地蔵怪
山奥で見つけた不思議な石とは…。
楚に住む、丁某は、その日も山菜をとりに山へでかけていった。
この辺の山の山菜はあらかた採り尽くしたので
奧へいかなければ、取れる物もとれなかった。
山中を進んでいくと、
切り立った山壁にあたったが、
そこは泉の水が流れ、山菜も多くとれた。
すわ、一服しようと思い、泉の前に腰をおろすと、
目の前に地蔵のような石が3体あった。
ただの石には違いないのだが、
どれも、目と口とおぼしき場所に
くぼみがあった。
戯れに、木の棒でコツンと一つを叩いてみると
「てい」
と、音が聞こえた。
気のせいと思い、連続して叩いてみると
「てい、てい、丁、丁よ、痛い、痛い。」
と聞こえた。
不思議に思い、別な2つの方を今度はなでてみると
なんと、口々に論語や道徳経を唱え始めた。
丁はびっくりするやら、おそろしいやらだったが、
これをもって帰って見せ物にすれば儲かると思い、
山菜を入れていた袋に石三体をいれて、
山道を駆け降りた。
袋の中から
「てい、てい、丁よ、そんなに走ったら、わしらは潰れてしまう…」
と聞こえたが、恐ろしさも手伝って、
道無き道を走り続けた。
人家が見えはじめたので、落ち着いて、
どれ、もう一度見てみようと袋を除いてみると
そこには石はなく、ただの土くれが入っているばかりだった。