君が生まれた日
「お嬢様♪」
「!アイリス、カルマ、シャロ」
「「「お誕生日おめでとうございます!」」」
「ありがとう」
3人が笑うから私もつられて笑う。
「声は聞こえますか?」
「ううん。今日は全然聞こえない」
「そう、それならよかったです。他に体調が悪いとかはないです?」
「平気よ」
アイリスは一通り質問し終えると安堵のため息を小さく漏らす。よっぽど心配させていたのだろう。
申し訳ないという気持ちと同時に嬉しくも思う。
「そうだ!はい、これをどうぞ」
彼女はカルナスに渡されたのとよく似た長方形の箱を渡してきた。
「開けても?」
「どうぞ」
アイリスはニッコリと笑う。許可を得て包みを解き、箱を開ければそこには藍色の少しだけラメの入った布が収まっていた。
「これは?」
「紗凪様はいつも耳を隠しているでしょう?そのための布ですよ。その布にはあらかじめ私が術を施しているので外に行くときとかに便利かなって思って選んだんです」
「ありがとう。いつも布で適当に代用していたからありがたいわ」
「それはよかったです。それは伊鶴にも協力してもらったものでもともと猫耳スタイルなのでわざわざお嬢様が猫耳にしなくていいようになっているんですよ」
「!手縫いなの?!」
「愛情たっぷりの手縫いです」
いったいいつの間に作ったのだろうか。わざわざ手縫いで縫ってくれるだなんて…
「ありがとう」
伊鶴とも協力して作っただなんて。彼らとも仲良くやってくれているみたいでありがたい。
ふわりと笑えばアイリスも同じように笑い返してくれる。それだけでどれ程私が救われたことか
コホン
咳払いをしたカルマがスッと袋を差し出す。
「僕からはこちらになります」
差し出された袋は正方形のもので開けてみると中から白を基調とした肌触りの良いハンカチが2枚出てきた。1枚には国花である薔薇の刺繍が施され、もう一つはリボンをモチーフとされた刺繍が施されている。
「綺麗なハンカチね、ありがとう」
「紗凪お嬢様のイメージに合うものを選ばせていただきました」
「私のイメージ?」
カルマはえぇと頷く。
「お嬢様はいろんな人に囲まれている。そしてその人々を関わらす、つまり出会いを繋ぐそんな存在であらせられると感じましたのでリボンのモチーフのものを。薔薇は国花でもありますがお嬢様はいつも明るく凛としておられて花でいうならやはり薔薇しかないと思いまして」
まさかそんな風に思われていただなんて
なんだか恥ずかしい。
「大切に使わせてもらうわ」
きっと使うたびにカルマの想いを、今日という日を思い出すのでしょうね。
「お嬢様」
今日初めてこうして面と向かって話す。そのことがなぜかおかしくて自然と笑みがこぼれる。
「本日はおめでとうございます」
「ありがとう」
「今日はどうですか?はじめてのパーティーでしょう」
「最初はねすごく緊張したのよ。みんなの前に出て大丈夫かなとか声が聞こえたらって不安だったの。でも今日はみんながいろんなものをくれるから嬉しくて楽しくて仕方がないわ」
「今日があなたにとって特別な思い出になられたのでしたら僕たちも頑張ったかいがあります」
微笑む彼は何故だか少し大人びて見えてドキッとした。
その表情は今まで見たことのないものだったから…鼓動が高鳴る。それと同時に落ち着かなくなる。
そわそわした気持ちが生まれてしまう。
「シャロ―」
「紗凪」
「!国王陛下、女王陛下」
優雅にドレスの裾を掴みお辞儀をする。周りの者たちはスッと下がり陛下たちと向き合う。
「お誕生日おめでとう」
「ありがとうございます。このような盛大な場を開いていただけたこと感謝しております」
「かまわん。これからは毎年行うのだから」
「—っ!はい」
“毎年”そうおっしゃって下さった。それは私が王族として認められた証でもある。
あぁ、今日はなんだか嬉しいことや幸せなことが多すぎてなんだか恐いわ。
こんなに嬉しくていいのかしら
これは私が紗凪・ローズタストだからなのでは?私がお母様の代わりだから?私が唯一の跡継ぎだからでは?そんな疑問が生まれては消えない。
不安が募る。でもこれは誰にも気づかれちゃいけない。今日という日を無事に過ごすためにはこの気持ちに蓋をしてやり過ごさなきゃ
「さて、紗凪よ。私はこれからお主に誕生日プレゼント候補を与える」
「候補?ですか?」
「左様。候補の中からお主が好きなものを選びそこから学びなさい」
選んで学ぶ…?いったい何を選ぶのか
「お嬢様、スクリーンをご覧ください」
カルナスに促されていつの間にか用意されたスクリーンを見つめる。
そこには3つの学校の文字が現れ、その下には学校の写真が載せられていた。
「これは—」
「お主は城内しか知らん。だが、民は城外にて生活する。よって学校に行き他者と関わり経験を養いなさい。そこでは友や恩師に出会えることだろう。それはお前の人生にきっと大きな利を与えるものだ」
ずっと知りたかった。
城の外のことを。でもずっと知ることはできないと諦めていたのに…
「ありがとうございます、お祖父様、お祖母様。私は必ずやこの機会をものにして国のより良き発展につなげて見せますわ」
まっすぐに見つめる。この想いに報いるには何ができるかなんてわからない。だけど可能性の許す限り私は私にできることをやっていきたい。
「うむ。さぁ、紗凪この中から一つお主が行きたい学校を選びなさい」
シャーロットだけが誕生日プレゼントを渡せていないというね
可愛そうに…
紗凪の不安は誰でも一度は考えちゃうんじゃないのかなって部分が多いですよね~
改めて考えさせられるというかなんというか




