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欠落万能屋は記憶を探求する  作者: 多津身 光
第三章:波乱な依頼
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74. 高魔力の一撃

 シルクは指定の位置へ立ち止まり、正面にある魔力測定器に視線を移す。


 やたらと突き刺さる様に感じる周りからの視線が気になるものの、何とか割り切るしかない。

 そう心の中で言い聞かせつつ、使用する武器についてもふと考える。



 仕事中に様々な武器を使用しているが、中でも主に使用しているのは刀だ。使い慣れている武器の方が威力は上がりやすいだろう。


 しかし、シルクの中で刀の選択肢は外される。

 ブラックリザードマン討伐の際に刀を使用し、偶然にもその後処理をする事となったアベルに只者では無い判定をされてしまった。


 そのことはカネルにも伝わっており、その二人からの視線がやたらと痛く感じて仕方が無い。

 何でも屋として活動するにも、余計に特定はされたくないのがシルクの本音である。



 刀以外の武器で、いつものように攻撃しよう。

 そう結論付け、シルクは両手を自身の顔から少し離した位置でぴたりと止めた。




「武器は使わないでそのまま魔法を出すのかな」


「遠距離の位置からだし、そうかもな」



 シルクがどのような魔法を使用するのかを知らないペーシェ達が予想を立てる。




(いつも通り落ち着いて…集中しろ)




 シルクの右手の中指にはめられている指輪がきらりと光る。

 その瞬間、シルクの手元に小型の拳銃が召喚された。



「召喚魔法じゃん、しかも速い!」


「…おい、魔力がどんどん上がってないか?」




 シルクは拳銃を構えたまま静かに魔力測定器の中心に狙いを定める。

 同時に意識を集中させ、懇親の一撃を繰り出すための弾丸を拳銃に込める。


 シルクの瞳は、完全に獲物へ狙いを定めて逃がさない状態だ。




(中途半端は駄目だ…やるなら、真剣に)




 光属性の弾丸が一直線で放たれる。

 それは魔力測定器の中心に見事に命中し、直後に爆発音が響き渡った。


 衝突と同時に舞い上がった砂煙が魔力測定器を包み込んでしまい、頂上辺りに表示されているであろう数値が確認できない。



 煙が消えるまで待つしかないか、と軽く息を吐きながら武器を仕舞う。

 その後ふと視線をグレイ達の方へと向けると、シルクは困惑の意味で固まった。



 カネルの部下達全員が、武器を手にしようと構えた状態で動きを止めている。

 所謂、戦闘準備直前の体勢である。




「…お前達、武器を構えようとするのを止めろ」



 カネルは部下達に叱責するが、カネルも警戒しているのか冷や汗を流している。



 砂煙がはれていったことで表示されている数値が見えやすくなる。

 魔力測定器の頂上には、”五千百二十”と四桁の数値が記されていた。




 沈黙が数秒間訪れる。


 シルクは数値を確認してから、もう一度ゆっくりとグレイ達の方へと視線を移す。

 無表情ではあるが、心の中では焦りが渦巻いて混乱状態である。


 これまで自分の魔力がどれだけ高いのかを気にせず過ごしてきていたが、五千百二十とは何なんだ。

 本気の魔力をぶつけて六百以上が高得点、五百台で及第点と言われているのに対して、五千百二十とは何なんだ。


 実は小数点まで細かく表記されているんじゃないかと思いたいが、どう見ても小数点は無く見事な四桁。



 …もし、使い慣れている刀に魔力を込めて攻撃していたら、どうなっていた?




「シルク…」



 はっとシルクの意識が現実に引き戻される。


 グレイが真剣な表情で声をかけ、ゆっくりとシルクの方へと近付いていく。

 カネルと部下達はグレイの突然の行動に驚きの表情を見せながらも、警戒心は解かずにその場で固まったままだ。


 シャロンとミュスカも固まったままグレイの行動を様子見するが、段々呆れた表情へと変化していく。



 グレイの歩く速度が段々早くなっていき、どんどんシルクとの距離を縮める。

 研究中に一つの発見をして大喜びしている時のような、瞳を輝かせた無邪気な笑顔へと変化していく。


 突然グレイが急接近してきたと思えば目の前で立ち止まり、シルクは静かに驚きながら一歩後ろへと下がった。



「今のどうやってやったの?間近で見たいからもう一回やってもらっても良いかな!?」


「え」


「あんな膨大な魔力を小さな弾丸サイズ一つに収めて、と言うか圧縮させるなんて!拳銃ももう一回出してくれないかな、あんな魔力を込めたら暴発しても可笑しくないよ。やっぱり拳銃は魔力耐性が備えられた物なのかな?それにさっきのは光属性っぽかったけど、他の属性の魔法でも同様の事ができる?というかその指輪から拳銃が出てきたように見えたんだけどそれどうなってるの?ねぇねぇ、お願いだからもう一回さっきのやってみて!!」


「え、えっと」



 興奮気味に質問を繰り出しながら一歩ずつ前へと進むグレイと、一歩迫られる毎に一歩ずつ後ろへと下がっていくシルク。

 シャロンとミュスカは見ていられなくなり、急いで向かってグレイを引っ張るように止めに入った。




「先生!シルクさんにそうやって詰め寄るの何回目ですか、いい加減にして下さいよ!」


「止めないでくれたまえ!僕はさっきのを間近で見たいだけなんだ!!」


「さっきので十分魔力の強さは証明されただろ!てか間近で見たら下手したら吹き飛ばされるぞ!?」


「いざという時は魔法障壁を貼るから大丈夫だよぉぉ!!」




 グレイ達が騒いでいる様子をカネルはぽかんとした表情で見つめる。

 例え後ろ姿でも興奮している様子が伺えるため、部下達は引いている状態だ。



「え、えげつないねあの人」


「魔法植物だけじゃなくて、ちゃんと人でも興奮するんだな」


「今のグレイさんの顔を真正面から見たら…あ、無理ちょっと寒気がしてきた」


「…とんでもねぇ奴だな」




 カネルは呆れたように溜息を吐き、グレイの奇行を止めようと前へと進んだが、それと同時にグレイはシャロンとミュスカの抑制をすり抜けてシルクに向かって再び突撃しようとする。


 しかしその直後に衝突音が鳴り響いた。

 シルクの前には透明の魔法障壁、その魔法障壁にへばりついてずるずると地面へとずり落ちていくグレイ。



「博士、落ち着いてください」


「あ…相変わらず貼るのが速いねぇ」



 魔法障壁を解除すると同時にグレイは地面に顔面をへばりつける。

 シルクも溜息を吐いたが、寧ろ通常運転なグレイの様子に安心感を覚えてしまった。

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