繋がりは強く
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「何故ここが」
春志は驚きを隠せない声音でシャロを見下ろす。
『何故たかが人間がここに入ってこれた?』
その声に紗凪は涙をぬぐいフッと笑う。
「シャロは春志が言うようなひどいことはしないよ。だってシャロはみんなが見えるから」
「!姫様」
「私は私の居場所を決める。私の居場所はここじゃない」
そうだ。私はお母様がなせなかったことをするために―
「なりません!貴女様はここに居れば傷つかずに済むのですから‼」
春志の言葉に胸が痛い。分かっている。ここに居ればきっと傷つかないことも
みんなが優しいことも知っているのだ。
だから私が大好きな人たちを怖がらせることも、怖がられることだってないのは分かっている。
それでも―
「私は人の側にいた―」
「そうして今まで何度涙を流したんですか?何度裏切られたのですか?もう我々は貴女様が傷つき涙するのを見たくないのです」
『我々を裏切るおつもりですか?』
ドクン
聞こえた本音に心臓が止まるかと思った
だってその声音を私は何度も聞いてきた。城の中でずっとずっと
『あれが噂のウレーナ様のお子様か』『人と妖の混ざりものなんて気持ち悪い』『またこの国を裏切るかもしれない』『何を考えているか分からない』『怖い』『恐い』
「っ、私は―」
妖の瞳が刺さる。
違う。私は裏切りたいわけじゃないの
ただ、ただ…
「さぁ姫様我々の手をお取りください。貴女様にとっても周りにとってもそれが一番なのですから」
声が出せない。ここで手を取らなかったら?みんなは王城と同じような感情を私に投げつけるのでは?
そう考えれば考えれるほど動けなくなってしまう。
「そーやって紗凪の気持ちを遮るな‼」
ビュン
下から投げられたさっきのと似た毛玉(?)が春志の顔にヒットする。
「紗凪!お前はどうしたい?お前の本音を言ってみろ!周りじゃないお前の本当の気持ちを」
「貴様‼黙っていればいいものを」
シャーロットは不敵に笑う
まるでその言葉を待っていましたと言わんばかりに
「人間のしかもこんなガキに言われて困るような言葉の外堀をそいつに使うんじゃねえよ。俺たちのお嬢様の意思を無視することは執事としても何より友達として見過ごせない!」
“友達”あぁそうだ。私はいつも籠の中の鳥だと思っていた。だってみんなが私を守るから。
自由なんて限られていて…だから何度もあきらめていた。
私の思いは届かないと
でも彼らは私と友達になってくれた。
目の前にいる彼だけじゃないカルマもアイリスも私を必死になって探してくれた。
私のために泣いてくれた
信じたいと思った。初めて信じてほしいと信じたいと思った人。
そんな彼は妖の巣窟に一人で乗り込んでいてしかも妖達からは歓迎されていないのにそんなことお構いなしに屈託のない笑みをむける。
『大丈夫、お前の気持ちをちゃんと言ってみろ』
彼は優しい。その温もりが痛いほど伝わってきて拭ったはずの涙がハラハラと頬を伝い地面を濡らす。
「―ッ、私は、みんなといっじょに‥‥ヒック、王城で過ごしたい」
声が震える
「妖のみんなも王城の人も同じくらい好きだから大切だから選べないけど、ヒックお母様の思いを今度は私が叶えたいから」
だから
「だから、私は王城に帰りまず‼」
溢れた涙は視界を歪ます。
それでもシャロの笑った顔だけは鮮明に見えた。
「よっし!紗凪飛べ‼一緒に帰ろう俺たちの場所へ」
その言葉を聞き終わる前に私は走り出していた。妖達が止めようと手を伸ばしてきたそれらを振り切り崖へと走る。
「な!なりません姫様!」「姫さん無謀だ!」
後ろから春志や伊鶴の悲鳴じみた声が聞こえたが足は地面を蹴りつけ体は宙へ浮く。
「シャロ」
広げられた腕の中へ飛び込む。
そのまま一緒に倒れこむ。あったかい
ギュッと抱きしめられ安堵した声で名前を呼ばれる。
たった一言、その一言で私は嬉しくなって安心できる
「ただいま」
「あぁ、おかえり。紗凪」
優しく細められた瞳に言葉にならない思いが涙となって零れ落ちる。
「泣くなよそんなに。俺は紗凪の笑った顔が好きだから泣くよりは笑ってくれると嬉しいんだけど」
困ったように言って目元を拭ってくれる。
「私みんなのこと忘れてた」
「うん」
「忘れたくなくて思い出そうとしたら頭痛くなって」
「うん」
なんでこんなこと言っているのか自分でも分からない。ただ勝手に言葉紡がれる。
「ごめんなさい」
「なんで謝るの?俺だって紗凪を守るっておもっときながらあいつの言うと通り守れなかったごめんな」
「でも―」
「お互い様ってことにしよう。だからさ、紗凪俺にお前のことを教えてよ」
まっすぐな瞳に胸にこみ上げるものがあった。
この感情を人はなんというのだろうか
お日様の様に笑う彼はコツンと額を合わせてもう一度私を抱きしめた。
次回更新日は10月24日になります。
よろしくお願いします。




