第1話 狂乱は突然に!!
~前回までのあらすじ~
このあとどうしよう? で終わった筆者はネタに枯渇し七難八苦、と思いきやいざキーボードを打つと間欠泉のようにネタが湧いてきたのであった!!
怒涛の第1話、ご覧あれ
さて、外に出たもののどうしようか? 生活必需品や商売道具はギルドが家へ運んでくれたそうなので手入れをしたくてもその家を知らないことには触れることすら出来ない。
「むぅ、何か面白そうなところ、は……?」
俺は目の前の光景に息を詰まらせた。皮で出来た大きなリュックサックを背負って駆け出すアライグマが居たのだ。俺の村では人間以外の人種が居なかったがエルフやドワーフを見て驚くことはなかった。しかし、二本足で駆け出すアライグマを見たのは初めてだ。
俺はその場で立ち止まって、アライグマが建物の角を曲がって姿が見えなくなるなるのを見届けてから周囲を眺めて、改めて街といものを実感した。
大通りに沿って立ち並ぶ商店。その中には雑貨店や工場といったものまで軒並みに連なっている。
ちなみにこういった商工業は商工ギルドに分類される。商工業は『税金』というシステムが導入され利益の一部をギルドの運営費に付与する。
どんなギルドでも共通するのはそのギルドに所属するものから金を回収するところだ。ギルドの主な役割は依頼主の仲介役、もしくは依頼主が顔を出せないなどの理由での代理人といったところだ。まぁ、要は仕事を与えてくれる所だと思えばいい。
結局のところギルドといのは生活に、もとい、生きていくことに非常に密接している。
俺は戦士ギルドに属しているが、税金というシステムはない。が、仲介料というもので依頼の報酬からさっぴかれる。依頼主に直接会ってしまえば仲介料なんてものはないが、ギルドという安定したシステムがある以上、依頼主が直接依頼ということは稀だ。
街の景観を楽しみながら、遥か先の方を見ると白い巨塔が建っている。街に来るときは屋台小屋の馬車に乗っていたので外を眺めることはなかったが、ここまで大きな建物を見るのは生まれて初めてだ。
巨塔に気を奪われ周囲への注意力が散漫した俺は向かいから歩いてくる人影に気付かなかった。
わっと叫ぶ頃には衝突して対向者を半ば避けるように前のめりに倒れた。
「すいません、大丈夫でしたか!?」
俺はとっさに背後を振りかぶって、まずは謝罪した。そして一瞬で理解したことは自分よりも低い身長、正面からぶつかっても倒れることのない重量感。つまりはドワーフだ。
ドワーフはエルフと違って穏健という訳ではない。因縁をもたれたら野蛮と言えるほどの太く逞しい腕に八つ裂きにされかねない。だから、まずは謝る!!
「……あのぅ、大丈夫でしたか。……お怪我は?」
どこかたどたどしい声でドワーフはエルフの女性のような声音で、予想外の言葉を発した。
俺はとっさに理解した。
このドワーフは優しい言葉で自分のテリトリーへ引き寄せて報復する気だ。
「……あの、私の家、そばにあるんですが手当させていただけませんか?」
……ッ!! 私の家=路地裏で、手当=報復の業界用語に違いない!!
「と、とんでもない、怪我なんかありませんよ。すいませんが僕用事があるんで失礼しますね!!」
直角にお辞儀して、180度ターンして、走る!!
「怖いぞ、ドワーフ。見た目もさることながら怪しい言葉で惑わすなど。って見た目なんてあんま見てなかったな」と独り言を呟きながら、先ほどアライグマが消えた建物の角を曲がる。
見通しの悪い角を曲がる際は注意するべきだが、一刻もこの場から去らねばならない気がした俺は、今度は声をあげることもなく正面衝突してしまった。今度は顔面衝突なので転倒することもなかったが鼻が痛い。
「すいません!! 大丈夫ですか!?」
そのセリフは俺が言うべきだったが、相手の方が早かった。というか、早すぎる。
俺は鼻を押さえて血がでてないことだけを確認してから相手の顔を確認する。が、相手の顔は目の前にはなかった。甲冑の胴のような部分が見えるだけでおかしいと思った俺は見上げて驚愕した。
でかい。とにかくでかい。
驚いた俺は二歩、三歩後退して全体像を窺う。
2メートルは余裕で超えている巨躯は全体を白銀の甲冑で覆い、所々には装飾が施されどこかの国の紋章が打たれている。顔は完全に隠されているが、視界を確保するために唯一目のあたりの部位だけがくり抜かれている。
そこから覗く眼光は鋭く、見下ろされる俺はといえば獅子に睨まれた子兎といったところだ。
そんな子兎である俺は半分身構えながらも、あまりの恐怖に硬直していた。
「……あの~、本当に大丈夫?」
声はとにかく落ち着いているが視線が痛い。比喩表現ではなく、物理的な威力をもっていると錯覚してしまう俺は平衡感覚を失いつつも根性で立っていた。
頼むから、そんな目で見ないでくれ!!
後ろからは因縁を持ったドワーフ、前方は巨大な何かが立ちはだかっている。俺は妙な冷や汗を全身から滝のように流している。
どうする、どうする、どうするんだ!?
一秒が一分はあるんじゃないかと思う程の停滞する時間が数秒過ぎた後、再びあのアライグマが視界の端からやってきた。
視界の隅からというのは目の前の巨竜のようなものの視線から逸らすと食い殺されそうだからだ。
アライグマはすたすたと目の前の何かの横を通り過ぎるかと思ったら、
「ようっ!!」
一言、ただ一言、目の前の何かに手を挙げ挨拶をして、俺の横を通り過ぎていった。
おい、クマ!! 無視すんな!!
俺は動こうと右の前足をすり足でちょとずつ右斜め前へ逃がしていった。
「あら、スカンクさん。ごきげんよう」
後方から印象が強い見た目ドワーフ、声はエルフのようなあの特徴ある声が聞こえた。俺の後ろにはアライグマが通り過ぎただけで後ろは大通りを通る人たちだけだ。アライグマが通り過ぎた直後のことにこの声が聞こえたことは、
やつの名前はスカンクか!!
と、いう真実と現実逃避しようという心から、ふつふつと生まれるツッコミしたい気持ちだった。
「おう、カナリア。前の依頼、以来だな……なぁんてなっ!!」
アライグマがおっさん臭い。そして、ドワーフがカナリアな件について。
ツッコミがしたいです。したら、殺されるけど。
俺はあまりの混乱状態に現状を整理すること出来ずに、というか思考を放棄して殺されても構わないと思う程に走りたいという衝動が湧いてきた。
「……あの、僕の家、そばにあるんだけどお茶でも飲まない?」
僕の家=根城 お茶=毒湯 飲まない?=飲まされる という言葉に全身に電流が走った。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁあ、うわあああああああああああ!!」
俺は魂の叫びと共に両手で頭を抱え、自分自身の命を厭わない覚悟で前方へ駆け出す。
巨大な何かの横を通り過ぎたことを確認したかったが、踏みとどまったら、死ぬ!!
俺は建物に挟まれた路地裏へ続く道を全力で駆け出していったのである。
……今更ですが拙作は出来立てホヤホヤの素人です。
知らぬことが色々ありますが、先輩たちの貴重なご意見を頂ければ嬉しいです。
拙作に物申す!! ことがあればどしどしお申し付けを下さい。