王の執務室にて
「はぁ……」
陛下の執務室の扉を目の前にして、これから面倒な事が起こるであろうと思い、ついため息を漏らした。
そんな俺を見てアルドはニヤニヤと面白がっていた。
「さあ、王子。私は、ここで待っておりますので、いってらしゃいませ」
「ああ」
このままこうして突っ立ている訳にもいかないので力無くノックをして俺が来たことを知らせた。すると、扉が開きこの国の宰相であるナードリックが出迎えてくれた。
王であるフェンダルは、なにやら書類に集中しているようでセンリが来た事に気づいてないようだ。
「陛下、センリ王子がお見えになりましたよ」
ナードリックに声を掛けられ、書類から顔を上げてセンリを確認するとニヤッと笑った。
その瞬間、悪寒が走り今すぐこの場を離れたい衝動にかられた。
「おぉ!息子よ、待っておったぞ!ヌフフフフ」
気持ち悪い。変な笑い方をするな。
「何用で」
「お前の為に良い事を思いつ……」
「お断りします」
話の途中だったが素早く拒否の言葉を述べた。
「まだ、話の途中だ!最後まで聞かんか!全く!冷たいやつだ。そんなんだと、一生独り身まっしぐらだぞ」
ヤレヤレ……と、わざとらしくため息をついている。
全くもって、
「うざい。余計なお世話だ」
「心の声が出とるぞ。まあ、よい。そこでだ!パーティーを開くぞ!お見合いパーティーだ!国中の年頃の女を集めてやるからその中から好きな奴を選んで婚姻を結べ」
「は?」
「だから、お膳立てしてやるから結婚しろと言っとるのだ」
「ありがた迷惑です。お断りします」
「なぜだ?いい名案ではないか!わしは、はよう孫の顔が見たい!遊んだり沢山甘やかしたりして、じぃじ大好き♡と言われたいのだ!」
「……」
「そうだな……。パーティーは、1ヶ月後に開く。分かったな?決定事項だぞ」
ゴーン、ゴーン、ゴーン……
鐘の音が鳴り響いた。
「お、昼がきたな。話はここまでだ。腹が減った、今日の昼飯はなんだろうなー」
王は、立ち上がり執務室から颯爽と出て行った。
「大丈夫ですか?センリ王子」
ナードリックに優しく声を掛けられ頭が少しフリーズしていた俺は大きく息を吸って盛大にため息をついた。
そして、ナードリックの方を見て弱々しく言葉を発した。
「大丈夫そうに見えるか?」
「お互い、気苦労が絶えませんね」
ナードリックは、苦笑しながら言った。
国の宰相である事から仕事面では問題は無いが性格が変である王と必然的に関わる頻度もほぼ毎日で大変なのだろう。
すごく。とても。本当に。
ご苦労様です。
「頑張って下さいね」
最後に一言ナードリックから声を掛けられた後、父の執務室を後にした。