ハッピーハロウィン
ハロウィンということで、
ジャックオランタンについての創作になっています。楽しんでいただけると幸いです。
ハロウィンの夜には、死者が戸を叩く。
みなさん、夜の訪問客にはお気を付けて。
《どれだけの時を経ただろうか?安寧の地を求めて未だにこの世界をさまよい続けている。
道は土の凸凹道から、綺麗な道へと舗装され、人々の姿も身軽なものへと変わっている。あの頃時代を欲しいままにした魔女の姿は街から消え、魔法の類も人々の心から消え去っていた。馬車が行き交っていた街には、鉄の箱が煙突から出るような黒い煙を吐き出しながら我が物顔で走っている。
どれほどの距離を歩いただろう?履いていた靴はボロボロになってとうの昔に捨ててしまった。地を踏んだ足の皮は、随分固くなったように思う。爪は剥げボロボロになっていた。皮膚は血管が浮き出るほど薄くなり、骨まで浮き彫りになっている。歯はところどころ抜け落ち、醜い顔になっていた。そのために、顔は常に布で覆い隠した。
今思えば、あれはまともな選択ではなかった。だが、あの頃の自分は地獄へ行くのがたいそう恐ろしかった。何としてでも、安寧の地へ行きたかったのだ。》