63. 魔力測定器
「僕が目を覚ました時にはシャロンとミュスカもちゃんと開花できてたみたいでね。二人とも結構ポーションを飲んだみたいなんだけど、数時間で開花させられたんだから、二人ともちゃんと成長したんだなーって感動したよ。まだまだ伸びしろがあるから、これからも頑張ってほしいなぁ~。あ、勿論その後ピュアポトスを取り囲むように光を当てて実験してみたんだけど、予想通りで数値が上がったんだよ。一週間通して数値を測定して、継続して十分な酸素を放出させられることが証明できたのさ」
グレイはその後も得意げな表情で説明を続け、パナシアンベリーの栽培過程を説明し終えたところで、何か質問はあるかい、とカネル達に訪ねる。
パナシアンベリーの栽培はこれまで事例が無く、実際にやってみないと分からない。
その為過程については説明通りで良しとして、兎に角気になっている事を質問することにした。
「栽培についての異論は無いが、魔力を注ぎながらと言うところだな…常に魔力を注いでいく必要があるが、まさかシルクさん付きっきりで行うんじゃないだろうな?」
「魔力を貯蓄できる装置があるだろう、それを借りてシルクには予め魔力をその装置に補充してもらう。定期的に補充してもらう必要があるからそれなりに拘束させてしまう事になるけど、最低限で収めるにはそうするしかないね」
「…装置を使用せずとも、私は付きっきりでも構いませんよ?」
「流石にそれは過酷でしょ。魔力が多いとしても、ふとした時に倒れちゃったら大変だ」
シルクは軽く首を傾げる。
実際に魔力切れで倒れたことはこれまで経験したことが無い為、そこまで心配しなくても良いのにというのが本音である。
しかしこれはシルクの体質によるものであり、一般論では通用しない。
シルクのきょとんとした様子に我慢ならなくなったのか、アベルは率直な疑問をぶつけた。
「あんた、本当に只の魔法使いなんですか」
「只の魔法使いです」
シルクは無表情のまま素直にそう答える。
アベルは納得できないと言わんばかりにシルクを凝視する。
「僕も君の事が気になって仕方が無いね。膨大な魔力を必要とするヘリオスフラワーでさえも平然と開花させるなんて、君の魔力はどれくらいなんだ?」
「…分かりません、測ったことが無いので」
「まぁまぁ、そんなにシルクを睨まないでくれよ」
シルクは視線を下に逸らしながら少し肩を竦める。
グレイは冷や汗を流し、どうしたものかと頭を悩ませた。
そこで、カネルは手持ちの鞄に手を突っ込みながら何かを探し出した。
「なら丁度良い、これを機に測定してしまおう」
鞄から取り出されたのは小型の機械。
相手の魔力を数値化することが出来る魔力測定器だ。
「魔物の魔力量を測定する時によく使うんだが、勿論人にも可能だ。試しに…ほら」
カネルはグレイの額に測定器をかざす。
機械から音が鳴り、画面には五百十八と数値が表示された。
「どれくらいの数値が出た?…五百十八か~」
「十分すぎるっての。四百を超えた時点で十分高い魔力量だ、部隊長を任せられるレベルだな」
「えぇー、僕運動系じゃないからパス。ちなみにカネルは今どんな感じ?」
カネルも自身に測定器をかざすと、画面には五百六十三と表示される。
続いてアベルにもかざされ、四百二十と表示された。
「優秀な部下じゃん、君も将来は隊長だね」
「だろ、自慢の部下だぞ」
「俺の事はいいんで…彼女も測定してください」
「…お願いします」
カネルは期待に満ちた表情でシルクの額に測定器をかざそうと手を伸ばす。
シルクも実際の数値を知らない為、素直に身体を前に傾ける。
グレイとアベルは緊張した様子でその様子を見守る。
そして測定器から音が鳴るが、画面に表示されたのはエラーの文字。
カネルは軽く目を見開いて固まった。
「…少し設定を変えて測定してみようか」
測定器を操作し、再びシルクに向かってかざす。
しかし今回は額ではなく、手元に向かって。
「機械に向かって魔力を注ぐ感じで手をかかげてくれ」
「分かりました」
シルクは測定機に触れるか触れないかの距離で手を留める。
測定器のスイッチを押し、再び測定が開始された。
画面には無事数値が表示されるも、数値は少しずつ上がっていく。
四百、五百、六百…どんどん上昇していき、グレイ達はつい息を止めたまま画面を凝視してしまう。
「嘘だろ…」
アベルはつい本音を零してしまう。
カネルとグレイも固まって見守り続けるが、シルクは位置的に画面が見えておらず、相変わらず無表情のままできょとんとしている。
そして、測定器から音が鳴り響いて数値が固定された。
九百九十九とカンストしてしまっている。
具体的な数値はこの測定器では表示されないようだ。
「これは小型じゃなくて大きい機械で測定した方がいいやつだな」
「ねぇねぇ、もし本気の魔力をこの機械にぶつけたら壊れちゃう?」
「これはぶつける専用の機械じゃないから駄目だ」
カネルは苦笑いしながら測定器を鞄に仕舞う。
グレイは若干興奮気味でシルクの方を見て瞳を輝かせている。
詳しい数値について分からなかったことにシルクは少し残念そうに眉を下げていた。
(何者なんだ此奴…)
そんなシルクに対し、アベルは再び警戒するような視線を送っていた。




