不思議な少女
どうしよう。
今からこの薔薇園を切り抜けるにしてもここは色とりどりの薔薇によって迷路のようになっている。
どんなに早く切り抜けれても10分はかかる。
そこから城内の4階にある雛先の間に行くには5分はかかるだろう。そうしたら、完全に遅刻だ。
時間内に間に合わなければもう二度と執事の職にはつけない。そうなれば今までの努力が全て無駄となってしまう。
そんなのまっぴらごめんだ。
考えながらも薔薇園を一刻も早く切り抜ける為にアーチをくぐろうと足を向けるとどこからか幼い少女の声が聞こえた。
「お迷いですか?旅人よ。」
辺りを見渡すと少し先にある赤薔薇のアーチの所から白い透き通るような肌に白いワンピースを着た、猫耳をつけた少女がにっこり笑っていた。
・・・何故そこにいるのか、なぜ猫耳なのかなどの瞬時に湧き上がる様々な疑問符を一旦飲みくだし彼女に訪ねる。
「君は・・・ここに仕えてる子?」
「ええ。仕えてるとは少し違うけれど・・・。私は紗凪。あなた見習いの子?」
彼女、紗凪は曖昧な答えを口にしたが今は使える手段は使わないとほんとうに間に合わない‼︎
そんな焦りを覚えながら頷き返す。
「うん。僕は今日からここで執事見習いとして仕える予定なんだけど、この薔薇園の城内入り口までの最短経路知らないかい?」
小さな希望を持って彼女の瞳をじっと見つめる。
「・・・見習いの集合部屋は雛先の間・・。」
「え?」
あまりに小さすぎず声は彼女が何を話したのか聞き取れず、思わず聞き直してしまう。
だが、紗凪はいきなり僕の左手をつかむと勢いよく走り出した。
そのあまりに突然過ぎ行動にはビックリしたが彼女は片手を僕と繋いでいるにも関わらずアーチの隙間を走り抜け、花壇のレンガを器用に渡り、小さな鉢をピョンピョン跳びこえ執事と訓練を受けている僕の方がなんだか息が上がっている気がしてしまう。
そんなこんなであっと言う間に王城入り口に辿り着いた。
息を整える僕に紗凪は近づいてきていつの間にか頭に引っ付いた葉っぱを取ってくれ、自分の手を東館最上階にむけて指差し
「4階に上った1番手前の部屋が見習いの集合部屋よ。」
と教えると僕をグルンと回転させてバシンッ‼︎
ヒリヒリするほどの力で気合いを入れ直す為に背中を叩いてくれた。
背中を叩かれると同時に城内へと足を踏み入れる。
お礼を伝えようと振り向いたがすでに彼女の姿は無かった。
何処に行ったのか探そうと思って入り口に足を運ぼうとした瞬間、
ゴーン、ゴーン
3時を告げる鐘が国中に響き渡った。
その鐘の音があと残り5分しかないことを告げ、僕は紗凪を探したい一心を止めて今一番やるべきことを成す為に4階へと続く長い階段を上って行く。
前回からかなり間が空いてしまって申し訳ないです。
ですが今回は2作投稿します。
感想を下さった方、ツイッターで応援してくださる方々ほんとうにありがとうございます。
今後も見捨てずに読んでください。
最後まで読んでくださりありがとうございます。次回作も是非読んでください。