表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/1

冷笑学校

世はまさに、大感情時代。

誰もが己の情熱や勢いを誇示し、声の大きい者が正義となる時代において、ひとつの異質な思想を掲げる学園があった。

「情熱? 汗? それ、客観的に見て痛くないですか?」

私立・冷笑学園。そこは、感情の暴走を「冷ややかな眼光」と「圧倒的正論」で鎮圧する、孤高のリアリストたちの集会所。

対するは、圧倒的な熱気と暴力で周囲を力でねじ伏せる、最悪の体育会系勢力・熱笑学園。

感情を燃やして全てを押し潰そうとする「熱」に対し、感情を冷やすことで全てを無力化する「冷」。

本来交わるはずのなかった二つの学園が衝突するとき、前代未聞の“感情レス”バトルが幕を開ける――。

熱気と勢いだけで押し通そうとする悪党たちを、一滴の汗も流さず「冷笑のパワー」だけで完封する、クールで少しシュールな正義の記録を、どうぞお楽しみください。

私立・冷笑学校。ここでは、あらゆる不都合な感情を「ダサい」「冷ややか」な眼光で無力化する“冷笑の拳”が磨かれていた。

対するライバル校・熱笑学園。彼らは一見、活気あふれる陽気な校風に見えたが、その裏では「熱気と暴力で周りを支配する」悪徳軍団・熱笑執行部が暴虐の限りを尽くしていた。

ある日の放課後、冷笑学園の校門前で、熱笑執行部のリーダー・熱田が嘲笑いながら怒声を上げていた。

「おいおい! なんだその死んだ魚のような目はよぉ! 男なら青春の汗を流して、熱く笑えや! 抵抗しねぇなら、この街のルールに従ってもらうぜ!」

熱笑の校徒たちが校門を破り、威圧感で冷笑の生徒たちを追い詰める。しかし、その群衆の前へと静かに足を進める男がいた。冷笑学園生徒会長、氷堂玲。

氷堂は眼鏡のハシを指で押し上げると、溜息交じりに呟いた。

「……ハァ。相変わらず熱量が無駄ですね。暑苦しい」

「あぁん!? なんだその態度は! 熱いパッションのねぇ奴は、俺たちの『熱爆笑波』で吹き飛ばしてやる!」

熱血が全身からメラメラと灼熱の気 オーラ を噴出させ、拳を振り上げた。周囲の空気が歪むほどの熱気。誰もが怯えるその威圧感に対し、氷堂は顔色一つ変えない。

「『熱爆笑波』……ですか。わざわざ自分の技にそんな恥ずかしい名前をつけて、本気で強そうと思っているのが滑稽です。文脈、読めてます?」

「な、なんだと……!?」

氷堂の放った鋭い“冷笑”の一言。それが空気を一瞬で氷結させた。熱田の放つ熱気が、スッと勢いを失う。

「だいたい、他人に自分のテンションを強要する時点で知性が浅い。威圧することでしか自分を保てないなんて、コンプレックスの裏返しでしかないですよね? ……クスッ」

氷堂の口元に浮かぶ、究極の薄笑い。

「冷笑波動・メタ視点」

「う、ぐ……っ!? な、なに……この、背筋が凍るような惨めさは……!?」

氷堂の冷静沈着な正論と、すべてを見透かした冷ややかな眼光。それが熱田の「熱い自分に酔っている」精神メンタルをダイレクトに粉砕していく。熱田の気迫は急速に萎み、冷や汗が滝のように流れ出た。

「お前たちの熱さは、ただの『痛い演出』です。撤収してください。見ていてこちらが恥ずかしい」

「う、うわあああぁぁッ! 俺は……俺はなんて痛い奴だったんだぁぁぁ!」

己の「痛さ」に耐えかねた熱田は、崩れ落ちて悶絶した。残された熱笑執行部のメンバーも、氷堂の冷笑オーラに当てられ、「自分たちのやっていることが急に恥ずかしくなった」と脱力し、次々と降参していった。

こうして、冷笑学園は一切の拳を交えることなく、ただ「冷静な正論」と「一級品の冷笑」によって、熱笑学園の悪党たちを撃退したのだった。

氷堂は乱れた前髪をサッと整え、静かに吐き捨てた。

「……青春なんて、冷めてるくらいがちょうどいいんですよ」

最後までお読みいただき、ありがとうございました。作者です。

本作は「情熱と勢いこそが正義」という王道のバトル展開に対して、**「いや、客観的に見たらかなり痛いのでは……?」**という、誰もが一度は脳裏をよぎりつつも口に出さなかった身も蓋もないツッコミをそのままバトルシステムに昇華させてみた作品です。

作中の冷笑学園生徒会長・氷堂の必殺技「メタ視点」ですが、現実世界で食らうと精神的ダメージが数日間残る非常に危険な技となっております。良い子の皆さんは真似をしないで、相手がどんなに熱く語っていても「あ、うん、すごいね」と生温かい目で見守ってあげるにとどめておいてください。

ちなみに、敗北した熱笑学園の熱血くんですが、あの後は己の「痛さ」に悶絶したのち、無事に冷めて普通の文化部に入部したとかしないとか。

熱狂的な情熱も素敵ですが、たまには冷めた目線で世界を俯瞰してみるのも悪くないかもしれません。……まぁ、そんな冷めたことを言っている自分自身が一番痛いのかもしれない、という「メタ視点」に気づいたところで、筆を置かせていただきます。

それでは、またどこかの冷めた世界でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ