もどかしい
毎夜、毎夜とセンリは海岸に行っていたが私が現れない事に自惚れかも知れないが残念なそうな寂しそうな顔をしていた。
その姿を見て不謹慎だが私の事を気にかけてくれていたのだと感じて正直、嬉しく思った。
だが、すぐに申し訳ない気持ちが膨らんだ。
こんな事になるとは思ってもみなかったのだ。
手違いなく人間になれたならば、いつものように会って人魚から人間になった事や好きという思いを伝えられたかも知れないけれど、人間ではなく猫になるとは。
話そうとすると猫語になるし、文字も書けない。
私は、センリに会えているがセンリは私がスイだとは知らないし気付いていない。
だから、突然いなくなって寂しい気持ちにさせいると思うと心が痛んだ。
「今日も、来ない……か」
「ニャオ」
(ごめん)
今日も、センリは、寂しそうな顔をしていた。
「俺は、スイと過ごす時間が楽しくて好きだったんだが、スイは違ったのだろうか。もう、ここには来ないのだろうか……」
「ニャア!ニャーニャー!ニャア!ニャーーー!!!」
(違う!私は、スイは、ここにいる!私も、センリと過ごす時間が大好きだ!!!)
センリの膝の上にいた私は、センリの胸元に手足を置いて必死に訴えた。
猫語になる事が、とてもはがゆい。
「急にどうした、スイカ。もしかして、慰めてくれているのか?優しいな」
センリは、私の頭や背中を優しく撫でて笑顔を見せてくれた。
だが、その笑顔は、少しだけ苦しそうに見えた。
「帰るか」
「……ミャー……」
センリは、スイを抱き上げ、歩き出した。
「3日後には、パーティーか。はぁー」
「!」
そうだった!
3日後には、国中の娘を集めたパーティーが王宮で開かれるのだった。
センリの結婚相手が決まってしまう!
お見合いパーティーまでには、どうしても人間になりたい。
センリがパーティーで結婚相手を見つけてしまう前に好きだと伝えたいのだ。
泡になるかも知れないが。
ああ、もどかしい。実に、もどかしい!
魔女の友人はきっと私の為に薬を一生懸命開発してくれているのだろう。
けれども、一刻も早く魔法薬を開発して持って来て欲しい。頼む!と願わずにはいられなかった。
そして、サリノ!早く魔法薬をー!と勝手ながら魔女に対して強く念を送るのだった。