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おとぎ救出物語  作者: 六花つづる
第一章  黎堂依頼古書店
7/12

第二話 お隣大妖怪さま、ここに見参!(3)

「あー・・・とりあえずだな、自己紹介をしろ」


現在、山梨のとある農村のボロ古書店「黎堂」のコタツに、五人の少年たちが向かい合って座っていた。


彼らは今、学校にも通わずに静まった古書店のコタツの中で正座をしながら互いの顔を見合わせている。

・・・なんとも言えない状態だ。

ほかの人が見たなら笑うべきか驚くべきかと反応に困る風景である。

そんな空気に耐えかねたのか、一人の青年が突如にそう言い出した。

が、彼は明らかに面倒臭がっている。「俺は関わりたくない」という彼の気持ちが、表情にありありと反映されている。

そうなったのも、彼の声を唯一聞ける「人間」が、緊張と混乱のあまりに固まってしまったためだ。

青年はその人間の代わりに、彼の真正面に座っている三人の・・・人型をとった妖怪にそう聞いた。

全く、こいつは固まり易くて世話が焼ける。が、見てて飽きないな、と呟きながら。

その言葉に、承安に続いた三人の妖怪奇人客は思わず苦笑を漏らしたのだった。


「・・・じゃあ、オレからな!」

声を上げて、一番先に名乗りだしたのは例の昭和不良少年。

「ああ、確かお前は・・・九尾だったか」

「ああ!」

青年にニッっと笑って、彼は言葉を続ける。

「オレの名は神楽!誇り高き白面金毛九尾の一族の末っ子だ!三つ編み野郎から命をうけて助手をしにきたぜ!よろしくな!」

「よ、よろしく・・・・」

固まった少年の前にずいっと差し伸べられた手。それに人間の少年は我に帰り、ぎくしゃくしながらもその手をとった。

「なるほど、昭和だな」

青年がその光景を見て一人合点をしふむふむとうなずく。

それを互いに手をとった妖と人間は怪訝そうな顔をしてみていた。

「・・・なんだ?」

昭和の少年漫画の主人公だ、こいつは。

青年はそう考えていた。

無駄に元気かつ馬鹿で、ボタンがあったら問答無用に押す、という。

「だが残念だな。平成のウリは冴えない主人公像だ。現にこの作品がそうなのだからな」

「・・・僕のことを貶しているように聞こえるのは気のせい?」

「気のせいだ」

「・・・・」

すらりと言いのけた青年―心得に、少年、杏璃は不服そうに彼を睨んだ。

それを昭和青年が混乱したように見る。

「なあ、話についていけねえんけど・・・」

「ああ、すまないすまない。別にたいしたことではない」

謝っておきながら、態度と口調はでかい。

二日前までは「失礼だよ」と彼に忠告を与えるであろう少年は、言っても聞かないと悟ったのか、今はため息を漏らしただけであった。

「全く、なにを威張っているのやら」

と、昭和少年の後ろでおとなしく座っていた二人の妖怪客のうちの一人が、ことの成り行きを見てからくつくつと笑い出した。

ちゃんと見ないと女の子に見えてしまいそうな、整った顔立ちはまさに美少年、という感じの青年だ。

彼は地毛である銀色が混ざった白い長髪をひとつに括り上げ、西洋風のお坊ちゃまのような衣を着て、落ち着いた雰囲気を纏っていた。


・・・が、人は見かけに惑わされやすい生き物である。


この不良青年に先ほど後ろからハリセンを食らわせたのは、何を隠そう、この美少年なのだから。


あのあと、この美少年はハリセンを自分のポンチョの中に仕舞った。

衣服の中にどうやって仕舞うのかと少々興味が沸いた杏璃であったが、あのときはその好奇心よりも驚きのほうが上回ったため聞けなかった。

一応彼も妖怪だから、なにか術でも使って服の中に入れたのだろう。

どこかで見たアニメのような話だ。


「んだよ、能。なんか文句でもあんのか?」

美少年の言葉に少し苛立ちが募った昭和青年。彼は美少年を振り返ってその自慢の切れ目で睨みつけたる。

それに何故か杏璃がビクリと反応するが、美少年は睨まれたにも関わらずニコニコした顔で彼に挑発的な態度をとった。

「九尾一族の末っ子とか何とか言ってるけど、術もろくに使えない末っ子が威張るのは変じゃない?・・・それに九尾だって簡単にいえばただの狐じゃん。ぼくは君がそんな偉そうにしている理由がわからないなあ」

「なっ・・・・!」

美少年の言葉に昭和青年の顔が更にゆがんだ。

この二人は、同じ妖怪同士でありながらも仲が悪いようだ。

先ほども同じコタツの中で座っていたが、目があったらにらみ合ったり(主に昭和青年だが)、とにかくいい関係ではなさそうだった。

そして、青年は今にも彼を殴りそうである。

それをみて杏璃が不安そうに心得の着物の袖を引っ張ったが、この男、こんなときにまで「我関せず」の態度を突き通していた。

小さくあくびをして、すぐ目の前で修羅場になりつつある所など見向きもしない。

杏璃は少しむっとしたが、とにかくこの二人を止めようと二人のほうへ顔を向かせた、が。

「弱虫が一々偉そうに言うんじゃねえ!余計なお世話だ!」

「ふん、弱虫なんて昔のことでしょ。そんな子供のころの話しか持ち出せないなんて、九尾の末っ子も大したことないみたいだね」

「てんめえ・・・」


もうすでに喧嘩は始まっていたのだった。

杏璃は心底困った顔をし、どうにか彼らを落ち着かせようと考えたが、口から出てくるのは「あの、」とか「えっと、」ばかりである。

しどろもどろに言葉をつむぐ杏璃などには目もくれず、妖怪二人は喧嘩を続けた。

勿論、心得は杏璃のことを助けたりはしない。むしろ「おー」と高みの見物を決め込んでいる。

腹の立つ古書青年だ。


どうしようかと慌てふためいていると、突然後ろから声がかかって来た。

「・・・おい」

冷静で、だが冷徹な声。それにしばらく口論を止めた妖怪二人は、黙って声の主へと顔を向けた。

杏璃もその視線をたどる。


「いい加減にしろ。仮にもおれたちは他人の屋敷にいる。人の屋敷で好き勝手に暴れるな。・・・迷惑だ」

杏璃はそのとき、しまった、と思った。

先ほどの美少年はあからさまに挑発をしかけてきたのだが、この――三人目の妖怪客は忠告をしただけだ。

しかし、言い方があまりにもストレートすぎる。

もしかしたらまた怒り出すかも、と警戒した杏璃だったが、そうはならなかった。

昭和青年こと、神楽は、申し訳なさそうに眉を下げて頭をがしがしと掻いた。

「聡駕・・・・・・すまねえ。でもよ、こいつが、」

「言い訳は必要ない」

「・・・・・おう」

三人目の妖怪客になると、神楽はとたんに弱気になった。彼には言い返せないようだ。なんだか不思議な構図だ。

この態度の違いはいったい何なのだろう。

思わず笑いそうになるのを必死に堪えた杏璃であった。

すると、三人目はそんな杏璃の気持ちを知ってかしらずか話しかけてきた。

「迷惑をかけてすまなかった。・・・・話を元に戻す」



そうして、自己紹介は再び再開されたのだった。



なぜまだ終わらない・・・!


二話が無駄に長いですね、すみません。

たぶん(4)で二話を終了させ、第三話でなぞの依頼人、承安さんの依頼について触れます。


半ば強制的にまだ出していなかった主な登場人物をここで出したのですが、なんか違和感が・・・。



ちなみに私は個人的に神楽と美少年くんの喧嘩を止めた「三人目」の男の子が好きです。←どうでもいい


三人目がどういう人物なのか、それとなぜ妖怪を名乗る三人が古書店に訪れたのか。

皆さん、たぶん察しのいい人はわかってると思うのですが、どうぞ次回の(4)も良かったら読んでみてくださいね。


そしてもしわかりにくいところがあったらどうぞご意見をください。


ちなみに私は神楽があまり好きではありません。←だからどうでもいいって。

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