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第十八話

 「……や、やりました?」



 噴煙が去り、悪魔の遺体が完全に消滅するのを残心しながら見守っていたケイトリンは安全を確認すると、即座に踵を返し虎市の元へと走った。



 「トライチさん! 大丈夫で……すか……?」



 駆け寄ったケイトリンは虎市の姿を見て眉を顰めた。

 それは彼の吹き飛ばされた筈の肩口からの左半身が光を放ちながら再構築されていく様を目の前に見せられたからだった。

 傷が癒える。



 「……何とか……賭けに勝ったか……」

 「トライチさん!? 大丈夫なんですか?」



 呼吸を取り戻し倒れ伏したまま荒々しく空気を吸い込む虎市に、ケイトリンは近づいて身体を抱えあげて起こす。

 虎市は完全に再生した左腕を右の手で撫でると、深い安堵の息を吐いた。



 「あのアイテム、ちゃんと回復してくれたんだな……文面だけで使ってみたら思ったのと違うとかならないで本当によかった……」

 「あのアイテム、ですか?」



 ケイトリンの問いに虎市は懐から首飾りを取り出す。

 下げられた紅玉は黒ずみ、やがて二人の目前で崩壊して砕けた。



 「例の宝箱から出てきたカードだよ。鑑定完了したらコレになった。一発までなら受けたダメージを即時回復する護符(アミュレット)って文面だったから使用したんだが……ほぼ致命傷でも効果があって本当によかった。肝が冷えるぜ」

 「え、そんな強力なトレジャーだったんですかソレ?」

 「お高いんだろうなぁー、まぁ使わざるを得ない状況だったんで使うしか無かったわけだが」



 ぼやきながら虎市は身を起こし、ふらつきながら姿勢を正した。

 傷は癒えたが出血の補填で戻った血液の循環がまだ完全ではないのか、貧血のようなげっそりした感覚を覚え頭を振る。



 「敵の攻撃を受ける代わりに相手に必中の反撃を加える《相打ち(トレードオフ)》……コレ以外で俺がレッサーデーモンに一撃を加える方法はなかったし、トレジャーがこの護符で本当に運が良かったな。今後の運気を全部消費した気分だ」



 《相打ち》。それは【★剣聖】によって習得出来る職能技能であり、その特性は必中……大きなリスクを被る代わりに確実に相手に攻撃を加えるハイリスクハイリターンの大技である。

 圧倒的に実力の足りない虎市にとってこの職能技能こそが唯一レッサーデーモンに攻撃を命中させる手段であったが、これが機能したのは(ひとえ)に猫神の神聖武器とダメージを事実上無効化する護符、この二つの存在があってのものだった。



 「リビルド前に習得していた特徴の『幸運の星』がトレジャーの引きに効いていたのかもなぁ。後でまた取り直しておくか」

 「奇妙な男なんぬ」



 虎市がぼんやりとそんなことを考えていると、トコトコと白猫が近寄り声をかける。



 「あやしげな手段で能力を変異させる等、尋常のものとは思えないんぬ。あやしいメンズなんぬ。だがそれよりも」



 ネコは中空を肉球で叩く所作を取る。すると二人の眼前に再び謎のウィンドウが投影された。



 「よろしければ高評価と信仰登録お願いしますんぬ〜」

 「高評……なに?」

 「この男あれだけ()の神威の恩恵に預かっておいて恩義も信仰も高評価もなしとはとんだ不義理の擬人化なんぬ。お前に未だほんの一欠片ほどの人間性が残っているのであればさっさと押すんぬ」

 「いや何か知らんが滅茶苦茶罵倒されてるけどじゃあそうしますで済まない感じのワードが散見されるんで流石に躊躇するかなぁ……」

 「別に取って食うわけでもなし昼飯の献立決めるくらいの気軽さでスッと押すんぬ。ちょっと所属宗派が()の奴になるだけなんぬ」

 「いや駄目だろ、どう考えても違法宗教勧誘じゃねーか!」

 「ノー()(ロー)の神なんぬ全く違法性はなくご安全なんぬ、言いがかりはやめたまえんぬ失敬ぬ!」



 すったもんだ揉めているネコと虎市だったが、それを眺めていたケイトリンはぽつりと言葉を漏らす。



 「え、そのネコさん……神様なんですか?」

 「お、第一理解者発見〜。はい神ですぬ(イエスアイドゥー)

 「何か自称はそうらしいんだがどうにも怪しいというか……とはいえ実際それらしい力で助けられてるからな……」



 唸り顎を撫でる虎市。だが次の瞬間ある事に気づき、叫んだ。



 「神……そう、神か! つまりお前が俺をこの世界に召喚したのか!!」

 「ぬぇっ?」



 突然大きな声を出されてびっくりしたネコは怪訝そうに声を上げ虎市を見る。



 「俺はお前がこの世界に呼出した勇者たちの召喚に巻き込まれてこっちに飛ばされたんだよ。完全に事故案件でお前らも気づいてなかったんだろうが……ともあれ、主犯が見つかってよかった。これで帰る算段も付きそうだ」



 ほっと胸をなでおろす虎市。

 だがそれに対してネコは人間めいて怪訝そうに眉をひそめ言い放った。



 「えっナニソレ知らんぬ」

 「は? ……いや、神なんだろ?」

 「()が神である事は全くその通りなんぬ。だがお前がどっかから召喚されたとかそういう話とは一差一切存じ上げませんぬ。無関係ゾーン……」



 そもそも、と。ネコは地面をしっぽでペシペシ叩きながら言葉を続ける。



 「()はこの世界の神ではないぬ」

 「は?」

 「何か変だと思ってたんぬがお前の言葉で大体察したんぬ。()も恐らく召喚されたクチなんぬ。よりによって()の神社ごとなんぬ」

 「な……」



 虎市は絶句した。まさか自分以外の被召喚者がおり、しかもそれが神であるなどと急には飲み込めない。想像の埒外であった。



 「じゃあお前も巻き込まれて一緒に来たっていうのか!?」

 「ソレに関してはノーんぬ。何故ならばお前と()は所属世界が違うんぬ。これに関しては気配とか霊質とかで分かるんぬ」



 ぬぬん、ネコは首を傾げ思案した。

 周囲を見渡し、何事かを確認した後に再び告げる。



 「とはいえ、()が何故召喚されたのかとかそういうのもまた不明なんぬ。それに関しては……」



 そこまで話し、ネコはやおら立ち上がると虎市達に背を向けあるき出した。



 「おい、何処行くんだ?」

 「付いてくるんぬ。百聞は一見に如かず、見たほうが早いんぬ」



 それだけ告げてネコはずいずいと先に進んでいく。

 虎市とケイトリンは顔を見合わせると、そのまま黙って付いていくことにした。

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