序章 選択肢は慎重に
初めましての方は初めましてです。二作品目でございます!!
思いついたら書くを基本としてる私、八重垣出流の最新作ですよー。
まだ、二作品めですけどね(笑)
『名前:ナユタ 職能:弓使い 等級:魔弓士』
そう書かれた羊皮紙をメガネをかけた待ち受け嬢に手渡して俺は辺りを見回した。
昼間にも関わらず、酒場のテーブルには大勢の客がついていた。ジョッキを大きく傾け他人の口に無理やり流し込む人間もいれば、高笑いをして小粋なステップで踊りだすドワーフがいる。そしてそれを見て腹を抱えて笑いだす両の耳が長い亜人種。
この街の名前はピークタウンという。俺は自らの才能を活かそうと故郷の村から出てこの街に来たのだが、なんでも、この街は新参者には住みやすいと聞く。初めて街で暮らそうとする俺にとってはありがたい存在だ。
再び視線を酒場から受け付け嬢の方へと向けると、彼女は羊皮紙のある一点を睨み付けている。
複雑な記号や数字の文字が重なり合って常人が読めるようなものではなかった。しかし、彼女はその文字を読み解くことが出来るようだ。話に聞いたことがあるが、メガネのレンズを介して細かな情報を読み解くAR技術系のものらしい。
「……で、御用はなんでしょうか?」
極めて事務系の口調で受け付け嬢が問いかけてきたので、あっけにとられてしまった。
「あ、新しくこの街に住もうかと思って、ギルドへの加入の手続きをしたいんだけど」
ギルドというのは簡単に言えば組合だ。ギルドにも色々あって商いや職人系の商工ギルド、傭兵や害獣の駆除をする戦士ギルドなど多種多様にある。ちなみに俺は後者の戦士ギルドに属する。
「あー、新人ですか。手続きはすぐ済むんで居住区を案内したいのですが担当の者が今外れてるんですよ。少々お待ちいただけますか?」
おーっと、案内する人がいるのかこのギルド? なんて優しい街なんだ!!
「担当の人はいつごろ戻ってくるのでしょうか?」
「そうですねぇ、昼休みを挟んで外を回ってるんで1・2時間ほどですけど」
1・2時間か。酒場だから時間なんて忘れられるだろうが、酒に酔って担当の人に会って粗相でも起こしたら困るよなぁ。街のことなんか全然知らないから外を回るのも悪くないか。
「ちょっと外を回ってくるんで、時間になったら戻りますよ。……えぇと、名前は?」
「イスズです。……治安が悪い街という訳ではありませんが充分気を付けて下さいよ」
さっきまでの事務的な態度が嘘のようにイスズは微笑んで俺を見送ってくれた。
俺はこのときイスズの言葉が人生を大きく変えるとは思ってはいなかった。もしも、酒場で待っていたら会える人に会えずにいた。そうしたら、今頃どうしていたのだろうか? と考えてしまう程だった。
……このあとどうしようか。