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新木仁左右衛門

太閤が欲しがった、新進気鋭の絵師とは…。

堺の町に新木仁左右衛門あらきにざえもんという絵師がいた。

大層、絵が上手く、掛け軸などを書くと、

すぐに名のある大名や公家は飛びついた。


ある時、太閤、豊臣秀吉に召喚され、

大阪城に赴いた。


「そちの絵はまるで生きているようだというな。」


「はい、拙者は、絵に魂をいれておりますゆえ。」


「はっはっは!魂をいれたといっても、

 絵が生きているはずはない。

 心を動かすことはできるがな。」


「しかし、拙者の絵はいきております。」


余りに、自信たっぷりにいうので、

秀吉はすこし意地悪をしたくなってしまった。


「では、その生きている絵というものを見せられるか?

 もしも、生きていなかったら

 そちの命を貰うかもしれんぞ。」


城中のものが、どきりとしたが、

仁左右衛門、身動みじろぎもせず


「心得ました。」


といって、


ぱらり


と開いた掛け軸は風景画だった。

しかも、水墨画で、白黒の滝の絵だった。


「はっはっは!

 たしかに、すばらしい作だが、

 生き物がおらんし、

 滝も動いてはいない。」


といった刹那、

絵の中から


ドドゥドドゥ


と滝の流れる音が聞こえ、

絵の水も流れているようだった。


秀吉もお付きの者もみな目をこすって見てみると、

仁左右衛門が掛け軸の絵に手を入れると、

そのまま、すっと入ってしまった。


みな近づいてみると、

いつの間にか、絵の中の仁左右衛門、

釣り竿をふるって、滝の中から大きな鯉を釣り上げると、

絵の枠外に消えて行ってしまった。


「これは…、

 なにやら、妖術のたぐいであろう!

 仁左右衛門を探しだして、ここへ連れてこい!」


といった。

家来達は、方々を探し回ったが

どこにも仁左右衛門の姿はなかった。


その絵は大阪城にしまわれたが、

大地震の折りになくなったといわれる。


その後、ある地方で仁左右衛門を見た人があった。

あれから、20年以上の歳月がたっていたが、

あの頃と同じ様だったという。

そして、雨を異常に恐がったという。

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