始皇帝と鳳
皇帝の宮殿におおとりが舞い降り…
秦王は天下を統一し、始皇帝を名乗った。
始皇帝は位を存続させるために、不老不死を求め、あらゆる方士(祈祷師、占い師の類)を
各地から集め、あらゆる文献から仙薬、仙丹、不老不死の祈祷をさせた。
あるとき宮城の上空に一羽の鳥が飛来した。
太陽と被って、体が燃えているようだった。全身が赤色でまたは金色に輝いた。
翼を広げている姿は三丈ほどあった。家臣の一人が叫んだ。
「鳳だ!鳳だ!」
一堂あれよあれよと騒ぎ立た。騒ぎを聞きつけた始皇帝は、
宮城の中から空を見上げると、確かに、神々しい鳥が舞っていた。家臣は口々に
「瑞祥でござる。瑞祥でござる。」
「万歳!万歳!皇帝万歳!」
と歓声をあげた。
そうこうしている間に、鳳は宮城の塔の一角にとまり、
羽を休めた。始皇帝の前に張という方士がすすみでて、
「鳳の血はどんな仙薬にも勝り、不老不死になると聞いております。
天帝(中国の天をおさめる王)が皇帝に対して下賜なされたのでしょう。
謹んでお受け取りなさいませ。」
その言葉に始皇帝は喜び、鳳を弓で射させた。鳳は始皇帝の方ばかり見ていたので、
なんなく矢に当たってしまった。
鳳は驚き、始皇帝の前まで飛び
「贏氏(始皇帝の姓)よ!天帝はそちが地上の王になったことをお喜びになり、
儂を勅使として不死の玉丹を賜ったが、その勅使を矢をいるとは何事か!
そちは天に向かって矢を射たのだぞ!」
といい終わると、自分の体の火で燃え尽きてしまった。
始皇帝はあわてて玉丹を探させたが、一緒に燃えてしまったようだった。
始皇帝は激怒し張方士を打ち首とした。
次の日、始皇帝が宮城の中を散歩していると、
正面から、五色に輝く錦の朝服をまとった官吏が、12人の武士をつれて現れた。始皇帝は
「朕の前に帯剣して小走りもせずにあらわれるとは何事か!」
と怒り叫んだ。すると
「贏氏よ。儂は廷尉の英だ。今回のことは天帝は大いに驚いて居る。
しかし、地上に天帝からの使者だとわかるものがいないのも事実である。
本来ならば、一族皆殺しであろうが、そこまではせん。
しかし、いつまでも地上の王にはしておけんぞ。それが今回の裁きである。」
というと「すう」と消えてしまった。
始皇帝は目を疑ったが、これも天帝の使者だと思い恐れた。
周りにいた宦官や女官はおどおどと震えるばかりだった。
始皇帝はこの話を秘密にしたが、事実、秦王朝は三代で絶えた。