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一章 その4

「うーん……?」


 サラさんと手を繋ぎ寝てしまった僕は翌日に目を覚ました。

 僕は起き上がり考え込んでいた。僕はターヤさん達に助けられて、どのくらい時間が経過しているんだろう? 

 僕の体は未だ快調ではなく、昨日よりは大分マシだが体は重く万全ではないみたい。

 ステータスを見る限り、未だ衰弱が治ってない事に不思議に思っていた。


「あら、ミコトちゃん。起きてたのね。」


 サラさんが部屋に入ってきた。とても笑顔が綺麗なウサギ族の女性だよね。看護婦さん、いやお医者さんなのか、この都市一番の治療師兼薬師さんってターヤさんが言ってた気がするし、とても素敵な人だと思う。


「……? ミコトちゃん、どうしたの? 」


 あ、サラさんのじーっと見ながら考え事しちゃってた。

 僕は慌ててサラさんに挨拶をする。


「あ、ごめんなさいサラさん。おはようございます。」


「ふふ、ミコトちゃん。お腹減ってないかしら? ここに来てからずっと眠ってたし、何か食事を取らないと。3日は寝ていたのよ? 栄養剤やお薬は飲んで貰っていたけどね。」

「え、僕そんなに寝ていたの? 」


 3日……3日も寝て、僕の体調はまだ回復しないんだ……。


「ええ、よほど衰弱していたのね。あと、2,3日安静にしていれば、治ると思うわ。」


 あと2,3日で回復する……。そんなに衰弱から回復するのに時間がかかるんだ……。

よほど衰弱していたということは強衰弱に陥って、衰弱に戻って回復している途中ということなのかな。

 ぐ~……。僕のお腹の音が鳴り、咄嗟にお腹を抑える。は、恥ずかしい。


「じゃあ食事を持ってくるから、ちょっと待っててね。」


 サラさんは部屋を出て食事を持ってきてくれるみたい。

 僕が以前に食事を取ったのは何時ごろだったかな。

 現実の時に食事を取ったのは……覚えてないや。病院の食事もあまり美味しいとは思えなかったし。

 ふと、窓の方を見てみる。そとは明るく御昼過ぎなのかな? そとの様子を見てみたくなりベットから降りようとすると裸足だった事に気付いた。

 あ……。フロートシューズどこだろう? あれが無いと満足に動き回ることできないのに……。ベットの周りを見渡すと、チェストの上にはリングとネックレスは見つけた。寝るときに外してくれたんだと思う。けど、肝心のフロートシューズは見当たらない。

 あれでいつも街中やダンジョンなどは浮遊して動き回っていたので、僕にとっては必需装備なんだよね。そういえば、服が汚れてしまっていたとか言われてたっけ。一緒に洗ってくれているのかな。


 すこしなら歩くことはできるはずだし、とりあえず立ってみようと思いベットに腰掛ける。立ち上がろうとすると、やはりまだ衰弱中のせいなのか足腰にほとんど力が入らない。

なんとか立てたけど、かなりフラフラでまともに歩けそうにないや。まぁ元々ちゃんと歩けないんだけどね。

 ベットと壁を伝って窓に寄って行く。そうとう時間がかかったけどこれも回復する為の運動だと思えばそんなに苦ではない……


「はぁ……はぁ……」


 ちょっと大変だった。いや、かなりしんどかったよ。殆ど腕で移動してたようなものだったし。うん、やっぱりフロートシューズ返してもらうよう、あとでお願いしよう。


「わぁ、綺麗な街」


 どうやらこの部屋は2階みたいで少し街が見渡せた。ここは他と比べ高い所に位置しているみたい。緑と水、自然に囲まれた街と言っていいのかな。のどかな田舎ってわけじゃない。少し遠くには木材、煉瓦で造られた建物がちょこちょこと見える。自然をできるだけ多く残し、平地の広い所に街を発展させているみたいだ。

 遠くに港も見えるかなり大きな街みたい。あ、そういえばターヤさんが都市って言ってたっけ。

 ゲームの中ではこんな大きくて綺麗な街は見たことない。ここはどこなんだろう?

これからどうしていいか解らないし、何をしたら良いのかな。


 まずは体調が回復したら、サラさん達にお礼をしなくちゃいけない。

 ゲームの中ではヒーラーで、錬金術もマスターしてお金稼ぎしてた身だ。サラさんのお手伝いもできるかもしれない。

 いや、その前にいくらゲームの知識があるからって通用するかどうか解らないし……

 僕に何ができるんだろう……。

 僕の国を建て直す? 裕や美奈、他のクランメンバーみんなの力あわせて造って住んでた国。あのままにしてはおけないけど……。あの大量のアンデットを僕一人で浄化することだって、多少はできるかもしれない。けどジリ貧になってしまうに違いない。僕一人だけじゃ無理だよ。すべて浄化できたとして、あの瓦礫からこの世界でどうやって再建するの? それこそ僕一人じゃ無理だよ。


 なぜだろう? 一人でいるとこんなに不安になってしまうのは。僕ってそんなに弱い人間だったっけ?


「ぐす……。」


 涙がでてきた。なんで泣いているんだろう? 僕ってこんなに泣き虫だったかな。

 袖で涙を拭いて、景色のよい外を見て落ち着こうとしたら、こちらに歩いてくる3人を見つけた。ターヤさんとミーシャさん、それにリンさんだ。


 3人とも笑顔でこっちに向かってる。とっても仲が良いんだろうな。ちょっと羨ましい。

どうやらミーシャさんが窓から見てる僕に気付いたみたい。僕が手を振るとなんかすっごく驚いてる。

 他の二人もそれに気付いたようで……? なんだろう? 辺りを見回してからこっちに走ってきた。




---------------------------------------------------------------


「ミコトちゃん! 体は大丈夫なの?」


 ドアが勢いよく開き、ターヤさんが大きい声で僕を呼んだ。


「うん。お陰様で大分良くなったよ。」

「でもまだ起きたばかりなんだから、顔色も悪いし……?」


 あ、泣いてた事に気付かれちゃったかな。ちゃんと拭けてなかったかも。恥ずかしい。


「あ、うん。そうだよね、ごめんなさい。ちょっと寝てばっかりだったから、少し体を動かした方がいいかなって思ったの。そろそろもど……あっ!」


 ベットの方に戻ろうとして窓から手を離すと、足に力を入れてなかったせいか体が反対側へ倒れてしまい、バタッと受け身も取れず床に倒れてしまった。


「いたっ」

「ミコトちゃん!?」


 ターヤさんは驚いたようで、僕を抱えおこしてくれた。ほんともう迷惑かけてばっかりな気がして、自分が情けなくなってくる。


「ミコトちゃん、大丈夫!?」

「いたたた。ごめんなさい、足に力が入らなくて。」


 あはは。ついゲームの中のように、いつもはフロートシューズ履いてるし、そのつもりで動いちゃったのかもしれない。我ながら恥ずかしくて情けない。


「だから、まだ本調子じゃないんだからベットで寝てなきゃダメだよ!」

 うぅ、叱られちゃった。すごい心配そうな顔で、僕を抱いて覗きこんでくるターヤさん。 ちょっと顔が近いよっ!?

 ほんとに恥ずかしいんだけどっ


「ううん、多少なら大丈夫なはずなんだよ? そ、それにうまく歩けないのは生まれつきだから。いつものように動いちゃっただけなの。」

「な、なんだって?」

「そう、あっ! あの、僕が履いていたシューズ。あれどこにあるの?あれがないと満足に動けなくて……」


 うん。フロートシューズを返して貰わないと、満足にトイレすらいけないかもしれない。

……トイレ? あ、僕って今は女の子なんだっけ。あわわ、どうしよう……うまくできるかな?


「……あ、後で持ってきてあげるから。とりあえずベットに戻ろうね? 」


 ターヤさんは僕を抱きかかえて、ベットまで運んでくれるみたい。わわ、急に抱きかかえて立ち上がるから首に抱きついちゃった。さっきから恥ずかしい所や情けない所ばっかり見せてる気がして顔が赤く点灯しっぱなしだよ。


「あ、ありがとうターヤさん。」

「どういたしまして、……じゃあ靴もってきてあげるから、待っててね?」


 ターヤさんが取りにいってくれるらしい。ふぃ……ほんと感謝感謝です。


「にゃ~。リンや、なんだか私達お邪魔かにゃ?」

「ちょっと、私にそんなこと聞かないでくれるっ!?」


 あ、ミーシャさんやリンさんも来てくれてたんだっけ。なんだかワタワタしちゃって気付かなかった。二人にも今の恥ずかしい所を見られちゃったんだ。泣きそう


「あ、なんだか情けない所をお見せしちゃって、ごめんなさい。」


 とりあえず謝っとこう。うん、ほんと情けない所をお見せしちゃったよ……。


「ううん……、いいのいいの。」

「……にゃ~。気にしないでいいにゃ。お熱いと……いだあ!」


 リンさんが脛を蹴って、こちらに近づいてベットに腰掛ける。昨日も蹴ってたけど、どうしてなんだろう? 

 枕を背にして座ってる僕にリンさんは尻尾を僕の膝の上に置いた。触っていいのかな?

僕は尻尾を抱いても何も言ってこない。良いってことなのかな?

 ふかふかの抱き心地、とっても綺麗な手触りの良い毛並みに顔をうずめてみる。

 とってもリラックスできて安心できる優しい肌触り、リンさん素敵です。


「ほんとに大丈夫なの? 」


 僕の体調の事だろうか? サラさんがあと2,3日ぐらいで安静にしてれば治るって言ってたし大丈夫だと思う。


「うん、あと2,3日すればサラさんが治るんじゃないかっていってたよ。大丈夫だよ」


「……そう。」


 あれ? リンさん何故か暗い顔してるけどなんでだろう?まだ、僕が本調子じゃないことに心配してくれているのかな。


「ありがとうリンさん。 それとリンさんの尻尾は、とっても安心できて優しい肌触りで素敵だよっ!」

「あなたにそう言われるのはとても光栄だわ。私のことはリンって呼んで?私もミコトって呼んで良いかしら?」

「……にゃ~。私を除け者にしないで欲しいにゃ~。私の事もミーシャって呼んでくれるかにゃ?」

「うん。もちろん!改めてよろしくね、リンちゃん、ミーシャちゃん!」

「呼び捨てで良いのだけれどね……。まいっか。」


 さすがにまだ知りあって間もないのに呼び捨てにはちょっとできないかなぁ。裕と妹の美奈以外にはしたことがないし許して貰おう。


「僕もさん付けなんていらないからねミコトちゃん。靴持ってきたよ。」


 サラさんとターヤさんが来てくれた。ご飯なにかな? なんか楽しみになってきて、すごいお腹減ってきちゃった。


「ありがとう。えっとターヤ君!」


 持ってきてくれたフロートシューズを受け取る。僕の必需品であり、大切な宝物。

 薄い水色の布生地に、靴底の上を囲うように草の紋様が刺繍されている。踵の両脇にはフェアリーの羽のようなものが付けられており、この靴を履いて移動すると羽がパタパタと動くのだ。足首を囲う部分にはフリルが付いており、とても可愛らしい。


「これがないとお家の中とか人ごみの街中を移動したりとか、冒険もできないの。僕の大事な宝物なんだ」

「え? ミコトちゃんって国の……。」

「うん、王様する前は冒険者だったんだよ。それでも冒険もしてたけどね。よいしょっと」


 フロートシューズを履くと、腰掛けたベットから浮きあがる。翼を少し開きたなびかせて姿勢を維持する。そして立ち上がった姿勢からクルリと横に1回転してみせた。


「どう?これで安心して動きまわれるでしょ?とっても便利なの」


 お~かわいいにゃ~。とミーシャちゃんが喜んでくれて、僕もうれしい。


「自分の翼をほとんど動かしてないのに、浮遊して移動できるのね……」

 

 不思議そうに空中に浮かんでる僕を見てリンちゃんは呟く。


「そうなの。ほら、翼でパタパタ飛んでお家の中とか街中の地上付近を移動してたら、他の人に迷惑かけちゃうでしょ? けど、姿勢を維持するのに翼を全く動かさないってわけじゃないんだけどね。」


「じゃあ、有翼人しか使えないものなのかにゃ? 」


 ミーシャちゃんは興味津々そうに聞いてきた。使ってみたいのかな?


「ううん、慣れれば使えるみたいだよ。 」

「ほぅほぅ~、けど有翼人以外は足だけでバランスを取らないといけないんだにゃ? 難しそうにゃ~」


 うーん……、と悩み始めたミーシャちゃん。今度都合がいい時にでも使ってみてもらおうかな?


「さぁさぁ。お話はその辺にして、みんなご飯を食べましょ。ミコトちゃんもダイニングに来れるかしら?それとも、ここで食べる?」


 わっ、ご飯ご飯! 僕もうお腹ペコペコだよ。サラさんのもとにぴゅーっと飛んでいった。


「みんなと一緒に食べたい!大丈夫だよ」

 サラさんと手を繋ぎ、1階のリビングへと向かった。サラさんとターヤさんのお家はずっと寝てて解らなかったけど。結構大きい御屋敷みたいだった。

 僕がここに最初に連れて来られた時は、お家入ってすぐの看護室みたいな所にいたみたい。その隣がサラさんのお部屋なんだそうだ。翌日から特に治療などをする必要はなくなって2階ターヤさんの隣の部屋に僕はいたみたい。


「さぁさぁ、みんな座ってね。ミコトちゃん、起きたばっかりで胃が弱ってると思うからミルク粥よ。みんなもね。」

「サラさんのご飯は久しぶりだにゃ。」

「わぁ~とてもいいにおい。ありがとうサラさん。」


 ミルクの甘い香り、そしてチーズの匂いもする。とろとろのお粥の中にじゃがいも、あとはタマネギも入っているみたい。パセリも散りばめられていて色どりも綺麗なミルク粥だね。みんなでいただきますをして食べ始めた。


「あつっ、ふぅー……おいひー!」


 ミルクとチーズ、タマネギがとってもあってて美味しい。

 じゃがいもがほくほくでお塩も効いてる。お粥はとろとろそれにミルクが甘くておいしい!


「気に入ってもらって何よりだわ。」

「うん!僕の好物になりそう。」


 うん、毎日食べてもいいかも!ほんとに好物になりそうだよ


「……結構待たないと食べれそうにないにゃ。」


 さすがネコ? なのか猫舌らしい。あれ? 猫ってタマネギって食べて平気なのかな?

あれ? 犬だっけ、あれれ!? ウサギも駄目じゃなかったかな!?

……たぶん、この世界だと人族なら大丈夫なんだろう。気にしないことにしよう。

 そういえば、僕ってタマゴとか鶏肉とか食べて平気なのかな? うーん……、食べたくないとも思わないし、それに卵食べれないんじゃ、ケーキとかクッキーも食べれないって事だよね? いやいや!食べたいよ! ……うん、大丈夫みたいだ。


「めんどくさいわね、ネコ族は。代わりに食べてあげてもいいわよ? 」

「リンちゃん、いくらなんでもそれは……。」

「やらんにゃ!」


 3人組は和気あいあいとご飯食べてるみたい。ミーシャちゃん達って、とっても仲がいいんだね。あ、ミーシャちゃんはまだ食べてないか。

和気あいあいとした食事って、すっごい久しぶりな気がする。こんなに人と一緒に食事をするのって楽しいんだね。


「……ぐすっ。ふふ、おいしー!」


 ごまかすようにお粥を食べる。もう僕って泣いてばっかりだ。なんでなんだろう、この体が女の子で僕自身になっちゃった影響だったりするんだろうか。

 そうだ、このご飯も熱くて、甘くて美味しくて現実みたいで……もう本当にゲームじゃないんだ。この世界に僕がこのミコトの体で来ちゃってるって事を改めて自覚する。

 現実の事、この世界の事を考えた時の不安な気持ちがサラさんや、ミーシャちゃん達と一緒に食事をすることによって。すこし心が軽くなったような気がする。


「ぐすっ、えへへ。」

「ミコトちゃん、どうしたの?」

「ううん、なんでもないよ。」


 もうこれ以上、サラさんやミーシャちゃん達に変に心配かけちゃうのは駄目だよね。

 うん、泣くの我慢しなきゃ。こんな気持ちでご飯食べるのは失礼だよね。

 僕は気を改めて食事を再開して、サラさんのミルク粥を美味しく食べ終えた。




---------------------------------------------------------------


「ごちそうさまでした!」

 

 手を合わせ少し頭を下げてからごちそうさまをする。


「サラさん、とっても美味しいご飯でした。」

「ふふ、どういたしまして。あ、ミコトちゃん。ついでに念の為にお薬飲んでおこうね?」

「ええ? お薬?」


 お薬? 僕はお薬を飲まなきゃいけないんだろうか? どこか悪いのかな?


「ちょっと待っててね。」


 サラさんは自室に向かい。薬を取ってくるのかな? なんの薬だろう。


「ふはっ……ふぅー! ふぅー!」

 ミーシャちゃんは懸命に冷ましながら食べている。なんか、ミーシャちゃんって見てると楽しいなぁ。愉快な人なんだね。


「ちょっとミーシャ、いい加減に食べなさいよ。もう十分温くなってるんじゃないの? 」

 

 僕より早く食べ終えていたリンちゃんは呆れた様子でミーシャちゃんを見ていた。


「まぁまぁ、リンちゃん。」


 ターヤ君はいつも二人の仲裁役だったりするのかな? どうなんだろう。

 けど、3人とも本当に優しくて良い人たちだよね。もちろん、サラさんもだけど。サラさんは何て言うんだろう? お母さんみたいだ。


「おまたせミコトちゃん。はいこれ、飲んでくれる?」


 サラさんから渡されたのは、コップに入った濃い緑色の液体だった。

 匂いを嗅いでみる。とても青臭い草の、いや薬だから薬草なのかな?独特の匂いがむわっときたよ。


「うぅ……。の、飲まなきゃダメですか?」


「ええ、もちろんよ。ミコトちゃんが良くなる為のお薬なんだからね。」

 サラさんにそう言われてしまうと、嫌とは言えない。

 僕の為に作ってくれたお薬なんだから。我慢して飲む他にないよね。


「うん……。ゴク……、うぇ!に、苦い!それになんか酸っぱい感じもするう」


 下が縮むような苦さに後から来る酸っぱい感じ。ちょっと経験したことのない味だった。


「はい、お水。これで口を濯ぐといいわ。」


「はい……。……?」


 なんか頭に浮かぶような、なんだろう? あ、これってスキルを覚えた感じ?

 僕はメニューを表示させると、システムログを表示させた。


鎮静薬を作成することができるようになりました。


「鎮静薬?」

「っ!?ミコトちゃん、何のお薬か解るの!?」


 サラさんのすごい大きい声がして、サラさんの方をみるととても驚いた顔をしてる。

え、えと何でそんなに驚いてるんだろう? 


「え、えと……その。」


 サラさんの見たことない顔に、しどろもどろしてしまう。なんか怒られたようでちょっと怖い。それにミーシャちゃん達も、驚いてこっちを見てる。


「その……。」


 何て言えばいいんだろう何か間違っちゃったかなぁ? どうしよう。

 鼻がツンとする。あ、また泣きそう。何なんだろう僕、ほんとに泣き虫になったような。


「あ……驚いちゃって、つい大きい声出してごめんなさいね。ミコトちゃん」


 サラさんがごめんね? と頭を撫でてくれた。ただ驚いただけなんだ、よかった。


「ぐすっ。うん」

「それで……、どうしてお薬を当てられたのかしら? 前にも飲んだことあるのかな? 」


「えと、冒険してるときに錬金術を勉強してて。飲むとどんなお薬とか解るようになったの。ポーションやマジックポーションを買うとお金いっぱいかかっちゃうし、新しい服とか杖を買うにもお金が必要だから、作れるようになりたくて。……ごく。」


 口の中の苦いのを取り除くため、水を飲んだ。サラさんを見ると、また驚いた顔をしている。


「そ、そうなの。」

「動機はともかくすごいにゃ~。ターヤは飲んで何の薬か解るのかにゃ?」

「え? いや、やったことないし解らないと思うよ。」

「ミコト、冒険者をしてたのよね。なんの職業をしてたの?」

「ハイビショップ兼ハイサモナーだよ。」

「はい?ビッショプ? はいサモニャー?」


 ミーシャちゃんがスプーンを持ちながら、何か間違って言ってるような気がするけど、みんなすごい驚いた顔をしている。疑われてるのかな?何か証明する方法ないかな。


「あ、褒章あるけど……出すね?」


 クラスアップした時に貰ったものを見せれば、きっと信用してくれると思う。


「え、褒章があるの?出すってどこから?」


 アイテムボックスからジャラジャラと、褒章のメダルを取り出した。


「ミ、ミコトどこからそれ出てきたの?」


 あれ? みんな使えないのかな? あ、そうか。たぶんファンタジーハート内のプレイヤーだけなのかな。


「アイテムボックスだよ。」

「アイテムボックス?」


 やっぱりみんな使えないみたい。どうやって説明しよう。


「あ、えと魔法みたいなものだよ。」


 とりあえず魔法って事にしとこう。それ以外で説明する方法がないと思う。

 魔法、便利。


「えと、これがクレリックでこれがプリースト。これがサークルメイジで……。」


 とりだした褒章メダルがバラバラなので、整理する。ヒーラーで4枚、サモナーで4枚づつの計8枚。こんなにあったんだね。


「確かにこれは褒章ね。けど、デザインが少し違うかしら……。裏にミコトちゃんの名前が彫刻してあるわ。」

「そういえば、あのグリフォンが消えたのって。ミコトの召喚獣だからなのね……。

 僕はここまでグリフォンで来たんだっけ。あれ? 消えたのって勝手に消えちゃったのかな? 送還してないのに。


「お、お母さんだってウサギ族治療師の鬼才なんて呼ばれて、プリーストから何年も掛ってビショップになったのに、ミコトちゃんがビショップ? しかもその上? 上ってあったの?」


 サラさんってビショップなんだ。この世界ではそれが普通なのかな?

 あ、転生する人がいないからビショップまでなのかな?


「て、天才にゃ? というか、ミコトちゃん……ちょっと聞いていいかにゃ?」


 ファンタジーハート内で敵を倒して、レベルを上げて魔法を覚えての繰り返しだから天才も何もないと思うんだけど。うぅ、ややこしいことになっちゃったかなぁ。

あ、聞きたいことって何だろう?


「あ、うん? なあに?」

「……ミコトちゃんってクレリックとかのお勉強っていくつから始めたの?」

「14かな?」


「冒険者っていくつからにゃ?」

「同じだよ。」

「……ちなみにいま何歳にゃ?」

「え? 17だよ。」


「「「「ええええ!!?」」」」


え!? なんでそこでみんな、すごい驚くの?


「あ、あの。みんな何歳だと思ってたの?」

「10,11歳ぐらいかしら。ま、まさか年上とは……。」


10!? 11って!リンちゃん酷いよ!


「いくつかと思ったのはノーコメントにゃ。けど一番驚いたにゃ。」


 ノーコメントって、いくつだと思ってたんだろう。聞きたいけどなんか怖いよ!

 一番驚いたって……。


「うん……。」

「……。」


 ターヤ君うんって!うんってなんなの!サラさんはすごい複雑な顔して目を瞑ってるし。


「みんな、ひどいよ!!」


 ひどいひどい!!


「えっとちょっと整理しようかしら、ミコトは天翼人で織天使だっけ? 天界種で4大天使様と同じ階位で国王様で。」

「14からクレリックと冒険者を始めて3年?」

「17で今ハイビショップでしかもハイサモナーも兼ねて、錬金術……もできるの?」

「て、天才というかどんだけにゃ。どんな完璧超人だにゃ。これ以上何か出てきても驚くことなさそうにゃ。」


「「「「はぁ……。」」」」


「むー!!」


 みんなが気が抜けた状態から復帰するまでしばらく時間がかかった。

 みんなして僕のことなんだと思ってるんだろう。ひどいよ!


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