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欠落万能屋は記憶を探求する  作者: 多津身 光
第三章:波乱な依頼
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69. 遭遇

 部下の三人はげっそりとした様子でテーブルに突っ伏し、彼等の背後でグレイは腕を組んで首を傾げた。



「そんなに逃げなくても良いじゃあないか、悲しくなるねぇ」


「そんなの心から思っていないだろうあんたは!」


「僕本当この人嫌だ」


「隊長ぉ…今日は大事な予定があるとは聞いてましたけど、この人が来るならちゃんと言って下さいよ!」


「いやぁすまんすまん、だがグレイの名前を出したら皆逃げ出しちゃうだろう。皆には是非いてもらいたかったからな」



 カネルはそう言いながら軽く後ろに振り向き、視線の先にはシルクの姿。


 自分なりに気配を消そうと静かにしていたのに、とシルクは軽く肩を揺らせ、そっとシャロンとミュスカの背後に移動する。身長の高さから全く隠れられていないのだが。


 部下三人はシャロンとミュスカの事も知っているのだが、見かけない人物がいる事に気付いて一斉に視線をそちらに向ける。


 シルクは軽く伏し目になり、そのまま会釈をする。

 部下のうち一人が若干上擦った声を上げながら目をぱちくりとさせた。



「ど、どちら様でしょうか!?」


「わぁ、レザンったら顔が真っ赤だよ」



 レザンと呼ばれる男は驚きながらシルクの方を見るも、直ぐに視線を逸らしてそのまま泳がせた。

 みるみる顔は赤くなり、緊張しているのかどんどん汗が流れていく。


 突然の反応にシルクは静かに困惑し、何か不快な思いをさせてしまったかと思うと、眉を下げて申し訳なさそうに肩を縮こませる。



「気にしなくて大丈夫ですよ、レザンさんは女性と話すのに慣れていないんです」


「相変わらずだよなぁ、いい歳してんだからいい加減慣れろよ」



 シルクの前に立っているミュスカとシャロンがさり気なくフォローを入れる。

 そんな二人の言葉に反応し、レザンは顔を真っ赤にしたまま人差し指を向け、再び上擦った声を上げながら口を開いた。



「余計なお世話なんだよ!い、いつかは慣れるっての!」


「そのセリフ何回目だっけ?」


「ペーシェは一旦黙ってろ!」



 にやにやと揶揄うような笑みを浮かべながら隣に寄ってきたペーシェと呼ばれる男に、レザンはきっと睨みを向ける。



「はいはい喧嘩はそこまでな。なぁプラット、アベルが何処に行ったか分かるか?」


「アベルなら追加の報告書を上に持って行ってます」



 カネルに声をかけられたプラットと呼ばれる男は、疲れた表情のままそう答える。


 グレイは残念そうに肩をすくめ、えぇ~、と脱力するような声を漏らした。

 それに過剰に反応するように、部下三人はびくりと肩を揺らす。




「アベル君にはまだ語れていない事が沢山あるから、会ったら沢山お話ししようと思ってたんだけどなぁ…まぁ仕方が無いか。何度聞いても絶対飽きないだろうからさ」



 グレイは満面の笑みを浮かべて三人を見下ろす。

 これまでグレイから魔法植物について散々語られ時間を拘束された経験のある者達は、怯えた仔犬のように身体を震わせて顔を青ざめさせる。


 このような反応をされるまで一体どんな語り方をしたのだろうか、とシルクは静かに考えながら様子を伺う。

 カネルは呆れたように溜息をついてグレイに近付き、制するように肩に手を置いた。




「部下にちょっかいを出すのは此処までな。ほら、例の機械はこの部屋の奥に保管してある」



 会議室内の奥に更に部屋が続くであろう扉が設置されており、その先は倉庫として扱われている。

 少し待っていてくれ、とカネルが倉庫の部屋に入っていき、出てきた時には両手に収まる程の大きさの箱型の機械が手にされていた。


 箱型の機械はテーブルに置かれ、それを囲むようにグレイ達が近付く。




「思ったよりも…小さいんだな」


「僕ももっと大きい機械を想像してました」



 シャロンとミュスカはまじまじと機械を見つめ、触れるか触れないかのところで手を止めては、結局触れずに手を引っ込める。

 シルクはそんな二人の後ろからその機械をじっと見つめる。



 見た目はシンプルな箱型の機械。

 側面には小さなスイッチのような突起があり、そこを押すとかちりと音が鳴ると同時に引き出しのように更に小さな箱が出てくる。

 その中には筒状の機械が入っていた。



「この筒状の物が魔力を貯蔵できる機械で、これを箱状の機械に入れる事で魔力を放出させるのが可能になる。放出量の調整も出来るんだとよ」



 スイッチがある側面とは反対側の側面にも別のスイッチがあり、そこを押すと突然上面が開いて、覗き込むように見ていたシャロンが驚いた声を上げた。


 開いた上面から細い棒状の機械が飛び出し、からくりの様にカチャカチャと音をたてながら形が成されていく。

 最後には花が開くようにラッパ状の形に整い、蓄音機のような見た目に変化した。



「ここから魔力が放出されるんだな。クロテッド社長んとこの開発部って本当色んなのを創ってるよな」


「すげぇ、最初は只の箱みたいな見た目だったのに…」


「持ち運びを考慮しての構造なんだろうねぇ」



 各自が興味深そうに機械を見つめ、シルクももう少し近くで見てみようかとゆっくりテーブルに近付こうとする。


 そんな時、背後から扉が開く音が響いた。

 直ぐに振り返ったシルクは一瞬強張る様に固まった。



「…只今戻りました」




 報告書の提出を終えたアベルも、驚くように目を見開いていた。

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