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私が恋愛できるまで  作者: ぷー
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世界中の女性に問いたい。

イケメンで意地悪だけど優しい。

そんな男が一つ屋根の下に一緒に住んでいて好きになるなというほうが無理ではないだろうか。

こちらの世界での設定上の義兄であって、血もつながっていなければ、長年兄妹として育ってきたわけでもないのだ。

現実世界で彼氏に浮気され、一生独身で良いと心に決めたにもかかわらず、自分で自分にツッコミたくなるが私はあっさり恋をしてしまったのだ。


「由美、クリアおめでとう。でも、まだこの“ゲーム“は終わらないみたいだ。大丈夫。お前が無事に帰るまで俺が側で導いてやる。だから、泣くな、、、。」

泣き止まない私を抱きしめながら義兄が耳元で優しく囁いた。

泣くなと言われてすぐに泣き止むことができるわけがなく、

ポロポロこぼれる涙をそのまま義兄の顔を見上げた。

意地悪な態度をみせても結局義兄はとことん優しいのだ。

私の泣き顔を見てすっかり眉が下がってしまった顔も変わらず美しかった。


「クリアしたご褒美、何がいい?」

「ご、ほう、び、、?」

流れる涙を指ですくわれる。


「そう。ご褒美。欲しい物でも。やりたいことでも、何でも。」


何でも良いのなら、、、私は、、、



“あなたが欲しい“




一瞬、唇に当たる柔らかな感触。

そして、何が起こったのか理解できず固まる義兄の顔。


「好き。不本意だけど、、、いつの間にかどうしようもなく好きになってた。私、あんたとずっと一緒にいたい。」


私はキスをされて方針状態の義兄に追い討ちをかけるように想いをぶつけた。


しばらく動かなかった義兄だが、いきなり私の肩を強く掴んできた。

「っいたっっ。」

痛みに顔を歪めるも義兄は気づかない。

いや、気にとめる余裕がないようにみえた。


「お前は、元の世界に帰りたかったんじゃなかったのか!?!」

「そりゃ、いきなり誰も知らない世界に来て、意味分かんないミッション背負わされて、帰りたくないって方がおかしいじゃない。

でも、でもね、私、こっちの世界に来てから寂しいって思ったことなかった。あんたがずっと側にいてくれたから。

意地悪で厳しくて、でもすんごく優しくて、そんなあんたのことが気づいたときには好きになってた。私はいつかこの世界からいなくなる。なら、これ以上あんたのこと好きになってこれ以上苦しい想いしなくていいように一刻も早く元の世界に帰りたくて、、、だから、辛くても悲しくても好きでもない相手に好かれるように必死に頑張ってきたの。でも、もう頑張るのやめる。私、本当は帰りたくなんてなかったの。あんたと居れるならずっとここにいたい。帰りたくない。帰らない!!」


私は伝えたい想いをしっかりと義兄の目を見据えて言いはなった。


「由美、、、」

義兄は苦しそうに顔を歪めると視線を落とした。



その表情を目の当たりにし、息がつまった。

困らせてしまった。

そもそも、こんなハイスペックな男が自分みたいな平凡陳腐な私に好意をもつわけがない。考えればすぐに辿り着く答えではないか。


「今のは私の本当の気持ち。ただ言いたかっただけ。あんたが私のことなんてなんとも思っていないのぐらい知ってるよ。だから、今まで通りよろしくね。元の世界に戻れるようにこれからも頑張るからさ。私を元の世界に返すことがあんたの仕事でしょ。出来るだけ早く、帰るよ。」

だから、そんな辛そうな顔しないでよ。


私は無理やり笑顔を作ってみせた。あれだけ止まらなかった涙も枯れたように出てこない。


「この話はこれでおしまい!さすがの私もちょっと疲れちゃったから、部屋で休むわ。」

四人目の攻略対象をクリアして元の世界に戻っていたのなら、

そもそも伝えることのない想いだったのだ。このまま何もなかったように過ごした方が良いだろう。

そそくさと立ち去ろうとした私は突然腕を掴まれ引き戻された。

驚きに振り向くと義兄はさっきまでの痛々しい表情とはうってかわって真剣な眼差しで私を見つめ返していた。


「いつ俺が何とも思ってないなんて言った?」

「え?」

何て言ったのか聞き取れず聞き返そうとしたが、その言葉は義兄の口で塞がれた。

「ーっ、ん、ぁっ、はぁっ」

「っ、ぅっ」

先程の私からのキスとは比べ物にならない深くて濃密な口付けが繰り返される。

義兄の舌に私の舌が絡めとられる度に頭の中が痺れるように麻痺し何も考えられない。ようやく解放され立っているのもやっとな私を支えながら義兄は話始めた。


「俺だって、もう随分前からお前が好きだ!

最初は平凡で、気の強い女が担当なんて、面倒だと、早くコンプリートさせてやるって思ってた。でも、どんなに厳しいことでも絶対に弱音を吐かない、諦めない、その癖、一人耐えて、こっそり泣いている姿を見たときにほっとけなくなっていた。気に入らないとすぐに怒るところも、嬉しいとき、楽しいときに見せてくれるあどけない笑顔も、、、お前の全てが好きだ。」


「あんたが、私のことを、、、?

私、あんたと居れるならずっとここにいる!ここにいたい!

お願い!ずっと、一緒にいよ?」


義兄に手を伸ばすもそれは叶わなかった。


私の指先が義兄に触れる前に後方にあるパソコンから光が放たれ、眩しさのあまり一瞬目を閉じる。


次に目を開けると、そこには今まで見たくて見たくてたまらなかった『COMPRITE』の文字が恨めしくも点滅していた。








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