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【君は私のヒーロー 】―頑張る君へ、恋する私から―

掲載日:2026/10/26

普段はなかなか意識しないけれど、私たちが物語を楽しめるのは、それを支えてくれる人たちがいるからこそ。


そんなことを考えながら、頑張る彼と、彼を応援したい彼女のお話を書いてみました!(≧▽≦)


不器用で、ちょっと音痴で、でも愛情だけは全力な彼女の応援が、誰かの心にも届きますように♡ヽ(=´▽`=)ノ

【君は私のヒーロー】

――頑張る君へ、恋する私から――


◇◇◇


「今日もおそっくなる、のかな〜♪」


 彼女はノートパソコンの前で、鼻歌まじりにペンを走らせていた。


 小説家になろうのメンテナンスは、十七時から十八時までの予定。


 大好きな彼は、システムエンジニア。


彼が守っているのは、ただのサイトじゃない。


 誰かが書いた物語が、誰かに読まれ、本になり、アニメや映画になって、世界へ飛び出していく。その始まりを支える場所だ。


 だから、彼女は応援したかった。


『お姫様を救う騎士。』

『世界を救うスーパーヒーロー。』

『ざまぁしちゃう落ちこぼれ。』


 みんなが憧れるヒーローはいろいろいるけれど、彼女にとっては、スーツ姿でパソコンに向かう彼こそが、ヒーローだった。


 ノートには、弾むようなリズムでラブソングを書いた。


 ♪ 頑張れ! 頑張れ!

 ♪ 私だけのヒーロー!

 ♪ 本になれ! 映画になれ!

 ♪ 君の守る夢、世界へ届け!


 歌詞の横には、マントを羽織った彼が、自分をお姫様抱っこしている絵。


 顔はうまく描けなかったけれど、そこは想像で補えばいい。


 抱かれた女の子の頬には、小さく、赤いハートを足した。


「……えへへ。」


 自分で描いて、自分で照れた。


 彼女は、ノートをスマートフォンで撮った。


『お仕事、がんばって。私だけのヒーローへ』


 送信してから、ふと、時計を見る。


 十七時を、少し過ぎていた。


◇◇◇


 その頃、彼は、画面を睨んでいた。


 昨日も、遅かった。一昨日も。


 張りつめた空気の中で、誰もが短い言葉しか交わさない。


キーボードの音と、手順を読み上げる低い声だけが響いている。


 緊急の作業は、これで何度目だろう。


 疲れは、もう、肩の奥に居座っていた。


 その机の端で、スマートフォンが、小さく震えた。


 見る余裕は、ないはずだった。


 それでも、視線が、ほんの一瞬だけ動いた。


 画面に、ノートの写真があった。


 元気いっぱいの歌詞。


赤いマントの、顔がよく分からないヒーロー。


 抱かれた女の子の頬に、小さなハート。


『お仕事、がんばって。私だけのヒーローへ』


「ははっ……」


 彼は、息を吐いた。


 肩から、ふっと力が抜けた。


 口元が、ゆるんだ。


「……どうした?」


 隣の同僚が、横目で訊いた。


「いえ。なんでもないです」


 彼は、画面に目を戻した。


 さっきまで霞んでいた文字が、はっきり見えた。


 指の動きも、迷いが消えた。


 一行。また一行。


 作業は、静かに、滞りなく進んでいった。


◇◇◇


 玄関の鍵が、静かに回った。


 部屋は静かだった。


 彼は、ノートパソコンの前で眠る彼女を見つけて、足を止めた。


 腕を枕にして、すやすや眠っている。


 その横には、開いたノート。


マント姿のヒーローと、彼に抱き上げられた女の子。


 彼は、目を細め、笑った。


 近くにあった毛布を、彼女の肩にかける。


挿絵(By みてみん)


 それから、ペンを取った。


 イラストの顔の下に、小さく書き足す。


『うまく描けてる。ありがとう。』


 少し迷って、もう一行。


『俺のヒーローは、君だよ。』


──書いてから、顔が熱くなった。


◇◇◇


 肩に、ふわりと温かなものが触れた。


 彼女は、もぞもぞと身じろぎした。


「……ん?」


 顔を上げると、すぐそばに、彼がいた。


「……ヒーロー?……わたし、寝すぎた……?」


「ただいま。こんなところで寝てたら、風邪ひくよ」


「ふぁ〜ぁ……おかえりなさい……」


 時計を見る。


──まだ十八時にもなっていない。


「えぇっ!? もう、終わったの?」


「うん。早く終わった」


「すごい……!さすがは、わたしのヒーロー♡」


 なんで早くお仕事が終わったのか、よくわかんないけど……。


 でも、彼が帰ってきてくれた!


 それだけで、胸の中が、ぽかぽかした!


「見て見て! 君の応援歌!」


 まだ夢の続きにいるような、ぽややんとした笑顔で、歌い始めた。


 ♪ 頑張れ、頑張れ、私のヒーロー♪

 ♪ 君の守る場所から、夢が飛び出すよ♪

 ♪ 本になれ、映画になれ♪

 ♪ みんなの心に届けー♪


 最後は、ちょっと音程が外れた。


 それでも彼女は、満足して彼に抱き着いた。


「頑張ったね!私のヒーロー♪」


 彼は、こらえきれずに笑った。


「ありがとう。すごく、元気が出たよ。……写真も、届いてた」


「ほんと? 見てくれたの?」


「見た。あれで、ちょっと、楽になったよ」


 彼女は、目を丸くして、それから、にんまりと笑った。


「うふふっ、よかった〜♪」


 小さく、そう言った。


 それから、ふと、ノートの余白に目を落とした。


 動きが、止まった。


『――うまく描けてる。ありがとう。』


『――俺のヒーローは、君だよ。』


 彼女の顔が、ゆっくりと、赤くなっていった。


「……これ」


「あ」


 彼は、目をそらした。


「その……なんだ……」


 彼女は、ノートを胸に抱えた。


「消さないでね」


「消さないよ」


「ずっと、取っておくからね」


「それは、ちょっと恥ずかしいな」


「だめ。決定!」


 彼女は、にこにこ笑ったまま、彼の袖をつまんだ。


「ねえ、一緒にご飯、食べられる?」


 ほんの少しだけ、甘えるような声だった。


「うん。食べようか」


「やったあ!」


 彼女の顔が、ぱっと明るくなった。


──世界を救う騎士も、空を飛ぶスーパーヒーローも、きっと素敵だ。


 でも、彼女にとって、世界一のヒーローは、忙しい仕事を終えて帰ってきても、眠ってしまった自分に毛布をかけてくれる優しい人。


 そして今夜は、一緒にご飯を食べてくれる人。


 それだけで、もう十分だった。


──そして、彼にとっても。


 疲れて帰ってきた夜に、元気いっぱいの下手な歌と、ノートの中の小さなハートで迎えてくれる人こそが、いちばんのヒーローだった。


「いつも、お疲れさま。ありがとう♡」


 彼女が、言った。


「その一言で、また頑張れるよ」


「うふふ、いつでも言うよ。何度でも」


 彼女は、毛布を肩にかけたまま、彼の隣を歩き出した。


 鼻歌は、まだ続いている。


『♪ 頑張れ、頑張れ、私のヒーロー♪』


 今度は、彼も小さく口ずさんだ。


 音程は、やっぱり少し外れていた。


 ふたりは、顔を見合わせて、同時に笑った。


 世界の物語を守る君へ。


 そして、君と私の物語も、これから先へ続きますように。


  (了)


緊急のメンテナンスで、17時から18時までの予定が17時15分に終わるって、すごくないですか!?

ホントに、いつも、ありがとうございます♡(人ꈍᴗꈍ)

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― 新着の感想 ―
拝読させていただきました。 縁の下の力持ち。人知れず頑張る人、その頑張る人を応援する人。 よいお話です。 読ませていただきありがとうございます。
昨日の緊急メンテ確かに凄く早かったです!! まさかその舞台裏でこんなラブラブなやり取りがあったとは……♪ 羨ましいぞ〜〜!ww いや。何百万もの登録ユーザーさんが少しでも、早くなろうを開けるように…
 サイトに限らず、いろんな世の中の仕組みをメンテナンスしてくれるひと、もっとゆえば、その下敷きをつくってくれたひと。  この世界があって、我々が享受できるのは、そのかたがたのおかげですね。  せんき…
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