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12・起きたら美少女が隣で寝ていた件

 窓から差し込む朝日。

 外から小鳥の囀りが聞こえてくる。


「うーん、よく寝たぁ」


 瞼を擦りながら上半身を起こす。

 ベッドのおかげだろうか——昨日の夜はすっかり熟睡出来たようだ。


 肩を回したり、足をマッサージしてみる。

 うん。元の世界では運動不足だったので、筋肉痛が心配だったが、それ程の痛みはない。

 それどころか健康的な感覚が心地よい。


「今日も頑張るか」


 そう言いながら、右手でベッドを押して立ち上がろうとする。


 ムニッ。


「あんっ」


 うん。やっぱりこのベッド。相当柔らかい感触だ。

 弾力感もあって、思わず触ってみたくなるのが嘘のようだ。


「あんっ、あんっ」


 それに手を動かせば喘ぎ声も発してくれる。

 アリサさんは良い部屋を用意してくれたものだ……。


「喘ぎ声?」


 はて?


 異世界のベッドは声も発することが出来るのだろうか?

 疑問、そして嫌な予感を抱きながら視線を落とすと、


「ア、アアアアリサさん?」


 ——そう。

 俺の隣では上と下が一繋ぎになっているキャミソールを着たアリサさんが寝ていたのである。


 首もとから見える鎖骨がセクシーで、思わず呼吸を忘れてしまう。

 そして今、俺の右手はアリサさんの胸を触っている。

 すぐに離そうとするが、慌てているものだからそのまま揉んでしまう。


「あんっあんっ……ちょっと……そこは……私、弱いから」


 弱い?


 弱い、って何のことだ!


 どうしてアリサさんが隣で寝ていたのかは分からない。


 しかし! 

 アリサさんが起きる前にこの手を離して、部屋から逃げなければ!


「あら、カケル。おはよう。清々しい朝ね」


 遅かったー!

 そうこうしている内にアリサさんの瞼が開けられ、吸い込まれるような双眸が俺を捉えた。


「ア、アリサさん! これは誤解です! 決して俺はアリサさんに夜這いしたわけじゃなくて、アリサさんがいつの間にか隣で寝ていたと申しますか……」


「そりゃそうよ。だって、ここ。私の部屋だもの」


 むくっ、と欠伸をしながら起きあがるアリサさん。

 首から顎にかけてのラインが艶やかで、視線を外すことが出来なかった。


「ア、アリサさんの部屋?」


「そうよ。他の部屋はカケルと同じように行き場をなくしたシーフに貸していてね。もう満室なの。だから私の部屋を紹介したわけ」


 何ということだ!

 じゃあアリサさんは俺が寝静まった後に、こっそりとベッドに潜り込んだということなのか。

 ということは俺は! アリサさんと一夜を過ごしたことに……。


「若い、って凄いのね。あなた、体力ないと思っていたけど夜の体力はボスモンスター並なのね」


「何のことですか!」


「冗談よ」


 慌てている俺がバカに思えてくるくらい、アリサさんは立ち上がりシャワー室の方向へと向かっていった。


「そうそう」


 シャワー室の扉を閉めようとする時。

 クルリ、とアリサさんは振り向いてこう言った。


「私、お風呂上がりは裸でいる主義の人間だから」


 バタン。

 俺が口を開く前に、アリサさんはシャワー室の向こうへと行ってしまう。


「たたた大変だ! このままじゃ、アリサさんの裸を見てしまうことに……」


 そんなことしたら、鼻血が出すぎて死んでしまう!

 結局、俺は逃げるようにしてアリサさんの部屋を後にするのであった。


  ◆


 アリサさんショックを早いとこ忘れるためにも、偽造ポータルを使って地下迷宮へと移動する。


 今日もモンスターを狩ってレベル上げだ。

 その前に……アリサさんか渡された肩掛けのバッグに視線を移す。


『今日のレベル上げはモンスターの素材も忘れずに取ってくること。はい。これアイテムバッグ。その中には……無尽蔵じゃないけど、大量の物を入れることが出来るわ。

 モンスターを倒したら、アイテムを落とすと思うわ。そのアイテムをそのバッグに入れること。分かったわね?』


 どうやらこのアイテムバッグ。

 高校に持っていくバッグより小さいのだが、中は異空間? のようになっていて、外見よりも多くのものを入れられるらしい。

 ドラ○もんの四次元ポケットのようなバッグを入手するのも異世界モノのテンプレだよな。


「今日も頑張りますか」


 腕まくりをして気合いを入れていると、早速スライムが出現。

 俺はスライムの後ろに回り込み、ウロボロスで一閃する。

 命中。

 スライムは一発で倒れて、消滅してくれた。


「これか……モンスターの素材、っていうのは」


 昨日は気付かなかったが、スライムを倒した地点に手の平サイズのグミのようなものが残っている。

 俺はそれを手にとって念じてみる。


『【素材】 スライムの元

 スライムの欠片であり、これを百八個集めるとスライムが息を吹き返す……という伝説がある』


 アイテムの名前・詳細が頭に浮かんできた。


「これを後で売れるということなのか?」


 そういえば昨日、あれだけモンスターを倒してもお金を得られることはなかった。

 モンスターが落とすアイテムをドロップして、それを売り払うことによって初めてお金を得られるシステムなのだろうか。

 そう思えば勿体ないことをしたものである。


「まあいいや」


 過ぎてしまったことは仕方がない。


 その後、スライムやコボルトを中心に戦闘を続けた。

 昨日よりレベルが上がっている、ということでモンスターの動きも見えやすく、攻撃も命中しやすく、さらに動きも速くなっているような気がする。

 この調子だったら中丸を抜く日も近いかもしれない。


 さらに昨日の【とんずら】スキルも試してみた。

 どうやらスキルは使いたい者を頭の中で念じ、行動に移すことによって発動する。


 スライムの集団に囲まれていた時のことだ。

 この時、囲むスライムの数は六体。

 一体は一体はザコモンスターながらも、これだけのモンスターに囲まれれば焦燥感も生まれてくる。

 これが中丸とかの無駄に勇敢そうなヤツだったら、死闘を演じるのだろうな。


 しかし!

 俺は危険な戦いはしない。

 危なくなったら逃げるのだ!


 そこでスキル【とんずら】を発動。

 スライムの網目を縫うようにして、体が勝手に動く。

 何というのだろうか……陣形の隙を発見することが出来る、というのだろうか。

 それにただ普通に逃げるより体が軽やかに感じた。

 この【とんずら】というスキル。どうやら逃げ足が速くなるらしい。


「しょぼ……」


 と最初は思ったのだが、どんなに危険な戦闘でも絶対に逃げられる保証があれば、心強いことはないのだろう。

 この世界はゲームではないのだ。

 常に死の危険を減らすことが出来る。

 スキル【とんずら】のおかげなのか、モンスター狩りも順調に進んでいく。


『カケルはレベル4にアップした』


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