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薔薇の国の妖姫の秘め事  作者: 結汝
出会い その気持ちは芽生え始め
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始まりの音は鳴り響く2

真っ白なカーテンベッド。

サイドには木製机と優雅なカーブが施された木製椅子、木製のタンスが設えてある。

カーテンベッドの上に小さな人影が見える。


「おいで、楼狼・楼雅」


優しい声に反応してアイリスの手元の人型の紙切れ・・・通称式神と呼ばれるそれはベッドの上に仁王立ちする人の元へと吸い寄せられるように戻っていく。


「お嬢様・・・。おふざけがお過ぎではありませんか?今日は大人しくなさっておいでくださいと申し上げませんでしたか?」


カルナスさんが少し声のトーンを落としベッドに向かって小さな殺気をたてる。


「ええ、聞いていたわよ?だから大人しくしているじゃない?あーあ、長くてつまらなかったわ。」


ベッドに仁王立ちした人物はお行儀悪くも一跳ねしてバフンッと音をたてて座った。

ベッドの上に座る人・・・柔らかな長い金髪、ベッドと同じ純白のワンピースを纏い透き通るような肌を持ち、頭に・・猫耳カチューシャをつけた少女が優雅に座っている。


見たことがある。

通りで声に聞き覚えがあるはずだ。だって彼女はついさっき中庭で僕を案内した・・・。


ふわっ。


少女は金髪をなびかせ、小さく笑いながら値踏みをするかのようにこちらを見つめる。


「はじめまして。先ほどは申し訳無かったわ。

私に仕える者として相応しいか軽く試させて貰ったわ♪お強いわね?メイド長ミャニャー・ナスキリアのお孫さんであるメイド見習いミャニャー・アイリスさん。」


アイリスがびくりと肩を震わすのが一瞬だが、見て取れた。


「で、騎士見習いのネルヒネーラ・カルマさん?隣国からこちらに来たんだってね。よろしくね。」


キュッ。

カルマが靴に力を入れたのがわかった。

・・・緊張が伝わる。

ゴクッ。

小さく喉を鳴らす。


「それで、最後は・・・アレ?さっきぶりだね〜。執事見習いアルビネア・シャーロット君?」

「「「・・・はい?」」」


ジッととした目線がこちらに向く。ヒヤリ。

背中を冷たい汗がはしる。

が、しかしすぐさまカルスナさんの目線は紗凪に向かう。


「おじょ〜う〜さ〜ま〜?どういう事ですか?今先程お嬢様は確か、確かに大人しくしていたと申しませんでしたか?」


カルスナさんの右眉がピクピクと引きつっている・・・。ヤバイほどに怒ってるよ。

それに気づいてかカルマもアイリスも横目でカルスナさんを見る。だが、アイリスだけはちろちろとこちらを伺っている。

・・・めっちゃ疑われてる・・。

クスクス。紗凪は愛らしく笑いながら答える。


「ちゃーんと大人しくしてたわよ?だって王城を出てないもの。誰も部屋から出ないなんて一言も言ってないわ。クスクスクスクス。」


ピキッ。

カルスナさんの笑顔が引きつっている。

明らかにすっごい怒ってる。

にもかかわらず紗凪は悠々と笑っている。


「さておき、自己紹介の途中だったわね。私はローズタスト王国、現国王アルフェナル・ローズタストの孫であり第一皇女ウレーナ・ローズタストの娘・・・現第一皇女紗凪・ローズタスト。これからどうぞよろしくね〜。」

「「「・・・。」」」


にっこり微笑むその笑顔はとても可愛らしく思えた。


こほん。


「お嬢様。後ほどお話があります。」

「えー、カルナスの話って大抵お説教だもの。嫌だわ。だから聞かなーい。」

「お嬢・・・」


カルナスさんの言葉が言い終わらぬ内に紗凪はプイッとそっぽを向いてしまい、カルナスさんは短くも深いため息をついた。

カルナスさんは僕らに向き直ると短い合図を出す。

さっと一列に並び。紗凪いや、紗凪お嬢様に頭を下げる。


『本日より紗凪お嬢様にお仕えさせて頂きます。』


「メイド見習いミャニャー・アイリス。少しながら陰陽道を極めております。」

「騎士見習いネルヒネーラ・カルマ。剣術から体術まで極めております。」

「執事見習いアルビネア・シャーロット。執事として雑務から体術まで取得しております。」


『不慣れな事もありますが、どうぞよろしくお願い致します。紗凪お嬢様。』


3人の声が揃い、凛とした決意の声が響き渡る。

顔を上げれば紗凪お嬢様が・・・笑顔を消し不機嫌そうに顔をしかめる。

まるでもう、うんざりと言わんばかりに。

そこで気づいた。室内の雰囲気が少し違うことに。

紗凪お嬢様が眉をしかめながら口を開く。


「・・・貴方方にはわかるかしら?今この部屋に何人いるか。・・・」


お嬢様の瞳が鈍い光を放ったと感じた瞬間。

ゾッ。背中を冷たいものがさっと撫でる。

コレは・・・部屋中から沸き上がる殺気の矛先がこちらに向けられている。冷や汗が額に滲み出る。


「なーんてね。コレが私からの見習い祝いの謎々よ?誰か1人正解出来たら貴方達を認めてあげるわ。」


紗凪お嬢様が満面の笑みを浮かべると殺気がさっと引いていく。

カルナスさんは頭に手をあて首を振っている。

気づいてない・・・。

これほどまでの執事があの殺気に気づいていないなんて・・。

ありえない。 ならアレは。


「さて、今日は明日からの予定を伝えねばなりませんのでお三方と私は一旦失礼します。

くれぐれも大人しく、お部屋でお待ちくださいね。

紗凪お嬢様。」


カルナスさんが少しきつめな口調で念をおす。

紗凪お嬢様は透き通るような白い頬をぷっくらと膨らませ、薄っすらピンク色に染める。


「はいはい。分かりました〜。大人しくしてますよーだ。(部屋からは出るけど)」


カルナスさんはまたもや小さくため息をつき、僕らに退出するように促す。

扉まで行き着くともう一度お嬢様に向き直り一礼する。

ギィー。小さい音を立てて大扉が閉まる。


頭の中には一瞬にして膨れ上がった殺気の謎だけが残る。

・・・この先不安な僕らの王城生活が幕を開けた。


久しぶりの更新です。

長らくお待たせいたしました。

今回でメインキャストは揃いました。

紗凪・シャーロット、カルマ、アイリスこの4人の今後の成長を暖かく見守って頂きたく思います!

では、次回もお楽しみください。

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