一章 その5
ご飯を食べ終えから、みんなとお茶をしながら今度は僕が色々と質問していた。
僕が今いる場所はラナンキュラス国の首都モリルーカ。その首都を出てすぐのリャーノ平原でミーシャちゃん達がオリノコ川で釣りをしていた所に僕のグリフォンがミーシャちゃん達へ向かってやってきたらしい。
地図をみせてもらって驚いた。ゲーム内での一つの大きなディモルフォセカ大陸が真っ二つ割れていたのだ。
「なにこれ……。」
「僕のしってる。ディモルフォセカ大陸じゃない……。」
この世界ではディモル大陸、フォセカ大陸の2つになっており、両方を合わせて呼ぶ時はディモルフォセカ大陸と言うらしい。
さらに僕の知る各種族の国は無く、5つの国になるのだとか。
ただあまりにも衝撃が強すぎたので、説明をされてもしっかり聞けていなかった。
ディモル大陸の南端、このラナンキュラス連邦国はネコ族、ウサギ族、キツネ族が主な国だそうで、その3種族の族長が国を主導しているみたい。
リャーノ平原は首都から近くにオリノコ川、ジャノン川があり、とても豊かな土地で作物や獲物などが沢山ある土地らしい。また、各種族の小さな集落や街などが点々とあるのだとか。
もうひとつの国はユーフォルビア連邦国、竜翼族、鳥翼族、蝙蝠翼族の国。
ディモル大陸の北東の端にあるバージニア高地の針葉森林帯を抜け高山に囲まれた麓にある。
針葉樹林帯は強いモンスターや魔獣が多く危険な場所だそうだ。
山そのものが都市になっており、有翼人以外が生活するには厳しく行くのも危険らしい。
国政はラナンキュラスと似ており、鳥翼族の族長が代表となっているそうだ。
フォセカ大陸側は、北側にアコニタム王国エルフ族とフェアリー族の国。
エルフが主な国でエルフ族の族長が国王となっているそうだ。
ラナンキュラスと似た穏やかな気候で大森林の中に都市はあるみたい。
南側はグラジオラス共和国ヒューマン族とドワーフ族の国。
都市の周辺は岩山だらけで鉱山が非常に多い土地らしく、金属製品、武器や防具、装飾品などの品質は素晴らしいものがあるらしい。
こちらの国は共和制となっており、今はヒューマンの族長が大統領になっている。
ドワーフはあまり国政には興味がないらしく、国政に参加してるのは殆どいないのだとか。
最後にディモル大陸とフォセカ大陸をを繋ぐ中央にアルメリア大公国がある。
この国は全ての種族がおり中立国を謳っている国、他4カ国との交易に力を入れ、太古の失われた魔法技術、魔法具などの研究開発をしているのだとか。その開発された魔法具は幅広く万人に使われる生活用品から、冒険者や軍人などの武器、防具など様々な魔法具を新規開発も行ってアルメリアから売られている。一番古くからあり、発展している国なんだとか。
僕の島はアルメリア内海、ディモル大陸とフォセカ大陸の中央に存在している。
僕の知っているファンタジーハートで存在していた国をあげて聞いて見たけど、存在してないようだった。僕の国は存在しているというのに。
「ミコト?」
「僕の知ってるディモルフォセカ大陸は、2つに割れてないの……。僕の島はあるのに。」
「ミコトちゃんは……。ミコトちゃんの島が国だって事は、はじめて聞いたことだわ。
私が知っている限り、かなり昔から……あそこはアンデットが数多くいる島だったわ。」
かなり昔からアンデットが居た島……、なぜ僕の島がアンデットばかりの土地になってしまったのか、なぜ大陸は2つに割れ、知っている国は1つも存在しないのか。
「元々、1つの大陸だった事。2つに割れてしまった理由とかは知ってますか?」
「……2千年以上前と言われる神話よ。太古に4大天使様と率いる天使、悪魔王と悪魔達がディモルフォセカで戦争を行ったとか。その影響で大地が割れ、2つの大陸になったと言われているわ。この大陸に住む人は殆どがその被害を受け、多くの国が無くなり大半の者が死に絶えたという話よ。
本当に1つの島だったなんて、正直なところ信じてなかったわ。」
「お、お母さんがそんなこと言っちゃうのは……。」
「え!? 4大天使様達と悪魔達で争ったのっ!?」
4大天使様と悪魔達が争ったって……
「なんで……?」
「2千年以上前からミコトちゃんは来たって事かにゃ? その様子だと4大天使様達と悪魔は戦争するほど仲が悪くなかったのかにゃ?」
僕はファンタジーハートでの話をみんなにした。
天使達の天界、この大陸を人界、悪魔達の魔界、3つの世界で構成されていること。
人界はある時を境に異変が生じた。この人界には存在しないモンスターが出始め、謎の建築物や山の洞窟が突然現れダンジョンになったり。異界の者が次々と現れ破壊したり、支配しようとして、ディモルフォセカ大陸の街や国が大混乱となった。
原因は解らず、人界は異界の者を恐れ次は自分の街なのかと不安の募る日々が続いた。しまいには安全な土地を確保するため、人々で争いを起こすほどになってしまった。
月日が経ってついに天界と魔界が動きだし、自分達の力を人界の者に教え与え、解決する為の術を与えた。
天界も魔界も人界の者達の正や負の感情、そして信仰が自分達の糧と力になるため、異界の者達に人界の命を狩られては困ってしまうからだ。
人界の者達は力を身につけるため研鑽し、異界のモンスターと戦い、異界から送られたダンジョンを攻略し、異界の猛者を時には天界、魔界の者と協力し倒した。そしてついに異界の門を見つけ封印することができた。
これが、ファンタジーハートのあらすじと、ストーリークエストの概要になる。
「けど、その封印は完全ではないの。力のあまりない異界の者、亜人は自由に行き来ができてしまう状態になってしまっていたんだ。」
「え!? 亜人って、コボルトとかオークの事?」
「うん。 亜人もいるの?」
「ええ、亜人にはどの国も悩みの種よ……」
コボルト、ワーウルフ、サイクロプス、オークがいるらしいが、これは僕の知る所と変わらないみたい。
亜人は各国への行商を襲ったり、街を略奪したりして襲っているようで、都市や街の外では見かけると、襲撃されて戦闘になるのだとか。
また、山に集落や、人が行き来するのが困難な場所に各亜人の街があるらしい。
「ただ、コボルトは襲うだけでなく、人間相手に商売してるって話よ。アルメリアの商業区にお店があるんだとか。」
「行ってみたいけど、ちょっと怖いにゃ~。」
僕の知っているコボルトと変わらないようだ。ゲーム内でもコボルトは商人NPCが居て協力的なコボルトが居たのを覚えている。僕の国にもコボルトは誘致したしね。
「サイクロプスは? 鍛冶商人とかいないの? 」
「そんなの聞いたことないわね。グラジオラスでは鉱山を襲われたり、占拠されたりしてるから大変らしいわ。」
サイクロプスの鍛冶職人は、その大きな体から作られる武器は強力な物が多く、また独自の技術を持っており、人間族には無いものを持っていた。
「あっ!」
「ちょっと僕のパートナーを呼んでもいいかな?」
「パートナー?それって召喚獣の事?」
「ううん、もちろん召喚獣も僕にとっては大事なパートナーだけど違うよ。守護武器だよ。」
守護武器は、その武器に意思、または人の命を宿した武器であり、所持者が武器の心得が無くても支援し使うことができたり、または実体化し、サポートしてくれたりする。
サイクロプスは、その実体化を安定させる為の技術を持っていた種族であり、また様々な人間には扱うことの出来ない鉱石を武器や防具にしたり、既存の武器を強力な物にしたりできる。
「確かに、長年使われた武器は意思を宿すみたいなことは聞いたことあるけど……。だから自分の杖とかは大事にしないと罰があたるとか言われたわね。」
「だにゃ。けどサイクロプスすげーにゃ。」
「ミコトちゃん。ということは、その実体化する武器を持ってるの?」
「うん。ちょっと待っててね。本当にいまできるかは解らないんだけど……。」
実体化が本当にできるかは解らないが試してみる価値は十分にある。
武器が大きいため、ダイニングからリビングに移動して場所を借りることになった。
「大きい武器ってなんだにゃ? 大剣だったりするのかにゃ?」
「ミコトに使えるわけないでしょ。ヒーラーでしょミコトは。振り回すなんて想像できないわ。」
「ふふっ、出してからのお楽しみだよ~」
アイテムボックスから、三日月の大鎌・神金を取り出す。
「なんだか、ミコトにえらく似つかわしくない武器がでてきたにゃ……。」
「ちょっと……、大剣以上に振り回すの想像しにくいんだけど。どういうことよ。」
「これが……。実体化するの? 何がでてくるの? 出して大丈夫なの? 」
「ミコトちゃん。大丈夫なのよね? 」
みんなちょっと怯えてるけど、そんなに心配しなくて良いのに。
確かに武器の見た目はちょっと禍々しいけどね。
長柄は約2mと非常に長く、材質は神金の芯に黒霊銀を被せており真っ黒で中央より少し前に刃を振り回すための補助してハンドルが縦に作られている。
刃の部分は名前の通り三日月状になっており、長柄との接合部分は刃は太く大きくになっており切っ先に向かい鋭くなっている。刃の長さは僕より頭一つ低い120cmぐらいある。刃は全て神金と黒鉄鋼との合金製になっていて、全体的に元の材質とあまり変わらず黒いが、鍛造で作られたかのように地肌には板目模様が浮いており禍々しさを一層際立たせていて、刃先に向かい明るくなり切っ先は神金のままかのように黄色く光輝いておりまさに夜闇に浮かぶ三日月のような代物となっている。
「ミコト、よくそんな武器持てるにゃ? 実はかなり力持ちにゃ?」
「ううん、これ神金と黒霊銀で出来てるから見た目よりも軽いんだよ。僕だけじゃ振り回せないけどね。」
「神金って存在してたのね……。」
サラさんが、また目を瞑り難しい顔をしている。
これは武器の材質が実体化の元となっているのが黒霊銀であるため、強化の際はすべて神金製にはならないとのサイクロプスの言だ。というか元の材質とすべて変わってたら、それは別の武器だよね。
「じゃあ、呼ぶね。」
僕は三日月の大鎌・神金を両手で縦に持ち前に掲げて、目を瞑り祈る。
「ルビーお願い。出てきて」
お願いルビー。ゲームの時と同じように僕を助けてほしい。
ソロで冒険してた時は常に居て、サポートしてくれたルビー。
街とかを散策するときとかも連れ歩いたりしてたっけ。
ちょっと特攻が過ぎる所があって困った所があったけどね、回復のしすぎで僕がヘイトを取っちゃっても、その持ち前の攻撃力とサポートですぐ助けてくれてた。
今のこの世界では僕の国は滅び、知る国は亡く、恐らくゲームの時代から優に二千年以上の月日が経っている。まず知っているNPCなど生きてはいまい。いるとすれば、四大天使様か大悪魔達だけ。そうそう会える者達じゃない。
また僕を助けて欲しい。
「お願いルビー。また僕を助けて!」




