Chapter12:己心の魔
「最近、悪夢が頻繁に見えているそうじゃな?」
「はい、師匠。だからずっと、あたし、何かの呪いにかかってるんじゃないかって疑ってたんです」
「呪いはさっきわたくしが確認した通り、かかっておらぬ。しかし、お前のような状態を引き起こす別の可能性があることを知っておるか?」
楓奈は首を振った。
「『己心の魔』じゃ」
「それって何ですか、師匠?」
「魔力士は、心やその他の身体感覚を使って魔力を感知する。
ゆえに心もまた、魔力の影響を常に受けるものじゃ。
もしお前の心の中に、深く影響を及ぼす負の感情が潜んでおれば、魔力の影響によって、それが次第に成長し、毒素となり、病となり、弱点となる。
時を置かず解決せねば、自身の魔力レベルが増すにつれ、その負の感情が生物へ、命へと進化し、お前の養分を吸い取りながら自らを肥大化させ、寄生生物のようになることもありうる。
そうなれば根絶は困難じゃ。半条分の命を失うかもしれぬ」
楓奈の小さな顔が雑巾を絞るように強く歪んだ。
「それゆえ、わたくしはお前に、心の内にある鬱屈を、できる限り話してほしいと願う」
「……うん」
楓奈は黙り込み、長い間言葉を発しなかった。
修道女はため息をついた。
「星动君はこのことを知っておるか?」
「彼は……知ってる……いや、知らない……」
楓奈の小さな顔には困惑の色が浮かんだ。
「知ってるのかしら……」
「お前自身も確信が持てぬと?」
楓奈は悩ましげに自分の頭をかいた。
「ごめんなさい、師匠。
たぶん……あたし自身も、はっきり覚えてないことがあるんです」
修道女は複雑な表情で楓奈を見つめ、呟くように言った。
「……もしかすると、この問題はわたくしの思うよりずっと深刻かもしれぬ」
「なんですって、師匠?」
「お前は……わたくしに、その問題について占ってもらう気はあるか?
占いを立ててみよう」
「あ、あの……師匠は起きたことを見られるんですか?」
(占い? やばい、過去のことを占われたら、師匠に転生者のことがバレちゃう?)
「それは見えぬ。
わたくしはまだ占術に関する高度な術を修めておらん。
どうやらお前も占い術に誤解があるようじゃな。
覚えておけ、占い術は未来や過去の情景を直接見せるものではない。
比喩的な形で示されるものじゃ。
かつてわたくしが北方氷山王国の占い師協会会長に、わたくしの未来の弟子を占ってもらった時、彼女が見た映像は、白い一輪の花が紅葉した楓の林の中に落ちるものだった。
ゆえにわたくしがお前のために立てる占いも、ぼんやりとした比喩を垣間見るだけにすぎぬ。
その比喩の意味をわたくしが必ずしも理解できるとは限らん。お前自身に教えてもらわねばならぬこともあるだろう」
「そうなんですか、師匠。
それじゃあ……お願いします」
「よろしい」
老いた修道女は再び右手の親指と中指を合わせ、他の指を軽く曲げて印を結んだ。
彼女の掌に白い魔法の符文が一瞬光る。
一年前に彼女が修道女に星动を占ってもらった時と全く同じように。
「師匠、どうでしたか?」
「具体的な映像については後で話そう。
しかし、はっきりと感じ取れたのは、この問題の根源はお前自身の中にあるということじゃ」
「そ、そうなんですか……?」
「わたくしはお前がそれを口にすることを望む」
「あたし……」
「無理をせんでよい。
まずは、話しても大丈夫だと感じられることから、試しに話してみるのはどうじゃ?」
楓奈が顔を上げると、赤い瞳が修道女の銀白色の瞳と見つめ合った。
その眼差しが、もしかしたら彼女に勇気を与えたのかもしれない。
「あたし……すごくひどいいじめを、受けていたことがあるんです。
その記憶が根を張ったみたいに、ずっとあたしを縛りつけて離さないんです」
「うんうん」
「いじめられた時の断片が、消えない幽霊みたいにいつも心の中をぐるぐる回ってる。必死に思い出したくないのに、思い出さないようにすればするほど、頭が勝手に何度も何度もあの場面を再生しちゃうの」
「うんうん」
「それで……恐ろしい悪循環になってるんです。すごく睡眠の邪魔になってて、あたし、力が全部抜けちゃったみたいで、気持ちもすごく参ってるんです」
「うんうん」
「……だいたい、そんな感じです」
「よろしい。では、まずわたくしからいくつか質問をしてもよいか?」
「はい、師匠。お尋ねください」
「お前のその経験の中で、お前の両親は、どのような役割を果たしておった?」
(どう答えよう?
前世の親は確かに悪い方だった。
彼らが放棄した態度が自分の苦しみを招いた。でも今世の両親は明らかに違う。
パパもママも自分にすごく優しい。
でもそれをどう言えばいいの?)
「彼らは……知らない役割、を果たしてたと思います」
「彼らには話さなかったのか?」
「ママの前で感情が崩れちゃったことはあります。でも……彼女は、深い理由までは知らなかったんです」
「なるほど。では、お前がいじめを受けている時、その場には、守るべき立場の者が他におらなかったか? 例えば教師や、管理者のような者は?」
「……いました」
「彼らは何をした?」
「彼らは……見て見ぬふりを選びました」
「つまり、お前がいじめられるのを見ていたと?」
「はい。あたしがいじめられるのを見ていました」
「わかった。つまり、あの時、最初から最後まで、お前に道を示したり、庇ったりする役目を担う者も現れなかったということじゃな?」
「はい」
「よろしい。では次の質問じゃが、これは少々深く、お前の心の触れたくない部分に触れ、もしかするとお前を冒涜されたと感じさせるかもしれぬ。
しかし楓奈よ、わたくしはそれでもお前が答えようとしてくれることを望む。
できるか?」
(師匠、そんな風にわざわざ言わなければ、もしかしたら答えられたかもしれないのに……)
楓奈のこめかみに細かい汗がにじんだ。
彼女は手を上げて、指で額の汗をぬぐった。
「師匠……お尋ねください」
「よろしい。わたくしが尋ねたいのは……お前がこの苦難を経験している間、お前自身は……何か間違ったことをしたか? ということじゃ」
(苦難……間違ったこと?)
その問いが稲妻のように走り、楓奈に何かを気づかせた。
彼女は深い思索に沈んだ。
(あたし……何か、わざと忘れてたものがある? 何を忘れてたんだろう?)
修道女は静かに楓奈を待った。しかし修道女に返ってきたのは、息が詰まるほど長い沈黙だった。
部屋には楓奈のますます速く、ますます苦しげな呼吸音だけが響く。
彼女はうつむき、ぎゅっと組み合わされ、指の関節が白くなった小さな両手を、まるで絨毯に穴を開けるほどに凝視していた。
修道女は急かさず、焦りも見せなかった。
彼女はただ静かに座り、風雪に耐えながらなお堅固な山々のように、ほとんど凝結したような忍耐力をもって、楓奈が心の中の嵐を抜けるのを待っていた。
時が刻一刻と過ぎていき、何世紀もの時が流れたように感じられた。
「……あります」
「お前は何をした?」
楓奈の息がガクッと詰まった。
まるで見えざる手が喉を締めつけたかのように。
(あたしが……あたしが何をした? 何をしたんだろう……?)
楓奈の脳裏に、悪夢の中で見た血まみれの顔がよぎった。
「あたし……あたしは……一つの……命を……台無しにしました」
「その後は?」
嵐。
やむことのない嵐。
その巨大な嵐が、まるで楓奈の目の前に現れたかのようだった。
「その後……あたし……天に……逃れる道を求めました。それで……あたしは、あたし……」
彼女の呼吸が突然、溺れかけた人間のように、窒息寸前の荒さになった!
巨大な恐怖と自責の念が一瞬にして彼女を捕らえた!
楓奈はソファから飛び起き、修道女に向かって深々と、ほとんど慌てふためくようにお辞儀をした。
「ごめんなさい師匠! あたし……これ以上は言えません! 本当に言えないんです!」
修道女はすぐに首を振り、顔には非難の色は微塵もなく、深い憐れみと理解だけがあった。
「構わぬ、楓奈よ。
お前はもう、本当に、本当に勇敢じゃった。
ここまで話せたことだけでも、大変なことじゃ」
「今日のお前への尋問は、ここまでにしよう。わたくしが安らかな眠りを得られる呪文をかけてやろう。今夜は少なくとも、悪夢に邪魔されずに安らかに眠れるじゃろう」
「ありがとうございます、師匠……」
「礼を言うことはない。師として当然のことをしただけじゃ」
修道女が右手を空中で優雅に一撫ですると、まるで無形の空気から何かを掴み取ったかのようだった。
次の瞬間、小さなガラス瓶が彼女の掌に忽然と現れた――中には澄んだ聖水が入っている。
彼女は栓を抜き、数滴のきらめく液体を、開いた左手の掌にそっと注いだ。
続けて、彼女は右手を上げ、人差し指と中指を揃えて、その清涼な聖水を浸した。
彼女は楓奈に近づき、聖水を帯びた指を楓奈の滑らかな額に当て、符文を描き始めた。
指先がほのかな冷たさを帯び、肌に濡れた軌跡を残しながら、奇妙な静けさをもたらす。
その静かな描画の最中、楓奈は固く閉じた目を微かに震わせ、躊躇いの末、ついに勇気を振り絞って、かすかな声で尋ねた。
「師匠……占いの中で見た、あたしの『問題』について……具体的にどんなものだったか、聞いてもいいですか?」
「わたくしは見た。お前が果てしない闇の中を歩く姿を」
「お前の両足が、無数の鋭く絡みつく茨にぎゅっと縛られておる」
「動けぬままじゃ」
その光景に楓奈の胸が締めつけられ、思わず問い返した。
「その茨は……どこから生えてるんですか?」
ちょうどその時、修道女が最後の一筆を描き終えた。
彼女は指を引き、半歩後ろに下がり、まだ幼さの残る、本来なら無邪気であるはずの楓奈の可愛らしい小さな顔を見つめた。
「その茨は……お前の顔から生えている」




