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プロローグ2

「な、なんで……?」


 現在HMPが三割を切り、最大HMPが半減していた。


 さらにステータスアイコンを見ると状態異常が瘴気 身体衰弱 魔力衰弱と並んでいる。

 僕は咄嗟にクリアフィールドを詠唱する。僕を中心にして半径九メートルでドーム状に白く透けた光が出現する。クリアフィールドは詠唱者を中心に球形の空間を作りその範囲内で空間影響によるステータス障害、毒ガスや瘴気等から守ってくれる魔法だ。

 唱え終わるとステータスアイコンから瘴気が消えた。なぜか体調がまた悪化した気がする。

 僕は改めてステータスを見る。


 瘴気アイコンは消え、身体衰弱と魔力衰弱は残っている。まるでHMPを消費すると体調が悪くなっていくようだ。

 衰弱が付いた理由は瘴気に当たっていた為にスリップダメージを受け続け、現在HMPが最大HMPの二十%以下になったのが原因のようだ。

 衰弱になると、HMPの最大値が半分になり、全ステータスは半分になる。

 また衰弱の状態からさらに最大HMPの二十%以下になると強衰弱になり、通常時の四分の一のHMPとステータスになる。


 僕は所持アイテムからヒールポーションVIIIを取りだす。

 転生後の種族はHPとMPが統合され、またデメリットとしてリジェネイションなどの自然回復強化は可能だがヒーリングなどの魔法で自己回復はできない。

これは回復職にとっては大変痛く、ソロでは回復職でもポーションのお世話になり、パーティでは自分の他にもう一人、必ずと言っていいほど回復魔法が使える者が欲しい。


「うぅ! にがっ!?」


 ヒールポーションに何故か味がある。今までポーションを飲んでも味などしなかった。ポーションどころか、ファンタジーハート内で飲食したとしても、味覚はないので感じないはずである。


「うぅ。どういうことなの」


 驚いただけ。苦い薬には慣れてる僕である、現実で薬は飲み慣れてるのだから。

 ヒールポーションVIIIを全て飲みおえる。即時回復はしないが二分程度で今の最大HMPまでは回復するはずだ。


「瘴気の中から早くでないと……」


 僕は体を起こして地面から浮かびあがる。先ほどよりは体調はマシだがこの瘴気の中でモンスターにでも遭遇したら機敏には動くことは不可能だ。

 現状では自身での移動も途中で無理になるかもしれない。召喚獣に移動を手伝ってもらう方が無難かもと思い、魔法は使いたくなかったが仕方なく召喚獣を呼び出すことに決めた。

 手を前にかざし、緑色に輝いた光を放つ魔法陣が地上に浮かび上がる。初めはゆっくりと反時計回りに回転し、魔法陣の中央に光が集まり大きくなるに連れ回転も速くなってくる。魔法陣に描かれた文字が回転の速度により読めなくなるところで光の集まりが突如爆発し、光の中から上半身は鷹で虎の下半身、金色のような毛並を持っており大きな翼が特徴的な全長4メートル程の大きいグリフォンが現れた。


 HMPを見ると、上限値が300減っていた。これはグリフォンを召喚したコストである。

 グリフォンを見て、ほっとしたのか大分よくなった気がする。

 このグリフォンは戦闘メインの召喚獣ほどの強さではないが、HMPとSPの使用コストから考えて、非常にパフォーマンスが良い。なによりもヒポグリフ並の機動力と格下のモンスターなら無双の強さを持つ。

 召喚獣は、プレイヤーのHMPの上限値を召喚中のコストとして使用する。SPを維持費として使い徐々に減っていき、SPが無くなってしまうと召喚獣は消え、HMPの上限値は戻る。しかし、通常後衛職は戦闘中を含め激しくキャラを動かし続けるという戦闘スタイルでは無い為、ほとんどが静止しており自然回復ができる状態になる。つまり動かなければあまりSPコストはかからない。

 また装備品、アクセサリーなどの維持費軽減、それと自然回復強化魔法などで強化を図れば、低レベルでもある程度は維持費ゼロで召喚は可能である。

僕の場合は第一線の戦闘メインの召喚獣ではない限り、素の状態でも永続召喚は可能である。


「グリフォン、急いで僕を乗せてどこか人がいる場所か街・・・へ」


 後ろから不意に押される感覚、そしてふとお腹を見ると、僕の体に背中からお腹に向けて剣らしき、刃物が突き刺さっていた。


「……へ?」

「クェーーーーー!!」


 グリフォンが突如走り出し、僕の横を通り抜ける。

 軽い衝撃音と共に僕に刺さっていた刃物も抜けた。後ろを振り向いてみると、そこには剣を持ったスケルトンがおり、グリフォンの爪の攻撃で崩れ落ちるところだった。


「な、スケルトン!?」


 いったいどこからスケルトンが湧いたのだろうかと考えていると、不意にあたりからカタカタと音が聞こえてきた。



カタカタ……カタカタ……

あたりの茂みから音が聞こえてくる。



カタカタ……カタカタ……カタカタ……

だんだんとその音は其処ら中から聞こえてくるようになり。



カタカタ……カタカタ……カタカタ……カタカタ……

その音はこの廃墟の街、すべてから音が聞こえてくるようだった。


「ひぃ!!」


 茂みの中から、ぬっと見渡す限り頭蓋骨が現れる。


 不意に引っ張られるように僕は宙に浮かび、グリフォンの背に乗せられた。

 どうやら、グリフォンが無理やり僕を背に乗せたようだ。

 グリフォンは翼を羽ばたかせるとゴウッ!という風の音と共に一気に宙へ舞う。


 一気に地上から街一帯が見渡せる高さまでグリフォンは駆け上がる。

 空は薄暗くなっており、既に夜になっている。街を見下ろすと街中にスケルトンが湧いて出ていた。

 街からは剣がぶつかりあう音が聞こえてき始め、音の方を見てみるとスケルトン同士で戦闘をしていた。


「なんで、スケルトン同士が戦ってるの?」


 あるスケルトンは剣を持ち薙ぎ払い、あるスケルトンは斧を振い、あるスケルトンは槍で突く。その戦闘音はだんだんと大きくなってきて正に戦場となった。

 街中から聞こえてくる武器のぶつかり合い、何かが壊される音。スケルトン同士の戦争である。

 腕、体、翼が恐怖の余り震えてくる。



(殺せ…… 殺せ…… 殺せ……。)



(守れ…… 守れ…… 守れ……。)



(殺せ…… 壊せ…… 奪え……。)



(国を…… 民を…… 守れ……。)


 街中から、おどろおどろしい声が響き渡る。まるでスケルトンが発した声なのか凄まじい執念、おぞましき2つの意思が聞こえてきた。

 既に奪うものなど何もなく、あるのは瓦礫の山の街を破壊しようとする亡者。

 既に守るものは無く死してもなお、敵勢力のアンデットを屠り続ける亡者。

 互いの執念、怨念とも言うべきか、二つの意思がこの瘴気を作り出し、さらに濃密なものへと変質させているようだった。


「なにこれ、なにこれ……。」



(我らの…… 国を…… 守れ……。)



(姫の…… 国を…… 守れ……。)



「!?」


 この廃墟を守護する亡者の声が聞こえてくる。姫、姫という単語は誰の事を指しているのか。



(我ら…… 国と…… 共に……。)



(我ら…… 姫と…… 共に……。)



「やめて、やめて……」


 僕は耳を塞ぐ。これ以上、聞きたくない。これ以上、僕と確定しえる言葉を言わないでほしい。



(我ら…… ミコト様と 共に……)



(我ら…… エンフィールドと 共に……)



「ああ…… ああああ!!! やめてえ!!!」


 グリフォンは僕を乗せ上昇し続けていたが、十分な高度と判断したのか廃墟の街から離れて行く。


「はぁ……、はぁ…… ゲホッ! ゲホッ!」


 咳が出始め止まらない。あまりの緊張と恐怖のせいだったのか、うまく呼吸ができていなかったのか。


「ゲホッ! ゲホッ! ゲホッ!」


 口をおさえていた手に何かが附着する。



「……血?」


 咳により、おさえていた手に附着したのは僕の口より出た血だった。


「はは……、まるで……、まるで現実みたい。」


 ファンタジーハートの中で血の再現はなかった。咳により出てきた赤い液体は血でまぎれもなく。


「ずっとこの体が重いのも……、さっきから……痛いのも……本物だっていうの?」


 考えなかったこと。先ほど、刺されたお腹。


「は、はは……何で……お腹が熱いんだろう? 痛いんだろう……」


 ローブに大量に附着している血、触ってみると濡れており、さらに血液が手に着いた。

 まぎれもない、グリフォン召喚した直後に刺された箇所は剣で突き破かれ、その周辺には大量の血が付着し、赤く血の色で変色していた。


「ははは……。あははははっ!!」


 僕は力が抜け、跨りながらグリフォンの後ろ首に寄り笑う。

 しばらく笑っていると体力に限界が来たのか急に眠くなってきた。


「ああ……、僕このまま死んじゃうのかな……。」



 ああ……、そういえば……



 僕って……



 死んだんじゃなかったっけ……。


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