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薔薇の国の妖姫の秘め事  作者: 結汝
出会い その気持ちは芽生え始め
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籠の中の鳥は何を求める

僕らがここに来てはや1ヶ月が経とうとしている

あれから僕らは3人の時はお互いに名前を呼び、敬語は禁止となった。


「おはよう、シャロ」

「おはよう、紗凪。今日の薔薇はなんて名前?」


紗凪が手に取る一輪の薔薇を見ながら聞く

この薔薇園では多くの種類の薔薇があり、ナーベスさんが基本的には全部管理している。

一部は紗凪が暇つぶしとして育てているらしい

僕はあまり薔薇や花の種類に詳しいタイプじゃないので毎朝こうして紗凪直々に教えて貰っている


「これはマリーローズ。ほんのりオレンジ色が混じっているの」


そう言って、にこやかに笑う


「紗凪はマリーローズが好きなの?」

「んー好きって言うよりマリーローズは育てるのが難しいの。だから綺麗に咲いたら嬉しいじゃない」


ジョウロを両手で持って水やりをする

その横顔にドキドキするのはなんでだろうか。

最近こういう謎のドキドキが多い気がする

病気なんだろうか?

でもいつもする訳じゃないしなぁ・・・


「そう言えば!」


紗凪がくるりとこちらを向きキラキラした目を向ける

あぁ。アレか。


「なんですか?紗凪」

「今日の朝食はハニートーストだわ!!」

「・・・よかったね。」

「うん」


活き活きした顔が朝食を想像して緩んでいく

1ヶ月で紗凪がかなりのお菓子好きで、朝食をいつもリクエストする位に楽しみにしていることを学んだ。


「あぁ、ダメ。お腹すいてきたわ、早く朝食に行きましょう!」

「はいはい。了解しましたよお嬢様」


先を行く紗凪が歩みを止めてむーとした表情をする


「どうかしました?お腹空きすぎて歩けませんか?」

「お嬢様呼び・・・」


・・・。

あともう一つ紗凪はかなり頑固だ。


「皮肉だよ」


ボソリと言うと紗凪がぽかぽか背中を叩く


「もー!」


小さな女の子が突然牛になるから笑わずにはいられない


「笑わないでよ!シャロの馬鹿」

「いくら友達だからってお嬢様らしく振る舞う練習は大切だろ?」


紗凪の手をとり、朝食を目指して屋内へとかけていく




「本日のメニューはハニートーストと青野菜サラダ、ミールスープにハーブティーです」


料理長が料理を紗凪の前に並べながらメニューを伝える

すでにお嬢様の目はハニートースト一点を見つめている

かなりおもしろいのだが、ここで笑うと主のメンツに関わるので心の中で笑う


「ありがとう、ステーファス」

「とんでもありません。我々シェフは貴方のご要望に応えれてこそですから」


いつも無表情に近い料理長も紗凪の前では笑顔が見れる

なんとも微笑ましい朝イチの光景だ

お嬢様は超ご機嫌に朝食を召し上がる

さぁて、今日も1日頑張りますか!!



午後3時を知らせる鐘が鳴る少し前


「お嬢様ー?紗凪様〜?まだ書類が終わっておられませんよ?」

「んー分かっているわアイリス」


猫耳カチューシャがピコピコ動く

あれはどういう作りなんだろう…凄く気になる


「分かってらっしゃる割りに足は執務室と逆方向に向かっておられますよ」

「大丈夫よ。ちゃんと執務はこなすわ!だけど・・・もうすぐ3時よ。お腹すいてきたわ」

「食いしん坊ですか…」

「もー!違うわよ!お菓子が私を呼んでるの」


それを食いしん坊と言わずなんと言うのか・・

知らず知らずにため息が漏れる

1ヶ月でお嬢様が年相応の女の子である一方大変食いしん坊で鳥籠の中の鳥状態なのは分かった。

仕方ないと思うのは王族に仕えるものとしては当然なのだが、同世代としては外に憧れる気持ちが分からなくもない

だからこそ、この破天荒なお嬢様がこのまま大人しく王城に留まっているとも考え難い


「ーはぁ。」小さな溜息が漏れると、紗凪様が私の手を取り「はやく〜」と急かす

「わかりましたから」

しょうがないなァと思いながらお嬢様に手を引かれたまま厨房へ向かう


ー厨房ー

時計の針が3時をまわる

もう少ししたらお嬢様が来られる

師匠にお嬢様のお菓子係を任されてもうすぐ半年が経つ

いつも笑顔で美味しそうに作ったものを食べてくださるお嬢様には幾度となく救われている

さて、今日のおやつであるミルククッキーがあと30秒で焼き上がる

芳ばしい甘いにおいが厨房に充満する


「ミラベラ〜!!」


小さなお客様が厨房の台からひょっこり猫耳カチューシャを覗かせる

後からは大人びた雰囲気を纏ったメイド見習いのミャニャーさんが付き従っている


「今日はなーに?」

「今日はミルククッキーですよ。お嬢様」

「!ミルククッキー?!新作ね」

「はい。今焼き上がったので少し熱いですが、お気をつけて召し上がって下さいね。すぐお持ちしますので」


うきうきした表情で席に着かれるお嬢様

お皿に焼き上がったばかりのクッキーを少量盛り付け、リンゴジュースを2つ用意しておぼんにのせて運ぶ


「お待たせ致しました」

「わー!凄くいい匂いだわ」

「お嬢様、落ち着いてください」


ミャニャーさんが嗜めるがお嬢様はクッキーに手を伸ばし、一口パクリと召し上がる

その瞬間パァァァァと表情が綻ぶ

それを見るミャニャーさんも僕もつられて笑顔になる

本当に美味しそうに食べられるお方だ。


「ミャニャーさんもどうぞ」

「ありがとうございます。」


ミャニャーさんも1つ口に運ぶ

小さく目を見開く


「これは大変美味しいです。それに甘さ控えめで食べやすいですね」

「えぇ。砂糖を使わずに作りましたから・・

お気に召して頂けてよかった。」


安堵の笑みが溢れる


「ミラベラ!これをいつもみたいに袋に詰めてちょうだい」

「かしこまりました。お嬢様」


お嬢様に気に入って貰えて何よりだ。

そうして今日もお嬢様のためにお菓子を袋詰めする




1日の仕事が終わり報告会

「今日も問題はありませんでした。」

「シャロ、明日は朝のうちに終わらせる書類が3つあるから」

「了解です」


みんなで集まり、情報を交換し明日の予定を確認する

最近では慣れによるゆとりから紗凪の話以外に自分たちの事も情報交換出来るようになってきた


「最近メイド長から紗凪の食いしん坊を直すように言われるのよ」


アイリスが困ったわという風に手を額にあてる


「お嬢様は執務などで糖が足りなくなられる様ですからね…あれを直すのは不可能では?」

「メイド長や、周りがいる時は控えるとか」

「無理よ」


アイリスが即答する

カルマと目を見合わせ何故かを促す


「だって、執務室の机の上におやつの時間の時に包んで貰ったお菓子が置かれているもの」


あぁぁ、あの袋か。


「あの袋を除けたら僕は紗凪に怒られましたよ。おかげで執務が滞ってカルナスさんにご迷惑をおかけしましたし・・・」

「大変だな。お疲れ様」


カルマが苦笑いをする

アイリスは頭を振り打つ手が無いらしい


「うちのお嬢様は食いしん坊ってのは直すより落ち着きを持つって方向で対処しようか」

「そうね。シャロの案の方がまだ未来に希望があるかしら」

「そこまでか?」

「えぇ。シャロは朝しか知りませんが紗凪は中々の食いしん坊ですよ」

「まじか。」


アイリスとカルマがうんうんと頷く

どんだけだよ…と思いながら笑う

そうして今日の報告会は幕を閉じた



自室にて

「はぁー疲れた」

明日は国務大臣と財務大臣との面会がある

僕にとっては初めての面会になる

緊張するなっていう方が無理だ。

国務大臣は国王の左腕と言われるお人で頭が凄くキレる

紗凪が幼いからと見くびられないようにするためには側控えの僕らが1人前の対応する必要がある。

あぁ胃が痛い。

財務大臣は祖父の知り合いにあたる、故に全てが祖父に筒抜けになる


「はぁー、執事として主を守るかぁ。」


目を閉じる

かつて祖父に執事として大切なことを教えられたとき『執事たるものその行動1つが主の品位に直結する』と言われた。

当時は意味が実感出来なかったが、今なら分かる

自分の行動が紗凪の評価に関わる

紗凪の努力は僕らが1番目にしてカルナスさんの次に分かっているつもりだ。

だからこそ紗凪の努力を僕らの行動1つで台無しにする訳にはいかない

全くどうしたものか…


コン


? 何の音だ?


コン


窓・・の方から聞こえる

一体なんの音だ?

不思議に思い、窓に近づく。・・・おかしい。


ここは4階だ。下から小石を投げるやつなんていない

なんせここは王城

城下ではないんだからそんな奴はいる筈がない

なら・・・考えられるのは妖怪の類

紗凪の周りには下級がたまにうろうろしているが、下級妖怪ならば内側つまり扉側から音が聞こえるはず

つまり、下級でないならそれなりの妖


「ーーっ。」


嫌な予感がする


コン


だけどこのまま放置はできない。

紗凪やアイリス、カルマに迷惑はかけられない

ふーと、息を吐き窓側のカーテンを掴み、バッと開ける


月を背に漆黒の翼が広げられている

藍色の瞳が光を帯びたように光る

妖ー烏天狗ーがそこには居た。


「よぉ、人間。いや、見習いさんだったか?」

「お前は…」


窓を開けてまっすぐに瞳を見つめる

目線が交わる


「姫さんに関わるイレギュラー・・・」


忌々しそうにこちらを見つめてくる


「お前は誰だ?僕に何の用だ!ここはお前ら妖が居ていい場所じゃない。」

「黙れ。人間風情が。調子にのるな」


ビリビリと殺気が伝わる

なんで、殺気が・・・意味わかんねぇ


「妖怪風情に言われたくないな」


負けじとにっと笑ってみせる


「気に食わない。姫さんが人にまだ期待しているそこに漬け込む貴様らの考えが気に食わない」


? 漬け込む? 何のことを言ってるんだ


「忠告だ」


ぶわァァァァァァと風が舞い上がる

ーっ。やばい

これは本気のやつだ

直感で感じ、少しだけ足を開く。

もし攻撃がきたら対処出来るように・・・

妖はこちらを見下すように、いや、見下しながら口を開く


「これ以上姫さんに関わるな。

どうせお前達はズケズケ踏み込んで勝手に荒らし、去っていくだけなんだから。

去られた側の気持ちを知ろうともしない奴らがあの方を傷つけるのは我慢ならねぇんだよ」


チッと舌打ちが二人の間に響く


「あの方を傷つけたらお前達には任せない。あの方はこちらでお守りする。いいな?」

「はっ?ちょっ、待っ!」


凄まじい風がふいてあっという間に妖は姿を消した

いきなりのこと過ぎて窓に駆け寄る

身を乗り出して探すが、もう何処にもいない

なんだったんだアレ。

訳わかんねぇと思いつつ窓を閉めてカーテンをひく。

はぁーと盛大にため息をつく

頭をかきながら部屋を見渡し・・・


「・・・・うっわー最悪。」


部屋の中は机の上に置いていた書類や本が散らばっている

どう考えてもさっきの風のせいだろう

イラッとする

だんだんムカついてきた

これだから、妖は・・・


「大っ嫌いなんだー!!!!」


ハァハァと肩で息をしながら全力で叫ぶ。

くっそ!

イライラしながら書類を手に取り、片付けを始める

深夜0時を知らせる鐘が鳴り、僕はもう一度盛大にため息をついた。




「あらあら、勝手に接触しないで貰いたいのだけれど…」


紗凪の部屋の上 屋根に座っていた雛葉がシャーロットと接触した伊鶴を見つめる


「あんたの許可が必要か?」


伊鶴が不機嫌そうに尋ねてくる


「まぁ一応王城側は私のテリトリーでしょう?それに、紗凪に告げ口をされた場合に尋ねられるのは私なのよ。知っているべきでしょう」


クスクスと笑う


「あんたは姫さんが人に傷つけられない様にって考えはねぇのかよ」

「傷つけるのは嫌だわ。でも、縛ることは奴らと同じよ?」

「・・・。」


伊鶴がもの言いたげに黙る


「彼らは力がないからこそあの子を外に出さない」


くるくると手先で髪の毛を弄ぶ


「あの子は外部の人間に触れて外に興味を持っている。でも、彼らは外に出さない。

それはいずれあの子の中で消化出来ない不満となる。その時にあの子の意思がある状態でならここから連れ出せる」

「だから待てと?」

「えぇ。まだ彼らに情報を与えないで。邪魔されたら困るのはお互い様でしょう?」


顔をしかめた伊鶴は小さな舌打ちを残して一陣の風とともに消える


「せっかちは損をするのよ…伊鶴。

あの子を守るには彼らイレギュラーな存在に邪魔をされてはいけないのよ・・。」


そっと薔薇園の一角・紗凪が育てている場所を見つめる


『この子を守って、雛葉。お願いよ』

「分かっているわ。約束は必ず」


胸元にあてた手を強く握りしめる


読んで下さりありがとうございます。

今後も紗凪・シャロ・アイリス・カルマの成長を見守って下さい!!

よろしくお願いします

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