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よく当たる占い師

作者: けー

  よく当たる占い師


 第七宇宙ステーション第七ブロック。

 ここにはよく当たると巷で評判の占い師がいる。

 少年は噂を聞きつけてやってきた。

 ステーションブリッジに位置する第七ブロックは、天井がガラス張りになっており、煌めく星々が視界一杯に広がる。ロマンチックな雰囲気は宇宙中の恋人同士に好評で、右も左もその手の観光客で賑わいを見せている。

 少年はかれこれ一時間近くも占い師を捜し歩いているが、一向に見つからない。

 よくある都市伝説的な噂で、占い師は実在しないのか。

 少年が諦めかけたその時、目立たない隅のベンチにいかにも占い師然とした風情の女性を見つけた。

 黒いローブに水晶。これで占い師でなかったらなんだと言うのか。

 少年は喜び勇んで女性に駆け寄った。

「よく当たる占い師がいるって聞いて来たんだけど」

 近くで見ると、女性はまだ幼かった。少年とさほど変わらぬ年に見える。占い師の噂は何十年も前からあるので、この少女がその占い師と同一人物とは思いにくい。もっとも、見た目と実年齢が釣り合わない宇宙人という可能性もなくはない。

「それは私の祖母のことだと思います。祖母が体調を崩して入院したため、今日から私が臨時で働くこととなりました」

 少女は答えた。

 新米占い師か。なんだか頼りないなぁ。

 少年は落胆を隠しきれなかったが、せっかくなので占ってもらうことにした。

「ぼくはこれから遠い星に転校するんだ。親の仕事の都合で。もうこっちには戻って来られないかもしれない。それぐらい遠い星なんだ」

「それはそれは。大変ですね」

「新しい学校でちゃんと友達ができるか不安なんだ。だから、たくさん友達ができるか占ってくれないかな?」

「ええ、もちろんいいですわ」

 少女はぶつぶつと水晶に向かって呟いた。しばらくするとこう答えた。

「あたなの周りにはたくさんの笑顔が見えます。友達はすぐにできるでしょう」

「よかった」

 少年は続けてスペースサッカーのレギュラーになれるかどうか尋ねた。

「なれます。将来的にはプロ選手となって活躍するでしょう。ポジションはアタッカー」

「すごい! ぼくの大好きなポジションだ」

 少年は興奮した。転校を前に不安で押しつぶされそうだった心が一気に晴れ渡っていった。

 気分を良くした少年は、もう一つ気になる質問をした。

「ぼくの、未来のお嫁さんは、どんな人かな?」

 少女はまたもや水晶を覗き込んだ。次に少年の顔をまじまじと見つめた。

「あなたは既にその方と出会っています。運命的な再会を果たすのは今から七年後」

「え、ぼくの知ってる子? どんな子だろう」

「長い髪。白い肌」

「他には? もっと特徴を聞かせて。出会った時に気づけるかどうか心配だな」

「その心配は無用です。あなたはきっと気づき、右手にお金を握りしめて声を掛けるでしょう」

「お金? なんだかよく分からないなぁ。あ、あと性格はどんな感じ?」

「性格……ですか」

 少女は急に歯切れが悪くなった。

「おとなしくて、おっとりとしている。星を眺めるのが好き。なようです」

「料理は上手かな?」

「料理は、今は苦手なようですが……。その時までにはなんとかなるかもしれません」

 なんだか自信なさ気だ。

 少年は、今更ながらにこの少女の占いが本当に当たっているのか疑い始めた。もしかして最初から自分に調子を合わせて喜ばせていただけなのかもしれない。大体、今日から占いを始めたようなド素人に何を期待しているのか。

「もういいや。占い代はいくら?」

「お代は結構です」

「そうはいかないよ。当たってるかどうかはともかく、占ってもらったんだからお金は払うよ」

「そうですか。では、またお会いした時に今日の分を頂くというのはどうでしょう?」

 少年は困った。

「でも、さっきも言ったけど、ぼくはここからすごく離れた星に行ってしまうんだ。君と会うことはもう二度とないかもしれないよ」

 少女は黙って、ほんの少しだけ微笑んだ。少年はその笑顔にどきりとして胸が高鳴った。

 ヂリリリリリリリ

 少年が乗る宇宙船の発射時間が迫った。

「あ! もう行かなくちゃ」

 少年は慌ててゲートへ急いだ。

 その背中に、少女が聞こえるか聞こえないかという声で囁いた。

「七年後、ベテルギウス星でお会いしましょう」

 あれ? ぼくは行き先を告げたっけ?

 少年が振り返ると、そこにはもう少女の姿はなかった。


久々の投稿です。短いお話を書くのはやはり面白いですね。

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