Chapter25:魔眼と罪人
果てしない星空の中で、楓奈は苦しそうに体を丸めていた。
彼女の両手は必死に頭を抱え、指の関節は力んで白くなり、喉の奥から引き裂かれるような悲鳴を絞り出していた。
「楓奈!」
星動が駆け寄った。
彼は楓奈が狂ったように自分の髪を引きちぎろうとする手首を力強く掴み、自傷行為を止めようとした。
「楓奈、どうしたんだ?」
至近距離で、星動は見た:
楓奈の、元は澄んでいた赤い瞳の奥深くに。
凝固した血液のように深紅の光線が、生きた、貪欲な蠕虫のように、眼球の内部でゆっくりと不気味に蠢き、齧りついていた。
「ああああああ――!!!痛い!痛い!!痛い――!!!」
楓奈の顔の血管が浮き上がり、両目には恐ろしい血走った筋が張り巡らされていた。
彼女は驚異的な力を爆発させ、必死にもがき、爪で自分自身の激痛に歪む目を掻きむしろうとした。
「ふふ、しっかり掴んでおいたほうがいいぞ。
さもないと本当に自分の眼球を抉り出しちゃうからね」
あの不気味な黒いマントが、星動のそばにひっそりと漂い寄った。
「この化物め!楓奈に何をした!」
星動は片手を離し、無形の引力場で楓奈の狂乱した腕を縛ろうとした。
しかし楓奈はさらに苦痛に満ちた唸り声をあげ、あっさりと引力の束縛を振りほどいた。
彼女の指が自分の眼窩へと曲がりかけた。
星動は肝を冷やし、すぐに両手で楓奈の手首をがっちりと掴んだ。全身の力で彼女を自分の顔から引き離す。
「なぜだ?なぜ引力で制御できない?」
「おや?これはわしが彼女に授けた『魔眼』のおまけ効果さ。彼女の体を完全に魔力化させるんだ。そして魔力そのものは引力と同様、時間と空間の次元を超越した存在だからな」
「魔眼?どういう意味だ?」
「これが彼女とわしが取引した内容だ。
魔眼は彼女が世界の根底にあるルールを見抜き、『存在』に対する理解を大幅に増強する手助けとなる。心配するな、副作用は一切ない」
「この卑劣者め!今すぐそれを解除しろ」
「解除しないよ。君は当事者じゃないし、わしを倒そうだって無理だ。今君にできることは、君の小さな恋人を制御して、苦痛で自分の目を抉り出さないようにすることだけさ」
黒いマントは星空に溶け込むように消え去った。
「楓奈…」
星動はうつむき、腕の中で今なお激しく震え、苦痛で顔を歪め、叫び声は嗄れて砕けた少女を見つめた。
「大丈夫だ…大丈夫だ…全部僕のせいだ。
あんな風に君を追い詰めるべきじゃなかった。楓奈、頑張れ。
僕はずっとそばにいる」
苦痛の耐え難い時間が流れ、まるで凍りついたかのようだった。
楓奈の悲痛な悲鳴は次第に弱まり、最終的には砕けた、破れた鞴のような喘ぎだけが残った。
彼女の目の中のあの深紅の「蠕虫」は相変わらずゆっくりと伸び、輪郭を描き、繭から蝶へと変わるのを待つ蛹のように、不気味で残酷な美しさを帯びていた。
ついに、その魔眼の中の深紅の魔法陣が完全に形を成し、最後の神秘的なルーン文字の輪郭を描き終えた瞬間。
ブーン――
楓奈の両目が突然まばゆい赤い光を放った。
瞳孔の中の完成した深紅の法陣が高速回転を始め、縁には虚ろな、燃え盛る炎が立ち上った。
法陣が完全に活性化すると共に、楓奈の顔にあった極度の苦痛の表情は急速に消え去った。
彼女の張り詰めた体は突然緩み、全ての力を使い果たしたかのように、長いまつげが数度震え、ゆっくりと目を閉じた。
そのまばゆい赤い光も収束し、法陣が閉じた瞼の下にかすかに光る微かな輝きだけが残った。
「楓奈……?」
星動が慎重に呼びかけた。
呼びかけを聞いたのか、楓奈のまぶたが微かに動いた。
彼女はゆっくりと、目を開けた。
もはや見慣れた赤い瞳ではない。
今、彼女の両眼にはまるで燃え盛る二つの小さな太陽がはめ込まれているようだった。深紅色の、目眩がするほど複雑な円形の法陣がその中でゆっくりと回転し、縁では実体化した、恐ろしい熱気を放つ炎が跳ねていた。
視線の届く先では、空間さえもわずかに歪んでいるようだった。
「あたしは…見えた…全てを」
楓奈の声は波一つない、太古から変わらぬ氷のように、しかし万物を看破する貫通力を帯びていた。
次の瞬間。
深遠な、縁が暗紅色のルーン文字で回転している魔法のブラックホールが、前触れもなく彼女の背後に瞬間的に開いた。巨獣の口のように、瞬時に彼女を飲み込み、姿は跡形もなく消え去った。
「楓奈!」
星動は辺りを見渡し、感知を働かせたが、楓奈の気配の一片すら捉えられなかった。
「彼女はどこへ行ったんだ?!」
「わしにわかるか?彼女が自分で転送したんだ」
星動は怒りに燃え、まさに爆発しようとした。
サッ
同じ場所に、あの暗紅色の魔法のブラックホールが再び音もなく開いた。楓奈の姿はまるで一度も去ったことがなかったかのように、静かにその中から現れた。
「楓奈。どこへ行っていたんだ?」
星動が駆け寄り、両手で彼女の肩を掴んだ。
楓奈は何も言わず、静かに手を上げ、一枚のバッジを星動の広げた掌の上にそっと置いた。
そのバッジは盾形で、全体が黄金のように煌びやかであり、はっきりと三つの星が互いに輝き合う図案が刻まれていた。
「これは?」
「さっき魔法協会に行って、魔力と職業の試験に合格した。今、あたしは三百レベルの魔法使いだ」
「三百レベル?三千の魔法職業を習得したのか?」
「ああ」
星動は彼女の終始平静な顔をじっと見つめ、思わず手を伸ばして楓奈の冷たい頬にそっと触れた。
彼の指先が肌に触れた瞬間、楓奈の平静な表情にようやく微細な動揺が現れた。
彼女は避けず、むしろほんの少し顔を傾け、自分の頬を星動の温かい掌により深く、より従順に寄せた。その動作には、疲労困憊した依存感が込められており、
まるで猫のようだった。
彼女は何も言わず、長いまつげを伏せて、まるで本当に眠りに落ちたかのようだった。
「楓奈……」
「あたしたち…家に帰ろう」
彼女は手を上げ、そっと指を鳴らした。
見慣れた暗紅色の魔法のブラックホールが再び現れ、彼女と星動の姿を優しく包み込み、浩瀚な星空の中に消え去った。
楓動町、不思議家の玄関先。
一葉と改守は二体の彫像のように、魔法のブラックホールが現れるのを待っていた。
「楓奈」
一葉が駆け寄り、娘をぎゅっと抱きしめた。
「お母さん、心配で死にそうだった。お母さんに約束して、これからは黙って出て行かないでね、いい?」
楓奈は相変わらず沈黙していた。彼女は答えず、ただ従順に燃える魔眼の両目を閉じ、額をお母さんの肩にそっと寄せた。
「星動君、いったい何があったの?」
「僕……すぐには説明しにくいけど、楓奈は今のところ大丈夫そうだ」
そうは言いながらも、星動の視線は楓奈から離れなかった。
彼は鋭く感じ取っていた。
楓奈の身に、何かが変わったのだと。
翌日。
「楓奈。大丈夫か?」
修道女の声は焦りに満ち、視線は楓奈、特にあの不気味な法陣を燃やす魔眼に釘付けだった。
「元気です、師匠」
修道女の鋭い視線が魔眼を入念に調べるにつれ、顔色はますます険しくなった。
「これはどういうことだ?」
「これは『不思議不可知不動の深紅の魔眼』です」
楓奈の答えは平静だった。
修道女は楓奈の周りを一周した。
「これは危険すぎる。わたくしが取り除いてやろう」
「結構です」
「必ず取り除かねば」
「結構だと言ってるでしょ!」
深紅色の魔法の光線が楓奈の魔眼から激しく射出され、修道女が印を結んでいる両手に絡みついた。
修道女の手に凝集された浄化魔法は、その赤い光に無理やり握りつぶされた。光の破片が四方八方に飛び散った。
この光景に、その場にいた人々は呆然とした。
「君…」
修道女は自分の空っぽの両手を見つめ、楓奈の燃える魔眼をじっと見据えた。
「…一万の職業数を達成したのか?」
「一万?」
星動は楓奈を見た。昨日、彼女はやっと三千レベルに達したばかりだった。
自分の態度が過激すぎたことに気づいたのか、楓奈の目に一瞬の後悔が走った。
彼女は疲れたように手を振り、声を低く落とした:
「あたしが言いたいのは、皆さんはあたしにそんなに良くする必要はないということです」
「君はわたくしの弟子だ」
「ありがとうございます、師匠……」
楓奈は横を向いた。
「でも……あたしはあなたの弟子になる資格はありません」
そう言うと、彼女は振り返って自分の部屋に入った。
一葉がついて入ろうとしたが、ドアがびくともしないことに気づいた。
無形の魔法封印が、ドアを封鎖していた。
「彼女が魔法封印をかけた。わたくしが解こう」
修道女はドアの前で座禅をかいて座った。
一日一晩が過ぎても、その封印は相変わらず堅固だった。
「これは彼女が独自に開発した魔法体系だ。時間がかかる」
解読作業はすぐに緊急事態で中断された。
「北西部に『魔王の手』が出現した。あたしはすぐに戻って指揮を執らねば」
「『魔王の手』?」
一葉が心配そうに言った。
「ああ。魔王が……復活した。最初の一撃で、半径三光年の国を消し去った」
「…」
「北方氷山王国はすでに全世界に警告を発した。
今や全面戦備態勢に入っている。
各国の勢力は緊急で結集している。
わたくしは夢神教の代理人の一人として、戻って指揮を執らねばならない。
どうしようもない。星動、楓奈を頼んだぞ」
「はい」
「ご武運を」
四日目、修道女は去った。
五日目、魔王復活と壊滅的な攻撃のニュースが遅れてこの町に届いた。
恐慌が暗雲のように、全ての住民の心を覆った。伝説では魔王が全盛期の時、片手で半径十個の『魔力限界』の領域を消し去ることができた――それは百億光年という恐ろしい範囲だ。
その力の前では、人間と蟻の差さえも取るに足らないものに思えた。
星動、改守、一葉の三人は、この世界を席巻する災害に気を取られる余裕はなかった。
彼らの心は、その閉ざされたドアにしっかりと縛られていた――まる一ヶ月が経った。楓奈は一度もドアを出なかった。
星動は封印を解こうとした。
外界からは悪い知らせが絶えず届いた:
「北西部。黄金騎士が黄金騎士団を結成し、魔王に対抗」
「魔王の幹部が動いた。『一魔力限界』の領域を持つ強大な公国が滅亡」
「水晶の勇者様が極北の氷河で、魔王の幹部の片腕を斬り落とす」
「北方氷山王国が最高の連合呼びかけを発出。大陸の全ての勢力に遺恨を捨て、連合を結成するよう呼びかける」
「水晶姫、すなわち勇者様が、現在『勇者隊列』のメンバーを公募中」
二ヶ月目、凶報が届いた:
「北西部……全域陥落。全地域が魔域と化す」
「魔王配下の四大幹部、北西魔域の四隅を鎮め、四本の世界を鎮める魔柱のごとし」
「黄金騎士団が血戦を繰り広げ、難民の波が北部地域へ撤退するのを護衛……」
三ヶ月目。
「楓奈…楓奈…」
一葉がドアの前で跪き、
「お願いだ、ドアを開けてお母さんに一目会わせておくれ」
改守がそばに立ち、胸を激しく上下させ、目には怒りと心痛が満ちていた。
「楓奈。お前は今何をしているんだ?お母さんを泣かせておいて。皆にお前のことを心配させておいて。どんな天が崩れ落ちるようなことがあって、話せないんだ?皆で一緒に解決策を考えられないのか?」
「戻ったよ、改守さん」
「星動君」
「先生が急いでこれを届けてくれた」
星動が階段から上がってきて、手のひらを広げた。
そこには一本の真っ黒な大きな釘と、同じ材質でルーン文字が刻まれた槌が載っていた。
「今は魔王が復活し、戦況が緊迫している。
彼女はどうしても抜けられず、これだけを送ってきた」
星動は楓奈の部屋のドアの前に歩み寄った。
彼は真っ黒な大きな釘の先端をドアに向けて浮かせ、ルーン文字の槌で釘を一度叩いた。
ガラスの割れるような鋭い音が突然鳴り響き、星動は手を伸ばしてドアを押し開けた。
「楓奈!」
部屋の中は荒れ放題だった。
散らばった本、紙、砕けた器…まるで嵐に襲われたかのようだった。
楓奈は入り口に背を向け、無言で部屋の中央の床に跪いていた。
星動が一歩飛び出し、震える両手で楓奈の肩を支え、彼女を振り向かせて、彼女の顔を見た:
楓奈の顔には、縦横無尽に走り、新旧入り混じった恐ろしい血痕が刻まれていた。
それらの傷は明らかに爪で自ら深々と掻いたものだ。一部はかさぶたができて暗くなっていたが、一部はまだ新鮮な血の滴を滲ませていた。
あの深紅の法陣を燃やし、縁に炎が跳ねる魔眼は、相変わらず人ならざる光を放っていた。
しかしその光の奥深くで、星動が見たのはただの陰りと虚無だった。
楓奈の乾いた唇が微かに動き、嗄れて砕けた声を発した:
「あたしは…罪人…」




