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私が恋愛できるまで  作者: ぷー
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「どういうこと!?何でいきなりコンプリートしちゃったの?!」

戸惑いを隠せない私をよそに、義兄はとても落ち着いていた。


「元々この世界は由美のように現実世界で辛い恋愛をした人にまた恋の素晴しさに気づいてもらうために作られた世界なんだ。

コンプリートの条件はこの世界で相思相愛になること。元々、攻略対象なんていなかったんだよ。」

「っ!」

驚きで何も答えられない私とは逆に義兄は淡々と話続ける。

「でも、恋愛で疲れた人にいきなり相思相愛になれなんて条件つけても頑張れないし、なろうとしてなれるものでもないだろ?

だから、一般的に女性から好印象をもたれる男を攻略対象として伝えた。接触する中で、そのうちの誰かと恋に落ちるだろうと思っていたんだ。でも、お前はことごとく期待を裏切り攻略対象に惚れることはなかった。元々、二人目を攻略した時点で、真実を、、、コンプリートする為の条件を教えるつもりだった。

でも、出来なかった。

何よりも予定外だったのは、“俺がお前を好きになってしまったこと“だ。

このままお前が誰のことも好きにならなければずっとこの世界でお前と一緒にいられるんだと、元の世界に帰るために頑張っているお前を俺はずっと騙していた。お前から告白されたとき、お前の気持ちに俺が応えなければ明日からもお前といられる。そう思って断ろうとした。けど、できなかった。好きだって気持ち、お前にどうしても知ってほしいって思ってしまった。」


そういって義兄は笑った。それは、今にも泣きそうな笑顔だった。


「だから、由美、お別れだ。」


ーーーーっ!!


義兄からのその言葉は私の鼓動を大きくさるには十分だった。

そう、義兄と“両思い“になった私はミッションクリア。

遂にコンプリートしてしまったのだ。




ふいに指先が痺れる感覚がして、自分の手を確認する。


ジリジリ。


手が、透けている。

私は消えるのだ。義兄の前から。

せっかく思いが通じ合えたというのに。


私は義兄を持てる全ての力の限り抱き締めた。

止まったはずの涙が栓がはずれたように流れ始めた。

「ぅう、ぃやっだっよぉっ。離れったっぐ、なっいぃ。」

嗚咽が漏れ、伝えたい言葉が上手く発することができない。


こんなの、酷い。

酷いよ。

恋愛で傷ついた私はまた恋愛で傷つくのだ。

私の片思いなら仕方がない。

でも、義兄とはお互いに大切な存在だと、愛しい存在だと

確かめ合えたのに。

つくづく私は恋愛に縁がない女だったようだ。



義兄も子供のように泣きじゃくる私を抱き締め返してくれた。

徐々に意識が遠ざかる中、義兄の声が聞こえた気がした。


“幸せになれ“と。


本当に無駄に声、良すぎだから、、、。


そして、私は完全に暗闇にのまれていったのだった。







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