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一章 その15

 冒険者ギルドの一階に降りるとミーシャちゃんが居た。

 あれ? 直接リンちゃんに向かうって言ってたよね?


「リン、ミコト~」


 


「ミーシャちゃん、直接向かうんじゃなかったの?」

「いや~。そのつもりだったんだけどにゃ~はははっ。一人で先に行ってるのもどうかと思ってにゃ? ミコト、登録は終わったにゃ?」

「うん、無事に終わったよ。ありがとね、ミーシャちゃん」


 そかそか~。と、ミーシャちゃんはシロちゃんを抱え上げ頭を撫でている。


「ミーシャが来てくれて助かったわ……」

「それはなによりにゃ。」


 ん? なんのことだろう? 


「じゃあ、私の家に行きましょうか。」

「うんっ。リンちゃんのお家楽しみだよっ」


 僕達は冒険者ギルドを出て、リンちゃんのお家に向かう。

 住民区の中でサラさんのお家は住民区の東側にあり政務区に近い。リンちゃんのお家は反対側で西側の端にあるみたい。

 ギルドも港区に近く、ここからだとリンちゃんのお家やキツネ族が多く住んでいる所は近いんだとか。


 サラさんのお家から来た道ではなく、港区側に近い道から居住区へ入る。

 すると今までの街の様相がガラリと変わり、日本家屋のような建物が見え始めた。


「わあ~。もうキツネ族の住居区に入ったのかな? 街の雰囲気が全然違うね」

「ええ、キュウコ式の建築が多いからね。どうしても様相が変わるわ。」


 どうやら、このあたりはキツネ族の人が住んでる区画になってるみたい。

 キツネ族の人を多く見かける、和服を着てる人はいないみたいだね。

 やっぱり何か行事とかじゃないと和服は着ないのかな?


 リンちゃんに連れられ、しばらく移動すると煉瓦と白い漆喰で塗装された外壁が見えてきた。

 この外壁の中がリンちゃんのお家みたい。随分歩いてるみたいだけど、かなり広いお庭とお屋敷があるのかな?


 明らかに和風な門が見えてきて、その門の前に二人の門番が居る。

 どうやらあそこが入口みたい。


「御苦労さま。ミコト様をお連れしました。」

「はっ。お帰りなさいませ、リン様。少々お待ちください。」


 お~。リンちゃんやっぱりお嬢様、いやお姫様っぽい?

 振袖姿かわいかったなぁ。うん、お姫様って感じがするよ。 

 ん? あれ、そういえばこの国だとミーシャちゃんが本物のお姫様なんだ? ロドリグ代表の娘だもんね。

 うーん、ミーシャちゃんがお姫様かぁ。あんまりお姫様って感じが……。


「ミコトくん? 何か失礼な事を考えてないかにゃ?」


 な、なんで解っちゃったんだろう? 

 サラさんと言い、僕の心を読む人が多いような。

 じーっと、ミーシャちゃんは僕を見ている。バレないようにしなきゃっ


「な、何も考えてないよっ!」

「ん~?」


 ミーシャちゃんをはぐらかしていると、門番の人が戻ってきた。

 ふぅ、助かった。


「お待たせしました。どうぞお入りください。」


 門が開かれ、僕は中に案内される。

 門を通ると、ゲンさんとコウさん、レンさんとこの家の召使の人達なのかな、勢ぞろいし待っていた。

 人の多さ、そして整列し歓待されていることに戸惑ってしまう。


「ミコト様、ようこそおいで下さいました。」

「お、お招き頂きありがとうございます。」


 ゲンさんとコウさんから歓迎の言葉を貰い、屋敷に向かう。

 門を跨ぎ、庭を見ると大きな池が見え、樹木が植えられており大きな自然石なども置かれ、石組が作られているみたい。さながら日本庭園となっていた。

 楓や桜の木は紅葉としており、銀杏の葉も黄色くなっていて、とても綺麗だよ。

 時期的に今は秋なんだね。そういえばミーシャちゃんが鮭を釣りにいったんだっけ。

 大きな池には橋が掛かっていて、池の中央にも行けるようだ。もしかして鯉とかいるのかな? いるなら是非とも見てみたい。

 


「綺麗な庭園ですね。」

「おお、庭園の良さが解りますか。キツネ族以外で、庭園の良さを解ってくださる方は滅多におりませぬ。」

「散歩するだけでも、とても楽しそうです。桜もあって、春も綺麗なお庭なのでしょうね。」

「ええ、もちろんですとも。桜も多く植えております。桜が満開の時期は花見も行っております。」


 ゲンさんは庭の手入れも自分でするらしい、もちろん族長時代はできなかったみたいだけど。コウさんに族長を継承した後は、召使と共に今はやっているのだとか。

 御屋敷の中に通されると、ホントに日本屋敷みたいでびっくりする。

 どうやら玄関みたいで、ここで履物を脱いで上がるんだね。


「あ……。」


 僕、靴を脱いじゃうと歩けない事を忘れてた。

 基本、サラさんのお家の中じゃおやすみする時ぐらいしか脱がないし、すっかり忘れていた。

 召使の方が履物を預かるため、脱ぐよう言われてしまった。

 どうしよう……。


「どうされましたか?」


コウさんが、困っている僕に声を掛けてくれる。

「あ、ミコトの履いてるのは魔法の靴だったわね。」


 リンちゃんが思い出してくれたようだ。


「魔法の靴? 貴重な物なのですか?」

「えっと、僕は生まれつき歩くのが苦手で、この靴を履いているのです。」


 コウさんはびっくりした顔をした。

 そういえば、知ってるのってサラさんとミーシャちゃん、ターヤ君とリンちゃんぐらいだっけ。

 他の人には言って無かったね。


「大変失礼をいたしました。伺ってはいたのですが、失念しておりました。お許しください。」

「いえ、僕が言うのを忘れていたのでこちらこそ。」

「ではそのままお上がりください。」


 ええ!? 土足で御屋敷に上がっちゃうのも失礼だよね。

 外では地に降りることはほとんどないから、そんなに汚れてはいないと思うけど抵抗があるよ。


「ミコト様がお不快に感じられ、ご不便をお掛けしてしまうようでは本日の催しも意味がありません。どうか、そのまま」


 僕は謝り靴を履いたまま屋敷にあがると、やはり外から見ても大きかったけど広いお屋敷みたい。


 広間で宴の準備をしているとの事で、客室に通されリンちゃんとミーシャちゃんと一緒に待っていた。

 客室とあってか、ここからの庭園の景色は一段と綺麗に見える。

 翼を使って庭園を空中散歩しても楽しいかもしれない。

 この客室の床は畳でできており、高さの低い机に座布団が用意され、和室の広いお部屋だった。今日はこの部屋で僕と一緒にミーシャちゃんもリンちゃんもお休みするみたい。

それもちょっと楽しみ。

 さすがに座って待つ間は靴を脱いでアイテムボックスにしまう。汚しちゃったら失礼だし、僕も嫌だ。

 別に脱がなくても良いとリンちゃんが言ってくれたけど、僕の気持ちの問題だしね。


 日か陰ってきて夕方になってきた頃、客室でリンちゃん達とお話ししていると、このお家の召使の人がやってきた。湯浴みの用意ができたとか。


「湯浴み? お風呂!?」


 なんとお風呂があるらしい、それは是非とも入りたいけど……

 多少は歩くことができるとはいえ、お風呂に入るのは難しい。

 この世界じゃ手摺りなどはないだろうし、現実だと基本お風呂場専用の椅子に座りシャワーで済ませていた。

 お家に居た頃は、お父さんやお母さんと一緒にお風呂に入っていたけど。

 サラさんのお家では、お湯で濡らした手拭いで体は拭いて、髪は桶にお湯を入れて洗っていた。現実では考えられないけど、こっちではそれが普通なのかと思っていて、別段気にしてなかったんだよ。

 やっぱり、僕は遠慮しておいた方がいいかもしれない。


「ミーシャ」

「了解にゃ」


 リンちゃんが呼ぶと、突然ミーシャちゃんは僕を抱える。

 そのまま、二人は客間を出ようとして……


「ひゃっ!? あ、あのミーシャちゃん、僕は」

「何も聞こえないにゃー。」

「け、けどっ」

 

 有無を言わさず僕はミーシャちゃんに抱えられ、お風呂場に向かうことになってしまった。

 着くと床も壁も板張りで作られた古い銭湯のような脱衣所だった。僕はおろされ、脱いだ服を置いておく棚の下段にある籠へ、しぶしぶ服を脱いで入れる。

 ここまで来たら、もう入らないという選択肢はないのかもしれない。だってここで断ったりしたら、たぶんミーシャちゃんに服を剝かれそうだ。さすがにそれは恥ずかしいのでご免蒙りたい。

 用意されたタオルを持ち、裸になったところでミーシャちゃんに抱えられる。お互い裸で抱えられるのは、ちょっと恥ずかしい。


 「わぁ~。広いお風呂~」


 旅館の室内温泉のようなお風呂って感じで木の香りがする。この大きい浴槽は檜で作られているのかな? 10人は入れちゃうんじゃないだろうか。

 リンちゃん家すごいなぁ……こんなお風呂毎日入れちゃうのかな。うらやましい。

 浴槽の側に下され、近くにある桶でミーシャちゃんはお湯をかぶる。


「お~! ちょうど良い熱さにゃ。 ミコトもいくにゃ。」

「あつ! あついよ! ミーシャちゃん!」


 あつい! 僕には結構あついよ! なんで猫舌なのに、お風呂のお湯は熱いの平気なの!? おかしいよ!

 何度か掛け湯をして石鹸や洗面器、木製の椅子が並んでいる所へ髪と体を洗うため移動する。



 木製の椅子に座り、石鹸を泡立てわしゃわしゃと頭を洗う。

 うーん、気持ちいい。お風呂場だから思いっきり頭を洗えるのはいいね。


「ちょっと、なんて乱暴に髪を洗ってるの!」

「え?」


 リンちゃんに髪の洗い方を駄目だしされる。

 どうも僕がしている髪の洗い方は、髪の毛を痛めるんだとか。

 見て居られないらしく、リンちゃんは僕の髪を洗いだした。


「初めて会った頃と比べて妙に髪が痛んでると思ったら、そんな洗い方してたらそりゃ痛むわよ。」


 リンちゃんの洗い方は、僕の洗い方とはまったく違ってて、頭皮と髪をとても優しく繊細に指を動かしながら、爪の先は使わず指の平で揉むように洗っていく。これは気持ち良いかも。

 絶対に覚えて次回からは同じようにするよう言われてしまった。

 泡を洗い流し髪を洗ったら終わりかなと思ったら、なんだか花の香りがする液体を取り出した。


「それなに?」

「え? 椿油よ。まさか使ってないの?」

「うん。」


 お湯の入った桶に椿油を数滴垂らしかき混ぜたあと、まんべんなく少しずつかけて髪を揉み馴染ませるみたい。

 とっても良い香り、それをかいでいるだけでもリラックスできる。


 リンちゃん達は石鹸で洗ったあと椿油をリンス変わりに使ってて、お風呂後も乾かしたあと数滴使い髪に馴染ませてトリートメントとしても使ってるみたい。

 おでかけ前に日焼け防止や、乾燥防止にも使えるんだとか。

 そういえば、洗髪の時にサラさんが石鹸と別に用意してもらってたのがあったけど、それなのかな? 使った事無かったけど。

 ふえー、あの花の香りの液体はそういうことに使うのかぁ。なるほどね。

 ミーシャちゃんもリンちゃんも髪や尻尾が綺麗な理由って、そんな秘密があったのかぁ。

 

 翼はどうしてるのかリンちゃんに聞かれたけど、ゲーム内で洗う事なんて無いし、洗い方なんて解らない。どう答えようか悩んでいると。


「……まさか、何もやってないの? 嘘でしょ?」

「お手入れとか解んないよ。 いつも光翼だし何もしてないけど。」


 こっちに来てからもいつも光翼だし、体は拭けるけど翼は手が届かないから翼は何もやってなかったなあ。

 そのことを伝えると、すごい勢いでリンちゃんが怒った。な、なぜ?

 髪と尻尾、有翼人なら翼は命の次に大事なものだと豪語された。


 リンちゃんにすべての翼を実体化するよう言われ、しぶしぶ実体化させる。

 髪の時と同じように優しく、念入りに洗ってくれた。


「ひゃうっ!?」

「ご、ごめん。けど我慢して、キレイにするためなんだから。」

「う、うん。がまんするよ。おねがいね?」


 翼を触れられるのは、ちょっとくすぐったいけど気持ちが良い。リンちゃんは洗うのが上手いんだね。

 そういえば、コウさんに触れられた時は同じように変な気分になりそうだけど嫌な気分はしない。

 

 翼もちゃんと洗って椿油を付けるよう言われたけど、一人じゃできないことを言うとサラさんにしてもらうか、リンちゃんがやると言いだした。

 そんなことの為に……と言うとさらに怒りだすリンちゃん。

 2日に1回はリンちゃんの家に来るよう言われてしまったけど、さすがにね。

 強制連行はされないと思うけど……。どうだろう。


 翼も洗い椿油リンスも終わってすっきりしているとミーシャちゃんが何やら面白い事を思いついたようだ。


「お、そうにゃ。3人いるしアレやろうにゃ。」

「あれ?」

「なにするつもりよ。ロクでもないことならやらないわよ。」

「3人並んで前の人背中を洗うにゃ。」


 あ、ちょっと面白そう。やってみたいかもしれない。


「まぁ……いいわよ。で、順番はどうするの?」


 順番はミーシャちゃん、ぼく、リンちゃんの順になり僕はミーシャちゃんの背中を洗うことになった。


「ミーシャちゃんの背中やっぱり大きいね。いいなぁ。」

「ネコ族の中じゃ、私は普通にゃ。」

「うーん、それでもうらやましいよ。」

「ミコトは小さいからにゃ~。」

「私より小さいしねぇ~。ほんとミコトの背中小さいわ、体も腕も細いし。」

 

 小さい小さい言わないでよ! これでも気にしてるんだから!

 ゲームを始めた時の体格だから、こっちは成長してないんだよ。

 ん? と言う事は、まさか僕って14歳の頃から成長してなくて……。

 まさか僕ってこっちでは17じゃなくて14歳なんだろうか……。

 こっちの世界でも成長しないままなんて……。

 ま、まさか……これ以上考えるのはやめておこう。

 

 ん? 何やらリンちゃんから耳打ちを……ふむぅ仕返しには良いかもしれない。

 

「ふ~。極楽にゃ~……はにゃ!? ちょ、ちょっとミコト、尻尾はいいにゃ! さっき自分で……ひゃあ!」

「えんりょしなくていいよ~。洗い方はリンちゃんに教えてもらったよ!」

「リ、リン! 余計なことを! あ、あとで、はにゃああ!?」


 人差し指と親指でわっかを作り、尻尾の根元をやさしく握りしごき洗う。


「ひゃあああ!!」

「あ、ごめん。痛かった?」

「い、痛くはないけど、ゆ、ゆっくりと……」

「ミコト、素早くやりましょ。風邪ひくわよ。」


 リンちゃんのアドバイスに従い、素早くしごくようにミーシャちゃんの尻尾を洗う。

 それにしても、リンちゃんはミーシャちゃんくすぐったく感じるって言ってたけど、そんな感じじゃないっぽい。大丈夫なのかなぁ? なんだかビクンビクンしてるよ?


「ミコト、付け根の毛を指の先で逆立てるようにかくと良いわよ。裏もしっかりね?」

「リ、リン!? ソレはシャレにならないにゃ! ひゃぅっ!? ひぃぃ!」


 なんだか、切羽詰まったミーシャちゃんのって声が高くなって可愛いね。けどホントに嫌がってそうなので、そろそろ終わりにしよう。まんべんなく泡立てたと思うし。

 ミーシャちゃんの尻尾にお湯を掛け、泡を灌ぎ落とす。

 当然なんだけど、毛の奥まで染み渡った泡はそう簡単に灌ぎ落とすことはできないので、何度もお湯を掛けしごきだしていく。


「はぁ……はぁ……。」

「ミーシャちゃん! 綺麗になったよ!」


 くるりとこちらに向くと、なんだか頬を赤く染め涙目になったミーシャちゃんが不敵に笑っていた。


「ミ、ミコト、とってもありがとうにゃ。私も懇切丁寧に洗ってやるにゃ。」


 肩をガシっと掴まれて動けない。後ろを向く事ができないんだけど……

 あれ? ミーシャちゃん、もしかして怒ってる?


「ミーシャちゃん、掴まれていると後ろ向けないよ……?」

「全身くまなく洗ってやるにゃ……遠慮するにゃ。」

「え? リンちゃんの背中洗えないから……」

「あ、私はもういいわー。」


 あれ、リンちゃんの声が遠くから聞こえる。え!? なんでもうお風呂に入ってるの!? いつのまに!!

 リ、リンちゃんたすけ、ひゃあああ!!

 ソコはいいよ! 自分で洗うからあ! ひゃう!!

 あ、だから何度も翼の付け根だめえ!! そんなにゴシゴシと……ひゃあああ!!!!







 「ふあ~……。」

 ミーシャちゃんの僕への復讐が終わり。みんな湯船に浸かりリラックスしている。

 一足先にリンちゃんは湯船に浸かっていたけど……。

 湯船は僕が沈んでしまうぐらいの深さがあった。そのためミーシャちゃんの膝の上に乗って湯船に浸かっている。

 僕はミーシャちゃんに体を預け、肩に頬を寄せてお風呂を満喫している。

 あんなイタズラしちゃったのに、ミーシャちゃんは優しいね。

 リンちゃんはひどいよ、あんなこと僕にやらせるなんて。

 ミーシャちゃんに捕まり、身動きの取れない僕はくまなく洗われて解ったのだけどミーシャちゃんの尻尾は僕の翼と同じように、敏感な所だったみたい。

 付け根を触れられると、さっきのミーシャちゃんみたいにおかしくなりそうだったよ。


「2人とも顔を赤らめてそんなに寄り添っていたら、まるで恋人同士みたいね。見ているとこっちが恥ずかしいわ。」

「「誰のせいだとおもっているの!(にゃ!)」」


 今度、機会があったらリンちゃんの尻尾を思う存分洗ってやるんだから。

 あ、でもあんなに綺麗な尻尾だもんね。僕がやったらまずいかなぁ?

 綺麗なふかふかの尻尾を抱くだけでも満足だし。下手に僕がやるのはやめておこう。


「丁寧に洗ってもらったせいか妙に尻尾がすっきりしたにゃ」

「そういって貰えると、嬉しいよ。」

「あついわね~。のぼせそうだわ。」


 ミーシャちゃんと二人してリンちゃんを睨む。リンちゃんは素知らぬ顔でお風呂を満喫していた。

 リンちゃんの言う事は無視して、お風呂を満喫しよう。うん、そうしよう。

 椿と檜の香り、本当にリラックスできる空間だよ。ほんと素敵なお風呂だよね。

 ほんと贅沢な空間だと思う。リンちゃんは毎日こんなお風呂入ってるんだろうか、羨ましい。

 2日に1度は来なさいって言われたけど、来たくなっちゃうな。

 

 ミーシャちゃんに了解を取り座る位置を変えて首までお湯に浸かる。

 ふあ~気持ちが良い……。なんだかお風呂から出たくなくなっちゃうよ。

 ミーシャちゃんに寄りかかろうとすると何やら頭に柔らかいものが当たる。

 首を動かして柔らかいものを見ると、ミーシャちゃんの胸だった。

 い、今まで気づかなかったけど、レンさんほどじゃないけどミーシャちゃんもおっきいんだ……。


「……。」

「にゃ? どうしたにゃ?」

「ミーシャちゃんって大きいんだね……」

「ミコトもいつか大きくなると思うにゃ。ミコトはご飯を疎かにしていたから体も小さいにゃ。これからにゃ。」


 そうなのかなぁ。現実では、病院食だし疎かにはしてなかったと思うんだけどなぁ。


「ふんっ、無駄な贅肉が増えた所で邪魔なだけよ。」

「負け惜しみいうにゃ。これは女の付加価値にゃ。」


 リンちゃんのタオルがミーシャちゃんの顔に向かって飛んでくる。

 ヒョイとよけるミーシャちゃん。あ、あぶなっ。僕にも当たっちゃうよ!


 レンさん曰く、女の魅力はルックス、胸を除いたプロポーションの美しさがまず基準点となり、胸の大きさにより基準点にプラスされる。

 あればそれだけ女の魅力は高まる、加点されるものなのだと。そう豪語したのだとか。

 な、なるほど。僕にはよくわからないけどレンさんが言うならそうなんだろうね。


「は、母上の戯言よ!」

「リンちゃんだって、大きいじゃん。」

「!?」


 僕とそんなに体格変わらないのに、かなり大きいよね? 

 さすがキツネ族と言うべきなのか、羨ましいよ。

 レンさんの理論だとリンちゃんも得点高いんじゃないの?

 そう言うとミーシャちゃんはすごい驚いた顔をした。


「そ、そうかしら……くっ」


 な、なんでリンちゃん泣いてるの? 僕なにか悪いこと言った?

 何かリンちゃんを傷つけてしまったのかと思い謝ると、そうではないみたい。

 どうしたんだろう?




 しばらくしてお風呂から出て客間に戻ると、リンちゃんは尻尾の手入れをしていて、ミーシャちゃんは自分の髪の手入れが終わった後に、僕はうつ伏せに組み敷かれ翼のお手入れをされて悶えているとサラさん達がやってきた。

 サラさんに僕が椿油を使っていなかった事を告げ口するリンちゃん。サラさんもまさか椿油を使って無かったとは思わなかったらしい。疲れやストレスから髪にダメージが出てしまっているのではないかと思っていたのだとか。サラさんからも椿油を使うよう言われてしまった。


 ターヤ君はコウさん達と広間に居るらしくて、僕の恥ずかしい所は見られなかった。

 よかったよ、こんなところ見られなくて。

 僕達がお風呂に入っている間に夜は更け、広間で宴を開く準備はできているようで後は僕達待ちみたい。

 ご飯早く食べたいな、何が出てくるのかなぁ。

 ミーシャちゃん離してくれないかなぁ。僕もうお腹減ったよ。

大変長らくお待たせしました。


気合い入れてお風呂シーンに拘ってたら、大変時間が掛ってしまいました。

すいませんorz



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