籠の中の鳥は何を求める、3
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夜 紗凪の自室
「今日はね、大臣にアイリスとの息があっててよかったねって褒められたの!アイリスを褒めてたんだろうけどなんだか私まで嬉しくなっちゃって」
「それはよかったわね」
「うん!」
雛葉が私の頭を撫でてくれる。なんだか今日は大臣に褒められたのが凄く嬉しくて仕方がない。
たぶん3人とのことを褒められたのが私をこんなにも嬉しくさせているのは間違いない。だって今までそんな事言われなかったから―。
「で、それは何の書類なんだ?」
手に握られた分厚い書類。
これは財務大臣に渡された国の財源状況と今現在の出費と収益状況をレーダー化したものや、それによる国民の幸福度合い=満足度を数値化したものが載っている。
「国の満足度の書類かなァ~」
えへへと笑う。あまり雛葉達に見せたくはないものだ。
「そうか」
そう言われてホッとする。
あまり聞かれてもかわせる自信が無いから助かった。
――きっといい風には思われないだろうし・・・・・
コンコン
部屋の扉が叩かれる。
誰だろう?時刻は23時を回ろうとしている。
とりあえず、部屋の明かりで起きているのはバレているから扉の方へと歩いていく。
雛葉は使用人たちに姿を見られたくないとかでヒヨコのぬいぐるみに姿を変える。
「はぁい、誰?」
「やっぱり起きてた」
「! シャロ。どうしたの?」
扉を開ければ、シャロが立っていてどこか心配そうに見られる。何かしたっけ?心配されるようなこと
「んーと、少し話をしたいなぁと思ったんだけど…」
「話?いいけれど、どこで話すの?」
「会議室はどうかな?誰もいないし」
「分かったわ。会議室に行きましょうか」
ベッドの上に脱いでいたカーディガンを羽織ってシャロとともに部屋を出る。
なんだかこんな時間に会議室は入ったことがないから新鮮だ。少し楽しく思えてきた。
「どうした?いきなり笑いだして」
シャロが振り向いて不思議そうに見てくる。
「いえ、こんな時間に会議室って新鮮だなぁって思っただけよ。なんだかワクワクしてきて」
「そう言えばそうだね。じゃぁ念の為に手でも繋ぐ?」
「うん!繋ぐわ」
差し出されたシャロの手をサッと握る。握られた本人は私が手を取るとは思ってなかったのか「えっ?」と小さな声を出したものの笑いながら握った手を優しく握り返してくれた。
誰かと手をこんなふうに握ったのなんていつぶりだろう。なんだかちょっぴり恥ずかしくも思う。それでいて胸の辺りがほんわかする。
こんな気持ちってなんて言うんだっけ。
2人で誰もいない会議室に入って、椅子を移動させて向かい合う形にして座る。
「実は紗凪が手に持ってるその書類。紗凪が昼食に行ったあとで偶然中身が見えて・・・悪いけど中を確認した」
「か、確認した・・の・・?」
「ごめん。悪かったとは思ってる。
だけど紗凪の様子が少しおかしく思ったから気になって」
書類を握る手にじっとり汗ばむ。
心臓がバクバク煩い。
別にシャロが悪い訳では無い。執事として当然なことをしたまでなのだ。
そう、それは分かっているけど…
「どう思った?これを見て」
シャロを見る。シャロのピオレ色の瞳が真っ直ぐに私を見つめ、互いの視線が交わる。
ドクン、ドクン
頭に響く心臓の音がやたら大きく聴こえる。ゴクンッと唾を飲み込む。
でも、そのわりに喉は乾いてきて…大臣と話していた昼間執務中よりも緊張しているかもしれない。
「僕は…紗凪が泣くんじゃないかって思った」
「ふぇ?」
シャロの言葉が自分が言われると思ったものでもはたまた近しいものでもなくて素頓狂な声が出てしまう。
「ふぇ?って。アハハッ!僕は紗凪が心配になったんだって伝えたんだけど」
「えっ、あ、うん。そうなんだけどそうじゃなくてえっと」
シャロが笑う。対する私はなんだか身体が熱くなる。
「紗凪が次期国王にふさわしいと思うよ。」
「・・・」
真っ直ぐな瞳に嘘偽りはない
「ただ僕はアルフレッド・ローズタスト第3皇子を知らないからなんとも言えないよ」
眉を下げて困った風に笑う。
アルフレッド・ローズタスト 母様の弟にあたり、私の叔父。
私自身あまり詳しくは知らないが叔母である母様の妹 ルシア・ローズタストは自らの希望で外務を携わり継承権を放棄している。
だが、叔父は何をしているか知らないが継承権を放棄していない。
ローズタストは第1子が王位を継承するしきたりがある。母様が第1子で私がその子供だから王位継承権は私にある―という見方が大半。
しかし、私が幼すぎる事と母様が王位継承権を放棄して駆け落ちした事で私に王位継承権はないという考え方もある。
そして私の左手に握られた分厚い書類には次期国王は紗凪とアルフレッドどちらがよいのだろうか、つまりふさわしいかを大臣達にアンケートした結果と国民調査結果が記されている。
国民はどちらかと言えば私より
だが、大臣達はそうもいかない。
国を現状動かしている私を蔑ろにできない分無投票数が多かった。内心ではアルフレッドを推したいが現状を見る限り私が表立って支持しにくい・・そう思っているから私よりもアルフレッドよりも少なかった(結果としてはだが)
それをわざわざ財務大臣は私に見せ、私の意思を見定めようとしているのだろう。口には出さずとも『貴女に覚悟はおありですか』と・・・・・
「驚きはしないわ。悲しくもない。だってみんながだした答えはきっと私が大臣の立場なら同じように考えるわ」
「でも諦めたくもないんだろ?」
ふっと笑いが漏れる。
「うん、そうね。諦める…というよりはなんだか納得いかないわ。だって私を馬鹿にしてるみたいに感じるもの!」
「あはは、紗凪らしい答えだな」
「私は今が好きよ?シャロがいて、アイリスがいてカルマがいて、カルナスがいるこの城が好き。この国が大好き。
それに私の知らないところで私を評価されるのはすっごい嫌よ!!だから絶対にあいつらを認めさせてやるの!」
シャロが勢いよく椅子から立ち上がった私を楽しそうに見る。
「なんだか心配損な気がするなぁ〜。そんな高らかに宣言するほどだから僕が思っているより紗凪は強いんだね」
「そうでもないわ。だって、本当は泣きそうだったもの。誰かに打ち明けていいものでもないし、かと言って1人で解決出来るものではないと思ってたもの」
以外だと口に出すシャロはどこかマヌケ顔で笑ってしまったのは不可抗力だ。
たぶんシャロがこうして話を聞いてくれなければ…話をしようと言ってくれなければ1人でグルグル考えて疲れて悲しくてしんどくなっていたかもしれない。
だから・・・
「ありがとう、シャロ。話を聞いてくれて」
「どういたしまして。じゃぁ、今度こそ寝ようか」
促されて見た時計は0時前だった。
そんなに話していたのかと驚いてしまう。「そうね」と返し、行き同様シャロと手を繋いで部屋まで帰る。
「じゃぁ、おやすみなさい。」
「あぁ、おやすみ」
そうして部屋に入ろうとしたら、シャロが「あっ!」と言って私の手を取り私の前に跪く。
?
どうしたの?おやすみなら言ったわよ?なんて考えてたら手の甲にチュッと音とともに、ほんのり温かな温もりが広がる。一瞬のこと過ぎてシャロを見つめてしまう。
視線が合えばにっこり笑いかけてくる。
「俺は紗凪が国王とか関係なく紗凪だから仕えてるんだ。それはアイリスやカルマも一緒だから・・・お前は1人じゃない。それだけは忘れるなよ」
さっと立ち上がって頭をわしゃわしゃ撫でられた後に部屋へと入れられた。
・・・・・・・・。
バサバサバサッ。
書類が落ちた。拾う気にはならない。
とりあえず手の甲にキス(?)されて "1人じゃない" と "紗凪だから仕えている"
と言われた。
手を見つめる。その手を胸の前でもう一方の手で包み込む。
胸がドキドキしてる。こころなしか顔が熱い。
なんでこんなにドキドキしてるのだろう?なんでこんなに熱いのだろう?
「〜〜〜ッ!」
なんだか色々耐え切れなくなってそのままベッドにダイブする。手近にあった枕をギューッと抱きしめる。
なんで今日はこんなにドキドキすることが多いのかしら…枕に顔を埋めれば眠気に襲われ、意識を手放した。
バタン
自室のドアを閉める。
「――ァァァ!!!!」
声にならない叫びが漏れ、両手で顔を覆いドアを背にしてしゃがみ込む。
恥っず!顔が熱い。紗凪の前では上手くやれた・・・・・はず・・・。やばい、自信ないけど。
「顔を真っ赤にしながらさっきのセリフってなかなかダサいぞ?俺」
でも、確かに紗凪が国王とか関係なしについて行くから間違えではないし…。
手の甲へのくちづけは確か"敬愛"と"信頼"だった筈だから変には捉えられないだろうから大丈夫だろう。
一応明日にでもカルマに聞いてみよう。あいつなんでかあぁいう雑学知ってるし。
それにしても、こんな自分からやることで赤面するのは男としてダメな気がするからコントロールが必要だなぁ。ちゃんと自然にできるようにしないと・・・。
新たな課題が見つかった今日という1日は、中々の充実感を残して新たな1日を告げる鐘が鳴り響いた。
毎月2話ずつ更新していけるようにしようと思ってます。
今後も"薔薇の国の妖姫の秘め事"をよろしくお願いします(*´∀`*)




