とうもろこしの精霊
とうもろこし誕生の話
ネイティブアメリカンがアメリカ全土にいて、白人が一人もいなかったころの話。
それは遠い昔の話。
インディオたちは常に飢えにさいなまれていた。
スー族の長老が
「このままでは我々全員が飢え死にしてしまう。
だれか、太陽の神の元にいって
飢えずに済む食べ物をもらってくることが
できるか!?」
と聞くと、だれも手をあげない。
しかし、だれも手もあげないので
集まった中の一人の「赤い土」という男が
「それならば、私が行って参りましょう。」
「おお!オマエこそ勇者だ!」
と、皆、「赤い土」を讃えた。
しかし、太陽の神のもとにいくなど
どうやっていいかわからなかった。
しばらく行くと、オオカミにおそわれたバッファローが一頭いた。
バッファローは自分でオオカミをうち倒したが、
傷ついて自分も倒れてしまった。
「可哀想に…。傷の手当てをしてやろう。」
といい、自分の服を切り、
傷にまいてやった。
オオカミも瀕死の状態だったが
それを助けてやった。
バッファローは
「そんなヤツ、どうとなってもよろしいでしょう。」
「いや、同じ生き物だほおってはおけない。」
といって、手当をしてやった。
「そいつが息を吹き返すと私を襲うかもしれません。
もしも、あなたが生きながられたなら
あなたをきっとお助けしましょう。」
といって、走ってさっていった。
オオカミは
「なぜ、オレを助けたのだ?
オレはお前にとってわざわいかもしれないのだぞ」
といったが、
「そんなことはいいから、早く傷をなおせ」
といって、逃げようとはしなかった。
やがて、朝になると
「いや、畏れ入った。
オレは、オオカミの「いかずちの牙」というのだ。
オマエは本当の勇者だな。
オマエは長老に無理難題をいわれたのだろう?
太陽の神の居場所は知らないが、
近い場所はしっている。
我々オオカミの「太陽の祭壇の石群」につれていってやろう。」
といって、「赤い土」を背中にのせると、
ピュゥ!と風のように疾駆した。
一昼夜かけると、とほうもない高い山についていた。
「ここが「太陽の祭壇の石群」だ。
オレが案内できるのはここまで。
あとは自分で神にすがるのだな」
というと、また、ピュゥと風のように去って行ってしまった。
しかし、どうすれば神にあえるのだろうと
まごまごしていると、
果たして、太陽が話しかけてきた。
「これ、そこな若者。
見れば、オオカミではない様子。
一体、どんな目的があってそこにおるのか?」
「実は、これこれ、こういうわけで…」
というと、
「では、精霊たちを呼び出して、
お前達の口に入りたいものを選ぼう」
といって、数々の精霊たちをよびだした。
しかし、みな一様に
人間の口に入るのをいやがった。
そこに、先日助けたバッファローがやってきて
「私ではいけませんか?」
と、神にたずねた。
「オマエは自分ですすんで
人間の口に入りたいというのだね。」
「はい。」
「では、オマエの姿をかえて、
人間の口に入りやすいようにしてやろう。」
といって、みるみるうちに
トウモロコシになってしまった。
「それは、太陽の実と名付けよう。
それを、大地に植えれば、またたくまに
増えて、お前達の腹を満たすであろう。」
といった。
見ると、その実にはバッファローの毛が生えていた。
急いで彼はそれを村に持ち帰り、
大地に撒いて増やしたという。