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欠落万能屋は記憶を探求する  作者: 多津身 光
第三章:波乱な依頼
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72. 高い数値

 続いて挑戦するのは、はーいと元気良く手を挙げたペーシェ。

 背負っていた弓を手に持ち替えながら指定の位置へ立ち、何も持っていない方の腕をぐるぐると動かす。



「今日もしっかり栄養剤飲んだし、体調はばっちりだね。ど真ん中ぶち抜くぞ~」


「またいつもの栄養剤飲んでるのかよ…あんな身体に悪そうな色のやつ、よく飲めるよな」


「甘くて美味しいよ~?」



 身体に悪そうな色をしている栄養剤を想像したのか、ミュスカは顔を引き攣らせてジト目になる。

 隣でグレイが「どんな種類のを飲んでるんだろう」と呟いていたのが聞こえてしまい、ミュスカは止めてくれと言わんばかりの睨みをグレイに向けた。



 ペーシェは弓を構え、矢を持つ方の手を定位置に固定する。

 この時点で矢は手元にないのだが、意識を集中させると手元に魔力でつくられた物質が形成されていく。


 白く光る細長い矢が完成し、弦が引っ張られて矢が放たれる直前の位置で止まる。

 その後光属性の矢は放たれ、一直線で勢いよく魔力測定器にぶつけられた。


 魔力測定器の頂上で”八百十五”と数値が表示される。



「ああぁーっ!!少し位置がずれた、しかもレザンに負けたーっ!!」


「今回はレザンが高かったな。よし、ペーシェも合格」



 その場で地団駄を踏むペーシェ。

 魔力測定器の中央に当てようとしたのが外れてしまったのにも悔しがっているが、十分中央に近い場所に矢がぶつけられていた為、命中率は確実に高い方であるのが伺える。


 そしてやはり高い数値を叩き出しており、シャロンは段々自分の番が迫ってくるのが嫌になり、現実逃避するように遠い場所を見つめていた。




 続いて手を挙げたのは、控えめで恐る恐るとした動きのプラット。

 目の下には隈が出来ており、背筋は伸びているが表情は疲れて見える。



「次は俺が行くよ、後になればなるほどプレッシャーがやばそうだし」


「プラット大丈夫?栄養剤分けようか?」


「遠慮しとく…」



 プラットは前者の二人とは違って近めの定位置に着き、腰に下げていた筒状の棒を取り出す。


 意識を集中させると、筒状の棒の両端がぐっと伸びだした。

 元々存在していた筒状の部分が柄の一部となり、みるみるうちに槍へと姿が変化する。



「二人程の遠距離攻撃型ではないし、俺はどちらかと言うと至近距離の方がやりやすいからさ」



 呼吸を整えながら槍を構え、一呼吸間を置いた直後にプラットは動いた。


 力強く足に重力をかけたと思えば、あっという間に魔力測定器との距離が縮まる。

 一直線に突くように槍の先端が魔力測定器に直撃し、辺りに衝撃波と砂煙が舞った。



「間の詰めが速すぎません!?」


「そんで数値が…やっぱそうだよなぁ」



 ミュスカとシャロンは魔力測定器の頂上に視線を移す。

 数値は”八百五十三”と表示されていた。




「プラットも合格…順調だな」


「ありがとうございます」



 無事終えた事にプラットは安堵の息を吐きながら槍を仕舞う。

 合格基準として指定された数値を超えているのは勿論の事、終えた三人とも魔力消耗による疲れを一切見せていない。



 そして、四番目に前に出たのはアベルだ。

 武器は腰に携えている一本の刀。至近距離での攻撃となる為、プラットと同様の定位置に立ち止まる。



「さぁ、アベル君はどれ程の数値を叩き出すのかな?」



 グレイはアパートで測定した時の事を思い出しながら、興味津々でアベルを見つめる。

 シルクも静かにじっと様子を伺う。


 魔物討伐特攻隊の者は皆魔力が高い事が伺えられる。

 その中でも特に高く感じられたのはカネル、それに続いてがアベルだ。


 意識を集中させると同時に、その者の魔力がぐっと上がる。



 刹那、魔力測定器に甲高い衝撃音が響き渡る。

 氷属性の魔力が込められている為か、刃がぶつけられた辺りが軽く凍り、ばきり、と範囲を広げて魔力測定器の球面が氷の膜で覆われた。



 凄まじい魔力の流れを感じ取り、シャロンとミュスカは固まった状態で瞬きも出来ずにいる。

 グレイはひゅうと口笛を吹いてみせるが、頬に一筋の冷や汗が流れ落ちた。



 魔力測定器の頂上には、”千十七”という四桁の数値が表示される。




「アベルも合格だな…よし、次は誰がやるんだ?」



 カネルは爽やかな笑顔でグレイ達に順番を促す。

 そんな中でシャロンとミュスカは小刻み気味に顔を横に震わせて顔を青ざめさせていた。



「いやいやいやいや、この後にやるのはハードルが高過ぎるっての!」


「安心しろ、君達はまだ学生で発展途上なんだ。数値は気にしなくて大丈夫だ」


「それでもあんな高い数値を叩き出された後っていうのが…!」



 互いに顔を見合わせて慌てる二人の様子を、ペーシェ達は懐かしむような笑顔で見つめている。



「若くて良い反応だねぇ、学生時代を思い出すよ」


「そう緊張しなくて大丈夫だぞ二人とも。俺達だって学生の頃はまだまだ未熟者だったし、びしばし鍛えられれば魔力も高まる」


「今は変に無理しすぎない方が良いんだよ、まぁ…気楽にな」




 励ましの言葉が続く中、アベルも口を動かして一つの提案を挙げた。

 あくまでも素直に思ったことであり、全く悪気の無い言葉だ。



「なら、先にグレイさんが測定すれば良いんじゃないか」


「おや、僕をご指名かい?」




 ミュスカとシャロンはぴしりと固まる。

 グレイも十分高い魔力を保持していることを承知しているが故に、更にハードルを上げられた気分に襲われた。


 カネルは片手で口元を隠しながら震えるように笑いを堪え、勿論良いぞと言わんばかりに親指を立てた。



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