繋がりは強く
いつもお読みくださりありがとうございます。
ピロピロロロ
!
胸元に入れていた通信機を取り出す。
「はい、もしもし?」
『もしもし今どこにいる?』
一瞬ほんのちょっとでも期待した。紗凪がかけてきたのではないかと…自分は無事だから心配しなくても大丈夫だと、ちゃんと城にいると―
だが通信機の声はカルマだった。
期待はほんのちょっとだったはずなのに落胆はすごかったのを自分でも驚く。
「今は城から結構離れた西のほうにいるよ。街ぬけて住宅街もぬけるかもしんねぇ」
『!ナイスだよ‼その周辺に森林公園があるだろう?』
森林公園―?
あぁ。なんか看板見た気はするけど…なんで?
「結構近くだと思うけど」
『その森林公園に花畑があってそこからなら可能性は低いらしいけど妖側へ行けるらしいんだ』
「!」
妖側に行ける=紗凪を助けられる
「分かった!すぐに向かう」
『シャロに全部任せるよ。あと、君が聞きたいことは無事にすべてが片付いたら話すよ。だから…』
カルマの言わんとすることが分かり、少し走る速度を緩め息を吐きだし頷く。
「あぁ。あとは任せとけ!」
通信を切って二匹の毛玉に声をかける。
「なぁ、俺を森林公園の花畑近くにある妖側とのゲートまで案内してほしい。頼む」
毛玉はくりくりの瞳を俺に向ける。
頼れるのはこいつらだ。
王城からここまでわざと連れてきたというよりはこうなるのをまるで分っていたように導くこいつらはきっと信じても―いや、利用しても大丈夫なんじゃないだろうか
下げた頭でフル回転してわずかな可能性もムダにしたくない。
「ぷぎゅっ」「ぶぎゅぶぎゅぶ」
頭を上げれば毛玉が飛び跳ねていた。
片方は頼ってもらったのが嬉しそうに、もう片方は何をいまさら当たり前だろうみたいにしている。
「‥あ、ありがとう」
毛玉はぴょんぴょん飛んで道を誘導する。
その道をはやる心を押さえながらただまっすぐに突き進む。
「姫君、姫君」
「んん」
「お目覚めになられましたか、心配しましたよ」
「春志…私いったい…」
「急に倒れられたので焦りましたよ」
緋色の瞳が少し揺らぎ安どのため息をつく。
あぁ。まただ。また私は迷惑をかけてしまったのね。
「ごめんなさい」
「いいえ、貴女様の体調を考えずにどんちゃん騒ぎをした我々の落ち度でありますからお気になさらず」
そういえばそうだった。みんなで楽しく騒いでいたら急に何か考えていて―
「姫様?」
「あっ、ごめんなさい」
「まだ体調がすぐれませんか?」
「うんん。違うの」
春志が心なしか眉間に皺を寄せる。怖いよ、、、顔が、、、。
「…私何か忘れている気がするの」
まっすぐに春志を見つめる。
ここではぐらかされたらダメよ。私はきっと大切なことを忘れているもの
そのことにはどこか確信があった。
ずっとおかしいと思っていたこと。
妖達は私の側にいてくれたことに今までも変わりはないけれどきっとここじゃない。
この森で一緒にいたんじゃない。
だってここで過ごしていたのならどうしてこんなに懐かしく思うんだろうか、どうしてこんなにも胸がざわつくのだろうか。
「話して、春志!私はここに居ちゃダメなんだから!」
「貴女様がここにおらずしていったいどこに行こうというのですか?」
「春志‼」
「たとえ貴女がここを出て行ったとしてどこに行かれるんですか?また居場所もなく肩身の狭い思いをして傷つけられてボロボロになるだけではありませんか。それならここで―私達とともにあなたが一番幸せに過ごすべきです」
春志が紡ぐ言葉が胸に刺さる。
私がいるべき居場所なんてあるのだろうか。
また傷ついて疲れて裏切られて涙にくれて力を暴走させて周りを怖がらせるかもしれない・‥‥
側にいてくれる人を傷つけるかもしれない…
「わたしは・・・」
「そうですよ、姫君。貴女が傷つかないで済むためにはここが一番ではありませんか」
春志がフッと微笑む。
確かに春志の言うことは正しい。
私がここに居ることが一番周りにも迷惑のかからない最善だ。
そっとのばされた手を朧気に見つめゆっくりと手を伸ばす。
また私は籠の中の鳥にしかなれない―
「いっけえええええええ!!!!!!!」
「ぷぎゅぅ~!」
いきなり叫ばれた声に驚いて目を開けると私と春志の間に白い毛玉が飛んできた。
飛んできたのはどうやら私たちが立っている場所の下(崖の下かららしい)
「なっ!?」
珍しく春志が驚いた声を出す。
その瞬間なぜかすべてがスローモーションに見えた。
私はこの国の王城にいて泣いていたら伊鶴と雛葉に眠らされて、気づいたらここに居て春志の妖力で記憶を一部封じられていて・・・・
思い出そうとしたら頭が痛くなってみんなが側にいてくれたことを思い出して・・
だから今の声はきっと―
私は崖下が見えるところまで走り出す。
後ろから春志の焦った声が聞こえた気もするが今はそんなことはどうでもいい
だって崖の下には絶対に彼がいる。
綺麗なプラチナの髪に夜空を切り取ったような漆黒の瞳
まだあどけなさの残る男の子らしい笑みを浮かべている誰よりも私が信頼している少年
他人のために自分も泣いてしまうほどのお人よし
私と同じ世界が見える大切な友達
こみ上げる感情のせいで上手く声が出ない
それでも名前を呼びたい。彼の声を聴きたいの
「―ッ!ふぅ、シャロ~‼」
名前を呼ばれた少年は私を見て安心したように優しく温かな笑みを浮かべ息を吸い込む。
「紗凪~!みーつけたああ!」
たった二文字
名前を呼ばれたたったそれだけのはずなのに彼に呼ばれると自然と嬉しくなって胸があったかくなる。
こみ上げた感情がはらはらと頬を伝い落ちる。
この涙は決して悲しいんじゃない。今まで流したことのない涙
人はこの涙をうれし涙というのだろう
次回更新は10月8日です。
今後も薔薇の国の妖姫の秘め事を宜しくお願い致します。




