蜀二世皇帝
皇帝の夢に7人の老人が現れて…。
三国時代、蜀漢の国の太子に劉禅というものがあった。
若い頃は文武に優れ、
早くから王の風格を身につけていた。
彼の母は、彼が腹の中にいるときに、
北斗七星を飲む夢を見たので、
幼少のころは阿斗と名付けられていた。
彼の父が国を興したときに
禅は宰相の諸葛亮に政治学と帝王学を師事した。
ほどなくして、禅の父は白帝城で身罷った。
禅の即位の儀は盛大に行われ、
臣民みな、この若き有望な皇帝の誕生を喜んだ。
その夜、禅の夢の中に、七人の正装した老人が現れ、
「我々は北斗星君に仕えるものでございます。
この度は、ご即位おめでとうございます。
天子となられたからには、人民をよくご指導くだされ。
さて、我が星主である、北斗星君は、
君の体の中にあやまって、
七星の宝であります、即ち
義、仁、礼、孝、勇、厳、智
を落としてしまったのです。
君も皇帝に即位できたことですし、
そろそろ、宝玉を返していただきましょう。」
といって、七人がめいめいに手をのばすと、
禅の体の中から、7つの輝く玉をとりだして去っていった。
それからというもの、禅は即位した頃は
まだ玉の効果があってか、ましなほうだったが、
じょじょに凡庸になり、
最後は痴呆のようになって国を滅ぼしてしまった。