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私が恋愛できるまで  作者: ぷー
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初心者なので、誤字脱字等、温かくみまもっていただけると幸いです。。。



なんで!?

どうして!?!?


あまりのショックに足の力が抜け、堅いフローリングの床の上に座り込む。

なんで元の世界に還れないの!?


まるで私の周りだけ時が止まってしまったかのようにしばらく動くことができなかった。


未だ現実を受け入れられない私をよそに目の前のパソコンには表示された『NEXT』の文字が憎らしく点滅していた。




私はごく普通の25歳、OL。

特別かわいくて綺麗なわけではないが不細工でもない。

名前は田村 由美。

うん、名前もいたって普通だ。


そんな普通な私が奇妙な世界で奮闘し始めたのは今から2年前。

学生時代から付き合っていた彼氏に浮気され、もう恋愛なんてこりごりだ!一生私は独身でいてやる!

と、やけ酒をした帰り道、酔っぱらいながら横断歩道を渡る途中ですれ違った人とぶつかり、転び、車に轢かれてしまった、、、

というところまでは覚えている。

これが、私の死因になるとしたら何とも間抜けすぎて親に顔向けできない。


そして、全く知らない部屋のベッドで、全く知らない麗人に見守られながら私は目覚めた。


思い返せばこれが悪夢の始まりだ。

そう、すべての始まりはこの麗人、糞義兄から始まったんだ。





「あれー?おかしいね。全員攻略できたは、ず、な、の、に。」


いつの間にかやって来たのか、背後から声優にでもなれるであろうよくとおる声が聞こえ、

放心状態だった私も一気に意識が覚醒した。

反射的に振り向くと義兄こと田村颯太は言葉とは真逆のなんとも嬉しそうなほほ笑みを浮かべているでは

ないか。

その憎たらしい笑顔に見下ろされてるのが感にさわり急いで立ち上がると義兄に詰め寄る。しかし、ゆうに身長180センチを越える義兄に対して155センチしかない私はどのみち見上げるしかないのだが。


「ちょっと!!どういうことよ!あんたが全員攻略できたら元の世界に戻れるっていうから

2年も頑張って4人攻略したんじゃない!やっと、やっと最後の相手、幼馴染の圭君クリアしたのに。」


「うん。」


「還る為に、仕事も運動も美容も料理も頑張ってきたのに。」


「、、、うん。知ってる。」


「なんで、、、。」


衝撃的すぎてだんだんと声が震えてうまく話せない。

涙のせいか無駄に整った義兄の顔もかすんできたし。

今までの苦労が走馬灯のようによみがえり、更に私の心に打撃を与えてきた。


そっと背中に温かなぬくもりを感じ、それが義兄のちょっとかくばってはいるが女性のように綺麗な手だと気づいたときには義兄の胸に抱きよせられすっぽりと体を包まれていた。


一瞬ドキリとするも、この現状を慰めてほしかった私はすぐに涙腺が崩壊し泣き続けた。





現実世界で恋愛に疲れて車に轢かれてしまった私は、不幸にも異世界で4人のイケメン攻略対象

と恋愛の駆け引きをし相手から告白されなければ元の世界に還れないというなんとも不本意な生活を強いられた。

現実世界の私は意識不明ながらも病院で一命をとり止めていると説明されたのだ。


この意味不明な使命を突き付けてきたのが、こちらの世界での設定上の義兄、颯太だった。

なんでも颯太はこちらの世界へやってきた者への説明を請け負った乙女ゲーでいうと所謂お助けキャラなのだとか。

何はともあれ、彼の存在は大いに助かった。

むしろ彼がいなければこの世界での生活はままならなかっただろう。

何て言ったって、何の前触れもなく突然異世界に飛ばされたのだから。

颯太は私に攻略対象が誰なのか、どうすれば攻略できるのか等、

お助けキャラが所持するというアイテムを使い、

惜しげもなくアドバイスを与えてくれた。

このアイテムというのが冒頭で『NEXT』の文字を点滅させていたパソコンのことだ。

攻略対象から告白されるとこの『NEXT』の文字が浮かび、次の攻略対象へシフトチェンジしてまた告白されるように頑張らなければならない。

颯太とはコンプリートを目指して、切磋琢磨日々精進してきた仲なのである。

そう、、、、それはとてつもなく過酷な日々だった。




例えば一人目の攻略対象、会社の先輩こと加藤俊、別名王子の攻略中のことである。




王子が胸がでかくて腰の細い女性がタイプとのことで、毎日腹筋100回、背筋100回、

もともとAカップしかなかった私は胸デカになる?ストレッチを毎日強制的にやらされた。

胸デカになるストレッチ、しかも、短期間で、、、思わずそんなものこの世に存在するのかと問いたくなるが異世界だからそんなのもありなのかと変に納得してしまったのだが、そのストレッチ、蓋をあければただの恥ずかしいだけのポージングだった。


義兄に腹の上に座られ、100回終わるまで決して終わらない筋トレ。

腹筋なんて日々しなかった私は毎晩お腹がつってもだえていたっけね、、、

胸デカストレッチも意味あんのかよとサボって寝たら義兄にプロレスの寝技をかけられ。胸デカストレッチに四苦八苦する私を彼が影から笑っていたのを私は知っている。


反抗すればご飯はきゅうり1本。

わたしゃ、かっぱじゃねーんだよ!!

そう、義兄はとても厳しい鬼のような男なのだ。


そして、義兄はとても意地悪だった。

ある日プレゼントと言って、綺麗にラッピングされた箱を渡され、珍しいこともあると

ありがたく受け取るも中にはいっていたものはCカップのブラだった。

なかなかストレッチの効果を発揮しないAカップの私に対する完全なるあてつけである。

そもそも、あのストレッチが効かないのではないか。本当に意味があるのか。むしろ毎日恥ずかしいポーズをやらされる私の羞恥心を返せと叫びたい。



「せいぜいそれがちょうどよくなるよう頑張るんだな。」

そう言って私のAカップをポンポンと叩き、

バカにしたようにニヤつきながら去ろうとする義兄。

ーーーー!?!?

こんのー変態義兄ぐぁあー!!!


ブラよ。

真っ赤なレースの高級ブラジャーさんよ。

おぬしに恨みはないが変人に買われたこともまた運命と思って許しておくれ。

震える手でブラをにぎりしめ、去っていく義兄の背中にたたきつけた。

「こんなもんいらんわーーーーー」





そして、義兄は優しかった。

王子を始め、無事攻略対象を攻略できた暁には、

ふわりと見惚れるほどの極上の笑みを浮かべながら頭をなでてくれた。

「よく頑張ったね。」と。


子供じゃないし、、、

何よ、いつも意地悪で厳しいくせに。。。


内心悪態づいていてもそれをやられると嬉しさと恥ずかしさでいつも私は顔をそらすしかなかったっけ。


頬を赤く染める私に義兄はクスリと笑うとご褒美とばかりに

私を甘やかした。


ある時は私の行きたがっていた高級レストランに連れて行ってくれて、ある時は

ずっと欲しかった服と時計を買ってくれた。

現実世界で付き合っていた彼は堅苦しいところは嫌い、お金もない男だった。

遠出も嫌い、人込みも嫌いな元彼と経験したくてもできなかった

旅行やテーマパークへも連れて行ってくれた。

まるで恋人のように。

その時の義兄はとても、とても優しかった。





義兄の言うとおり、条件通り、ちゃんと四人クリアしたのに、

まだ他にも攻略対象がいるってこと!?

最後の一人だって思って頑張ってきたのに。

まるで振り出しに戻ったような心境だ。


辛いよ。

いつか元の世界に帰らなきないけないのに、

これ以上、あんたの側にいるの辛いよ。

これ以上、あんたのこと好きになるの辛いよ。



そう、私は、そんな厳しくて意地悪で、でも優しい義兄のことがいつの間にか好きになってしまっていたんだ。





















  


















明日も1話投稿予定です。


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