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プロローグ

4月8日、朝7時。窓からいっぱいの朝日の差し込む自室で、蒼真は真新しいブレザーの制服に袖を通す。今日から新しい日々、高校での生活が始まる。だというのに、蒼真は中学の卒業の日の自分のやらかしを引きずっている。ネクタイを締めるために鏡の前に立つ。自分の顔を見てため息が出る。卒業式の後、グラウンドの真ん中にまで塾の友達の女子に手を引かれて行き、「好きです」と言われた。そのとき蒼真は彼女になんと返事をしたか、記憶が飛んでいる。覚えているのは彼女の涙と、強烈なビンタの痛み。

「あのとき、僕はなんて返事したんだろう」


この春の桜の開花は遅い。3月上旬に訪れた季節外れの寒波の影響だそうだ。そのおかげで、高校の入学式に向かう道中は満開の桜に迎えられている。神谷蒼真は自転車に乗って初めての通学路を進んでいる。中学の同窓生で唯一同じ高校に通うことになった牧山直と共に。

彼らが通うことになるのは県立洲原高校。田園地帯の中に立つ、比較的新しい高校だ。正門には「第23回 入学式」の看板が建てられているのが遠目にも見える。

「同じクラスになるといいんだけどな」

直が話しかける。

「7分の1だから、サイコロの1の目が出るよりちょっと確率が低いな」

蒼真は答えになっていないことを言う。

「またまたー。いっつもそうやって冷めたこと言ってさー。蒼真は俺と一緒のクラスは嬉しくないの?」

「ま、7分の1で当たっちゃったら受け入れるさ」

「ひでえ!」


川の堤防の坂を上がると、白い校舎が見えてきた。これから3年間を過ごすことになる学舎は、やはり新しい。蒼真と直が通っていた昭和に建ったボロ中学とは比較にならない清潔感がある。橋を渡って、教師の誘導で自転車を停めて、クラス分けが貼り出されている掲示板を確認しにいく。

「7分の1で大当たりだな、1年間よろしくな蒼真」

「1年6組か。直との1年間を受け入れるわ」

「だから、嬉しくないのかよ!」

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