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いつもお読みくださりありがとうございます
静まり返った室内は驚きと戸惑いが蔓延していた。
1つは俺が一回の見習いであるにもかかわらず大声で反論したことに対して
2つめは紗凪はウレーナ様の想いを受け継いで頑張ってきたことに対して
3つめは紗凪が自身の選択で人間側に戻ってきたことに対して
まあ、2つめと3つめの衝撃が強いのだろうけど。
ここまで来たらもう最後まで伝えずにはいられない。これが紗凪への正真正銘最後にできることだから
「陛下、私は一度お嬢様と—」
バァァァァンン!!!
俺の言葉は勢いよく開かれた扉の音によって遮られた。
扉の向こうには艶やかな金色と薄ピンクのグラデーションの髪を持った少女が立っていた。
どこか泣きそうでいながら歯を食いしばった彼女は初めて出会った時と同じワンピースを纏いながら額には汗を浮かばせてこちらを見下ろす。
「紗n-」
「そのものの拘束を解きなさい」
紗凪の声にあっけにとられていた騎士団長たちは一瞬反応が遅れた。
「しかし紗凪様この者は陛下に」
「私の言ったことが理解できなかったのですか?騎士団長。私は私の側付きであるシャーロットの開放を命じたのです。さっさとシャロを開放しなさい」
ピシャリと言い切った紗凪に気おされて騎士団長たちが俺の拘束を解く。
紗凪はほんの少しだけほっとした表情をした後にアイリスとカルマに立つように命じる。
その姿はいつも俺たちが知っている紗凪とは少し違って見えたのはなぜだろうか。
「国王陛下この者の無礼はすべて主である私の責であります。申し訳ございませんでした」
紗凪は陛下に向かって頭を下げる。
—ッッ!!
「紗凪様!!これは俺が勝手にやったことで—」
「しかし私は陛下に物申さねばならないことがございましてよ」
紗凪は焦って声が大きくなった俺の言葉にかぶせるように陛下に物申す。何故紗凪がこれほどまでに俺達をかばいそれでいて今まで避けていた陛下に対峙しているか分からない。
混乱する俺達を置いて紗凪は陛下の返事も待たずに話し始める。
「私の側付きを勝手に解雇とはあんまりですわ。もし解雇するなら何故私をこの場にお呼びになられないのですか?」
不服だとはっきり言う紗凪に見習い3人は目配せしてどうやって紗凪を止めるか考える。これは仕方のない処遇なのだから覆すことはできない。
それをこれ以上言い続けても紗凪の立場がよろしくないだけであって‥‥
「失礼ながらお嬢様、その見習いたちはお嬢間の側付きでありながらお嬢様を守れなかった。それ彼らに与えられた任に反します」
「だから彼らを解雇する、、そう言いたいの右大臣?」
右大臣は「その通りでございます」と首を縦に振る。
「では聞きます。貴女方であれば私は攫われなかった保証はどこにあるのですか」
その言葉に誰も答えられない。
何故ならこれは—
「今回のことは誰が側付きであっても起こりえたものです。それを見習いである彼らに押し付け彼らのみに罰を与えるだなんて間違っているわ」
「ですがお嬢様これは任に違反したため」
「彼らは何も違反などしていないけれど?」
「「「「「??!!」」」」」
室内の空気が固まる。今なんて言った?
違反してないってそれってどういうことだよ。だって俺達側付きは紗凪を守るために…それは人間だけでなく妖側からもということだったはずなのに
「紗凪…違反していないとはどういうことだ」
陛下の声がわずかに震える。一方の紗凪はすました顔でこてんと首を傾げる。
表情は見えないから分からないが正面のカルナスさんたちは酷く困惑した表情になる。
「どういうことと言われましても困りますわ。だってここに居る皆さんだけでは妖世界に行くことはおろか妖と渡り合うことなんて不可能でしょう?彼らの任は私を人間と妖の両者から守ること。ならば彼らは違反しておりませんわ。だって」
くるりと振り向いた紗凪はどこまでも晴れやかに笑う。
「私は彼の言葉でここに戻ってくる決心が出来ましたもの。自分の気持ちを押し殺して周りに理解されない悲しさから諦めていた思いをあきらめるなと言ってくれた。私を私として真正面から関わろうとしてくれた。妖と彼らは対等に関わろうとしてくれた。
それがどんなに意味があるものか‥どれほど私の心を救ってくれたことか...」
紗凪は前を向き凛とした声を響かせる。
「私は彼ら以外の側付きを認めません。もし陛下のお心が変わらないというのであれば彼らは今ここで私個人が雇うまでです。異論は認めません」
「お嬢様!!!」
「城の者を私はお父様の力のせいでみんなをみんな信用は出来ない。でも彼らならもし裏切られたとしても本望だと思えるの。だからいくらカルナスに止められても私の考えは変わらないし変えられない」
「‥‥それを私が認めると思っているのか?」
酷く低い声に背筋が凍る。陛下と紗凪の視線が絡まる。
小さな火花を散らしながらどちら引く気は全くない。
「ふぅ、陛下に納得していただけないのは別にかまわないのですが後々めんどくさそうなのでとりあえずそうですね~」
身をひるがえした紗凪は棒立ちになっていた兵に近づきニッコリとほほ笑むと彼の腰から剣を引き抜き首元に剣を当てる。
「ヒッ!」と短い悲鳴が上がり男性陣が素早く紗凪の剣を奪おうと一歩踏み込んだ瞬間
「止まりなさい!!」
ビリっと室内の緊張が張り詰める大きな声を出される。
いま彼女を刺激すればどうなるかなんてみんな同じことを想像したことだろう。
紗凪は依然とにっこり微笑みながら国王から視線を離さない。
「心配せずとも死にたくはないので血は流しませんよ。ただこの国は髪色が王家の継承者の証でもありますでしょう?ですから―」
その瞬間、彼女の言わんとすることが分かった。
彼女の髪は陛下たちとは違う。一色ではないのだ。
金とピンクの2色。しかも頭のてっぺんから首元までは金髪で首下から毛先までがピンクになっている。紗凪の外見での王位継承の証は切ろうと思えば切れる場所にある。
それをすることは紗凪の立場を王城で悪くする一方でしかないというのになぜ彼女は…
「だからこうして髪を切ってしまえばいいのではないかと思いまして」
「おおおお嬢様?!」「おやめください!!」
「誰かお嬢様をお止めしないか!」
周りは半パニック状態だ。国王陛下もこれには目を見開いて固まる。
だが一歩でもその場から動こうとすれば「動くな!!!」紗凪の声が響き皆動けなくなる。
「陛下はお考えを変えてくださらないでしょうか?」
「‥‥」
「陛下、、、いえ、お祖父様。私はこの城での4年間ずっと悲しかった。寂しかった。誰も私を私として見てくれず、ずっと小さな部屋から出してもらえなかった」
紗凪の握る剣が震えるのが分かる。
ずっと言えなかったものを今伝えているのだから仕方もない。
「私はお母様じゃないよ?私は半妖だからお母様にはなれない。お母様はずっと国を捨ててからも国を民を案じていた。ごめんなさいと。守れなくて、傷つけてごめんなさいと。でも私がお母様が叶えられなかった願いを叶えられるなら叶えたい。お母様の様にできないけど私なりに国に、国民に向き合いたい」
両陛下は声を発さない。周りもただただその声に耳を貸すばかり
「だって私はこの国の姫なのですから」
その言葉が紗凪にとってどれだけの重みがあるかなんて俺らに分かるはずがない。でも相当な覚悟を持って放った言葉だっていうのは理解できた。
俺達が仕えるお嬢様はこんなに小さな背中に数えきれない数の希望と生命を預かり、それと同じくらい他者に傷つけられたのだ。そんな彼女をどうして守らずにいられるんだろうか。俺は、こいつのために何を返せるだろうか。
紗凪のお嬢様口調はいわば武装状態の様なものですかね。
まぁ立場が立場なだけにため口ははばかれたのでしょうね。
てか、紗凪かっこよくないか?
次回は3月2日です。




