その手の中に
いつもお読みくださりありがとうございます。
明るくなった部屋にぶちまけた粒子の輝きが増す。
直視すれば目くらましになる。
相手は「うっ」と声を漏らしながら光から顔を背ける。
ダッ
片手に握られた簪を蹴り飛ばし、そのまま相手を押し倒し馬乗りになる。
「さて、紗凪はどこですか?」
短剣を喉に押し当てる。
「言わない」
「そうですか。ですが、早く吐いてください。アイリスに手渡せばいやでも吐いてくれるでしょうが貴女はずっとここに居て紗凪にとって大切な存在です。できる限り手荒な真似はしたくないんですよ」
その妖はとてもきれいな藤色の髪だった。
整った顔に一線の切りつけた跡がある。
せめて顔以外を狙えばよかったかな。まぁ浅いから大丈夫だろうけど跡が残るのは申し訳ないな
「お前達人間に教える義理はないし、まして‥‥お前が言ったことが事実であったとしても私は絶対に口を割らない」
妖は綺麗な藤色の瞳で見つめる。
口は割らない‥か。
これはアイリスに引き渡したら自害しかねない勢いだな
「そうですか。なら仕方ありませんね」
そう言って妖からスッと退く。
短剣を腰に終い部屋の中にぶちまけられた粒子に目をやる。
あぁ、これは片づけるのがめんどくさいな。
しかも浅くではあるけれども紗凪のベッドに短剣を突き刺してしまったし…
これって弁償にあたるのかな~?
お給金からじゃ絶対払えないし、、、どうしたものか。
「何故?」
「はい?何がですか」
妖がほんの少し困惑の色を見せながら見つめてくる。
「何故、私から退きあまつさえ取り押さえようともしない。何故だ」
「え、なぜって必要がないからですよ?だってあなたは紗凪を最優先に考えるでしょう。そして僕らに危害を加えるつもりがない。そんなあなたをこれ以上拘束する意味がありませんから」
さてと箒をとってこの惨状がアイリスに見つかる前に片づけますか。
「…その甘さはいつかお主を殺すぞ…」
ぼそりと呟いた雛葉の言葉はあいにくカルマの耳には届かなかった。
雛葉は箒を手に取りせかせか働くカルマを目にしながら頭の中で少しの可能性が―期待が―よぎる。
「森林公園の花畑の近く」
「? なんですか?」
カルマが雛葉の方を向く。
雛葉が盛大な溜息を一つついた。
「だから、森林公園の花畑の近くならもしかしたら妖側へ行くことが可能かもしれない」
「!?」
「ただし妖側へはだれしも行けるわけではない。可能性は限りなく低い」
「なんでそれを…‼」
フイっと顔を背けこれ以上は話さないと意思を表す。
困ったような笑みがこぼれる。
「ありがとうございます」
どういう心境の変化でこれを教えてくれたのかは分からないがきっと悪い意味ではないのだろう。
きっと心優しい妖だからこそずっと紗凪のそばで守っていたのだろう。
手にしていた箒を机に立てかけ騎士として一礼をする。
「ありがとうございます」
妖は居心地悪そうに顔を背ける。
連絡端末に手を伸ばす。
あとはシャーロットしだいだろう。
頑張れよ。そっと心の中で応援し、連絡を取る。どうか紗凪が無事で、、、いや、笑っていてくれますように‥。
次回投稿は9月12日です。
よろしくお願いします。




