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再始動

短めです。

冒険者ギルドを出た俺は宿に戻ると、あることに気づいた。


「あっ、換金してないや。」


あのゴタゴタのせいで、薬草の提出と魔石の換金を忘れていた。まぁ、一食分ぐらいは持っているので明日ギルドに行けばいいだろう。

ふぅ、俺はベッドに腰掛け一息ついてあの言葉を思い出す。


「私は死なないか・・・。」


大した妄言だ。皆が同じような言葉を口にする。けれど本当に死ななかった奴などいない。


「そういえばアゼルも似たような事を言ってたな。」


あれは駆け出しを卒業し、ボーンタワーに行った時か。駆け出しを卒業したことで俺は浮かれていて、単独で前に出過ぎていた。俺はそこでスケルトン5体に囲まれ、かなりまずい状況だった。そして俺に追い付いたアゼルが盾を前にだし、スケルトンに突進する。しかし、勢い余ってスケルトンと共に倒れたアゼルに他のスケルトンが群がり攻撃する。

アゼルは盾を上手く使い、そこまで重い怪我もなく脱出することができた。だが俺は自らの行動で仲間を危険にさらしたことに、顔を青くし震えていた。

そんな俺の肩にポンと手を置きアゼルはいう。


 「いい勉強になったな。まぁ、そんなに気にするな俺は死なないから!」


まぁ、そのあとレイナから滅茶苦茶怒られたんだけど。


 「チッ、死なないんじゃなかったのかよ・・・」


俺は小さく呟きベッドに横になる。しばらく目を瞑っているといつの間にか眠りについていた。


トントン。部屋の扉を叩く音に続き声がかかる。


 「グレンさん、お客さんが来てるよ?食堂で待たせてるから。」


今の声は、女将の子のカリエだろう。寝ぼけながらに返事を返した俺はモゾモゾと起き上がる。


「・・・もう朝か?ってゆうか寝すぎだろ俺。」


窓から見えた空は寝る前にはオレンジ色だったはず。それが今では爽やかな青空に変わっていた。

俺はダラダラとコートを羽織り準備する。大体誰が来ているかわかっているので気が重い。居留守を使うにしても無理だろう。ピュアな子供に嘘はつかせたくないし。


「ハア。」


俺は大きなため息をつき食堂へと向かった。

食堂につき一人の黒髪の女の元に近づき声を掛ける。たしかミリアだっけ?


「今日は一人か?」

そう、客は予想通り昨日俺を勧誘に来た二人組の一人だった。


 「はい。フィリアは別の冒険者のところへ行かせました。」


まあ、4~5人でって言ったからな。


 「そうか。で?今日は何しに?昨日はっきりと断ったはずだが?」

 「あっ、今日は昨日フィリアが失礼なことを言ったお詫びと、先日助けて頂いたお礼に来ました。それともう一度お願いに来ました。」

 「別に俺に固執する必要はないだろ?」


 この街に冒険者なんていくらでもいる。俺より強い冒険者もいるはずだ。俺はそう思っていたがミリアは首を振る。


 「貴方の強さは異常ですよ?メアリーさんに聞きましたが、貴方はまだ冒険者になってまだ二年も経ってないというじゃないですか?それがAランクですよ?大規模パーティー【月光】のサブリーダー【月姫】でさえ3年かかったのですよ?」

 「仲間が優秀だからさ。」


俺がそう答えるとミリアはまたしても首を振る。


 「確かにそれもあるかもしれませんが、私が目を付けたのはその成長スピードです。メアリーさんに聞きましたよ。貴方、冒険者になって初めて剣を握ったみたいですね?そんな人が二年もかからずにAランクなんてありえません。」


確かにアゼル達も異常だと言っていたな。


「そうか?別段意識したことないから自分ではなんとも言えないが。」


俺の言葉にミリアは苦笑する。そして、深々と頭を下げる。


「お願いします。私達の仲間になって、その力で私達を守って下さい!」


一瞬の静寂が流れる。しかし、その静寂を破ったのはグレンやミリアではなく、グラドだった。


「これで断ったら、テメェは本当に腑抜けになるぜ。」


グラドはドカリと椅子に座りながら続ける。


「そんなテメェを天国に行っちまったあいつらが喜ぶか?それともあいつらがそれを望んでいるとでも?」


俺は二人の顔を思い浮かべ想像する。アゼルはなんだかんだで許してくれるかも知れないが、レイナは滅茶苦茶怒るだろうな。そう、二人はきっと望んでない。俺が腑抜けになることを、俺が歩みを止める事を。


「・・・わかった。」


「本当ですか!」

「ただし条件がある。1週間であと二人仲間を見つけろ。弓が使える奴に盾が使え頑丈な奴だ。それができなければこの話は無しだ。」

「わかりました。では1週間後にまた来ます!」


そう言ってミリアは宿を出ていく。俺はそのあとを追うように宿を出ようとする。


「そういえばグラド。あんた意外とメルヘンチックなんだな?天国を信じてるなんて。」


真っ赤になったグラドの顔を見届けた俺は冒険者ギルドに向かった。


いつものように小気味良く、冒険者ギルドの扉のベルがなる。メアリーは仕事に集中していてこちらに気づいてない。俺は依頼書を選び持っていく。


「メアリー。この依頼を頼むよ。あと、昨日の薬草だ。」


俺は薬草を100枚カウンターに置く。そこでようやくメアリーが顔を上げる。


「グレンさん。・・・髪、切られたんですね。」


俺は冒険者ギルドに向かう途中路上の床屋で伸ばしたままだった髪を切った。金がなかったので代わりにゴブリンの魔石を置いてきた。


「変かな?」

「いえ、よく似合ってますよ!」

「あと、これを受けるよ。」

「これは!スケルトンナイト三体の素材納品ですね!」

「ああ、薬草採取はしばらくお預けだ。手続きよろしく。」


俺の言葉に本当にうれしそうに破顔したメアリーは頷く。


(メアリーには心配かけたな。今度食事でも誘うか。)


手続きが終わり俺はボーンタワーに向かう。さあ、鈍った体をいじめに行きますかね。

お読みくださり有難うございます!

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