第2話 妹…?(巫女玉藻視点)
こんにちはとても久しぶりな投稿です。
というかこのページを開いていただきありがとうございます!
楽しんでいただけたら幸いです。
続々と生徒たちは机のフックに掛けていた学校指定の黒い制カバンを取り、荷物を片付け教室を後にしている。陣もその一人だった。ポケットに左手を突っ込みながら、右手で携帯電話のキーパッドをぽちぽちと打っている。妹へのメールをまだ打っているのだろう、どれだけ打つのが遅いんだ。まあ、どんな内容のメールであるかは数分待っていれば分かることだろう。私もカバンからキッズケータイを誰にも見られないように取り出してブレザーのポケットに入れた。
(ああっと、危ない危ない。一応マナーモードに設定しておかないとね)
私がポケットの中のキッズケータイを手探りでマナーモードにした瞬間にバイブレーションが鳴った。少しの汗を背中で感じながらもそそくさと教室から廊下へ出ると、周りにはたくさんの下校中の生徒たちが正門への道で長蛇の列をなしている。 学校を出るにはおそらく5分ほどかかるだろう。しかし家に即座に帰り、早急に成すべきことがあった私は、強硬手段に手をかけるしかなかった。
(仕方ないな。トイレに行くか。あ、その前にメール見なきゃ)
小走りでトイレに向かいながらポケットに入れていたケータイを見ると、案の定「兄」という差出人から一通のメールが来ていた。
『愛しい妹よ、すまん。寺小屋にて少々問題が発生してしまってな、帰りが遅くなっておる。汝の腕をふるった昼飯をさっさと帰って食すのを楽しみに待っておるぞぉ。(とりま学校長引いた。飯何?) 』
なぜいつもいろんな設定をぶっ込みながらも最後にちゃんと説明してくるのかと、メールが来る毎に思うし、疲れないのかなあとも思う。友達に限らず妹にもちゃっかり変な一面を見せるということを再確認した玉藻はすでにトイレの前に立っていた。
(誰もいないよね。よし、誰もいない!)
私は自分の体を自発的にグニャグニャと変形させていく。色は制服やら肌やらが一緒くたに混ざり合ったような色をしていて、正直見ていて気持ちのいいものではないと、自分でも思う。160センチほどはあった高さはどんどん低くなっていき、最終的には30センチほどの高さになった。それがどういうものであったかは、まだ人間の形をしていた時の頭につけていたヘアピンを見ればすぐわかるだろうが、もうそれはすでに原型をとどめていない。
(ふう、鳥になった方が早いんでしょうけど、圧倒的に狐の方が可愛いわよね!
あ…でも街中に狐ってやっぱりおかしいかなぁ)
この街で、周りに森や山などの自然がないにもかかわらず、よく狐が街中で目撃されるというニュースが噂になるのはしょっちゅうの事である。
やはり鳥の方が早く家に着くと悟った私はすぐさま鷲に変化し、残った荷物はネックレスとなり首にかける。翼となった両手を生かし空に体を預け、バサバサと上下に両手を動かしていると、横目に駆け足の陣の姿が人ごみの中に見えた。かなり急がないと昼食の準備が間に合わなくなってしまう。
藍堂家
あらかじめ開けておいた二階の窓から変化とともにくぐり、すぐさま私はキッチンに向かった。私はある理由で藍堂陣の妹でもあり、巫女玉藻という友人でもある。本来の姿は、巫女玉藻を少し大人びさせたような容姿をしているが、実際「私」自体を知っている者は少ない。
(どういった経緯で妹になりすますようになったのかはまだ君たちに話すことはできない。それに第一おいおい知ることになるだろう。)
なんて周りには誰もいないのに、私は語り口調で考えてみた。料理を作っている間は、体はせかせか動かしているものの、かなりのことについて考えることができる。だから料理をする時間は私にとって何かを考え、頭の中でものを整理する機会で大事な時間である。私は何もせずだらだらするのは嫌いだ。確かにそういうこともたまにするのは大事かもしれないが、明らかに自分の時間を無駄にして、自分の体を自ら泥沼にどっぷりと沈ませているような感覚に襲われて、何かしらに向かって体を動かさないと、いてもたってもいられなくなる。
そうこうしているうちに、目の間には2品ほどの料理が仕上がろうとしていた。一つはパスタで、ソースはトマトと挽肉の煮込みのもので、かなり味には自信がある得意ソースだ。パスタが茹で上がり、極上の私が作ったソースと最高の出会いをするのは時間の問題だろう。もう一つはラザニアで、そのオーブンはあと5分で焼きあがるといったところだ。香ばしい匂いの中、空腹を抑えながらオーブンミトンを引き出しの中で探していると、一階の玄関の方で、扉のガチャリという音が聞こえてきた。
(陣が帰ってきた!ベストターイミング!)
そう思いながら私は駆け足で階段を駆け下りていった。
「今帰ったぞ、我が妹よー」
その妹という言葉を聞き自分の姿に違和感を感じた瞬間と、陣におかえりと言うために彼の前に姿を現した瞬間が同時に起こってしまうなどという、最悪な状況なぞ想像だにしなかったが、人生には時として自分の思う逆のことがよく起きるものである。
「あれ玉藻?なんでお前おれんちにいんだよ?それにおまっ…!」
陣はすぐに顔を伏せていた。それが何を意味していたのかはお気づきだろうが、私自身は、自分の首にかかっていたネックレスを指で触ったことでやっと、自分の状況を把握した。
「どっちからつっこみゃいいんだよ!!!」
巫女玉藻はクレアだったということですねー。
理由とか背景はおいおい明かされていくのでご期待ください。
また読んでくださいお願いします!
武士博士