猫の姿で
「にゃー」
と、何かが鳴いた。
「ん、んー……」
ベットで寝ている男は、少しだけ眉をひそめて唸った。
「にゃー」
もう一度、何かが鳴いた。
「ん、何の声だ……猫?何故、俺の部屋に?」
男は、猫の鳴き声で目を覚ました。
そして、何故自分の部屋に猫がいるのか考えつつ身体を起こして猫を抱き上げ部屋の窓と扉を見た。
「お前は、何処から来た?窓と扉は閉まっている……」
男は、猫の顔を見ながら問う。
「にゃー」
猫は、大人しく男に抱かれながら男の問いに一言にゃーとだけ鳴いた。
「なんだかお前はスイに似ているな。雪のように真っ白な毛色に海色の瞳が同じでとても綺麗だ」
男は、猫の頭を撫でた。
猫と男の正体は、スイとセンリであった。
魔女の魔法で、センリの居るところへ送り届けられたのだ。
そして、魔女は最後にスイにあることを伝えて海の世界へ帰って行った。
(猫の姿だけど、センリに無事会えた。それは嬉しいのだがセンリに会いに来たよと伝えたいのに猫の鳴き声に変換されて伝えられないとは……)
そう、誰かに話しかけようとしても猫語に変換されてにゃーとしか話すことが出来ない。
では、何故、魔女が猫の姿のスイと話せていたのかというと魔女が魔女だからであった。
「お前は、これからどうする?」
センリは、猫に聞いてみた。
すると、猫は頭をグリグリとセンリに押し付けてきた。
「ここにいたいのか?」
「にゃあ!(もちろん!)」
こうして、魔女の薬を待ちながらセンリの元で一緒に暮らしていけることになったスイなのであった。