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8.神様 殺しちゃいましたw

「ここはお城の近くです。ウルザ、あなたは良平様に倒されて、今まで気絶していたのですよ」


 パンティがやれやれ、といったふうな感じで、状況を説明する。


 ちょっと、プライドの高いウルザさんを刺激するような物言いやめてよね。


 そのしわ寄せが全部僕に来るような気がするというか、そんな予感しかしない。


「そうでした。面目ありません、姫様。しかし、次に奴と出会う機会があれば、この手で必ずや葬ってやりましょう。それこそ、ぎったんぎったんに八つ裂きにしてやる」


 僕の背中から、「いひひひひ」という如何にも噛ませ犬の悪役が口にしそうな笑い声が聞こえてくる。


 なんとなく分かっていたけど、ウルザさんも頭が残念な人なので、僕に背負われていることに気づいてはないようだ。


「それはそうと姫様。あの強姦魔は今はどこに?」


 おそらくは、どす黒い妄想に浸っていただろうウルザさんは、唐突に我に返ると、パンティに向かってそんな質問をしてきた。


「え? 良平様? 良平様なら――」


 そう言って、僕のほうに純粋無垢な瞳を向けてきた。


 駄目だ。

 頭の残念なパンティのことだ。

 空気を読んで、黙っておくことなんてできないだろう。


 僕は人差し指を口の前に立てて、必死に「シー、シーっ」と、言っちゃ駄目というジェスチャーを行った。


「え? 僕の指先サイズのおっ起したアレを、もう一度ぺろぺろしてほしい、ですって!?」


「誰がそんなことを言った!」


 僕は思わず突っ込んでしまった。だって、パンティがあまりにも頭の悪いこと言うからさ。


「うん、今の声?」


 最悪だ。背中のウルザさんが、僕の声に反応してしまった。


 重い沈黙が降りる。

 これはウルザさんが状況を整理し、僕にまた面倒くさい殺意を向けてくるまでの、魔のカウントダウンの時間だ。


 ウルザさんが如何に打たれ弱いと言っても、この状況で襲われるのは勘弁してほしい。

 それ以前に勝てると分かっていても、攻撃を仕掛けられるのは嫌な気持ちになるものだ。


 近所の幼稚園児に、棒で殴りかかられる毎日を想像してみてほしい。

 うんざりするでしょ?


 ふと、気配を感じた。

 ウルザさんが僕の顔を覗き込もうとする気配。


 顔の左側からそれがくる気配を感じたので、僕は右側に顔を背けた。

 ウルザさんからは変わらず、僕の後頭部が見えるだけだろう。


 次に反対側から覗き込む気配。

 僕は左側に顔を背けて、顔を見られるのを避けた。


 じっと覗き込んでくる視線を強く感じ、後頭部に十円ハゲができそうなストレスを覚える。


 ウルザさんが左側から覗き込む。

 僕は右に顔を背けて、そのタイミングで、今度はウルザさんが右から覗き込んできて、僕は左に顔を逸らし、ひょいひょいといった感じで、僕は左右に首を振って顔を見られるのを回避し続けた。


「だーっ、うっとおしい。ちゃんと顔を見せろ!」


 ついに痺れを切らしたウルザさんが声を荒げ、あろうことか彼女の両手を縛っている紐で、僕の首を絞めてきたのだ。


 ウルザさんを背負っているため、自由になるのは最大でも片手のみだ。

 如何に力の差があると言っても、背後から両手で力いっぱい締め付けてくる紐を取り除くのは困難だった。


「うが、く、苦しい! さすがに死ぬって!」


 僕は思わず舌が飛び出しそうな表情のまま、顔だけ後ろを振り返って叫んだ。


 そして沈黙。

 ウルザさんの目がぱちくりとする。


 あ、しまった。


 僕はクラスで女子に悪口を言われたときにするように、へへっと愛想笑いを浮かべて、誤魔化そうとする。


「き、さ、ま、はーーーーーっ!」


 駄目でした。誤魔化せませんでした。


 ウルザさんはすぐさま鬼の形相と化すと、積年の恨みを晴らすアベンジャーの如く、いったん緩んでいた紐で、再び僕の首を絞めつけてきた。


「うぐ、やばい、死ぬ!」


 僕は割かし冷静に聞こえる鬼気迫った悲鳴を上げると、両手で紐を緩めようとする。

 しかし、その行為が間違いだった。


 僕の両手から降りたウルザさんの全体重が、僕の首を絞める方向に加わってしまう。


 彼女たちは力は大したことないけど、体重は普通の女の子と変わらない。


 重力の力を得た絞力は、僕の両腕の力とひっ迫し、ただぶら下がっているだけの向こうは、持久力という点でも分があり、つまりは僕は結構やばい状態に陥っていた。


「駄目、ウルザ。やめて!」


 パンティの悲鳴が聞こえる。


 そして、何を思ったのか、たぶんウルザさんを止めようとしたのだろうけど、パンティがウルザさんの体に飛びついてきた。

 そして、そのまま全体重を乗せてくる。


「なにやってんの!?」


 僕は泣きそうな声をあげる。

 っていうか、マジでやばかった。


 女性二人分の体重。

 それが僕の首を絞めてくる。


 もうこれ本当に、「パンティってばドジっ子だね。てへぺろ」で済むレベルを超えていた。

 僕になんか恨みでもあるんじゃないの、と疑いたくなるレベルだ。


「死ね、死ね!」


 ウルザさんがリズミカルに感情の直球を叩きつけてくる。

 口で言ってどうにかなる雰囲気はとうの昔に過ぎ去り、もはや実力行使に出るしか助かる道はないだろう。


 僕は紐を握る手を一瞬放し、背後から僕の首を絞めるウルザさんの両腕を掴んだ。

 エビ反りのままその両手を押し広げる。


 グエッと鈍い悲鳴が漏れた。


 しまった。逆だった。

 

 ウルザさんは両手を交差させているからそっちに引っ張ったら、僕の首を絞めることになってしまう。


 僕は慌てて、両腕を押し込めるようにする。

 腕力勝負ならこっちが上だ。


 そして、紐の輪に余裕ができると、僕は仰け反り倒れるようにして、その輪の中に頭を通し、そのまま地面に背中から倒れ、すぐさま起き上がって、ウルザさんから距離をとった。


「く、貴様っ!」


 悔しそうなウルザさんの表情。

 僕は解放された首の感触を確かめながら、久しぶりの酸素を、激しく肺の奥に送り込んでいた。

 そして――。


「良平様っ!」


 鋭い、切羽詰まったパンティの悲鳴が聞こえた。

 周囲からも、ざわざわとした声。


 何かがおかしい。

 僕が助かったことに対する安堵でも、危機を脱した感動でも、死ななかったことに対する憤慨とも違う異様な空気。


「貴様、なんてことを――」


 それに気づいたウルザさんが、絶句したように言う。

 彼女の瞳は僕の足元を見ていた。


 僕はその視線を追うようにして、自分の足元を見て、血の気が失せた。


 そこには無残に踏みつけられ、肉塊と化した神様の姿があった――。

お読みくださりありがとうございます。


神様殺したら、当然死刑だよ。おバカの国でもそれは変わらないよ。さて、おバカ相手にどうやって切り抜けるのか!?

こう、ご期待!


楽しんでいただけましたら、ブックマークと、下にスクロールして☆を押していただけるとすごく嬉しいです。どうぞよろしくお願いします!

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