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椿大樹(ちんたいじゅ)

古木の花が咲くと…。

秦の時代、楚に、それは大きな椿の木があった。

樹齢8千年はあろう、大樹は、

大人、30人でようやく、囲めるほどだった。


老木のため、滅多に花は咲かないが、

狂ったように花が咲く時は

決まって戦乱がおきたと言われている。


ある時、豪勇で知られる項季というものが大樹の下を通りかかると

一人の手弱女が立っている。

はて、こんな寂しいところに一人とはと思い声をかけると


「私は椿大樹ちんたいじゅの精でございます。

 今度、めでたく天命が来まして、天に上ることとなりました。

 しかし、長い年月生きて後継いないとは寂しいこと。


 そこで、剛毅で知られる項さまにお願いがございます。」


項季は冗談だろうと思ったが


「なんであろう」


と答えると


「この種を人里離れた山奥に植えていただけませんか?

 お礼は致しますから。」


と言って、すっと消えた。

辺りを見回してもどこにも女はいない。


さぁ、これは本物だと思い

数日かけて山中に入り、これを植えた。


それからしばらくして椿大樹の葉はすべて落ちて枯れてしまった。


項はそのまま、山の麓に小屋を建て

炭焼きや木こりをして生計を立てたが

すんなりと嫁も来て、項家は繫栄し、山の麓は町となって大きくなった。


やがて秦が攻め入って来てもこの町にはなぜか手をくわえなかったという。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで一気に読んでしまいました! まだまだ名作が生まれてるもんですね! いつかどうにかパクりたいと思わせる作品の数々! 面白かったです!
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