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前夜暗闘4



「探し物をすると言っても、この広い極刑城では捜索場所を絞るのは難しそうだけれども」


 僕の言葉に対して、無表情な彼女はこちらを見ながらダブルピースをする。突然のことで僕はフリーズする。止まっている僕をよそに、あっさりと彼女の言葉が続く。

「それは大丈夫。あの怪盗の部屋には、合鍵で既に入ってみたのだ。けれど、彼の荷物はこじんまりと机の上に置いてあったし、部屋中を探し回っても何も無かった」


「他の場所は確認したのか?」


 彼女はダブルピースをやめると、親指を立ててグットポーズを取る。


「怪盗は私の物を盗んだ後に常に誰かと行動を共にしていたんだ。私の後には永遠とわ、その次にキズキ、次に催馬楽古楽と食に飛び渡る飛蝗のように順々にな。最後に風呂に入ると言って去ってからは曖昧だ」


「あぁ、その時間は僕が埋めることが出来るかもしれない。彼と風呂場で遭遇して、少しばかり話をした」


「そうかでは残された場所は一つだな」


「彼が盗みに入った部屋か」


「最後に彼が訪れた四罪ヶ楽王断がかつて使っていた部屋。実に興味深い」


 確かに興味深かった。四罪ヶ楽王断が使っていたと言う情報による価値は十分だけれど、加えて僕にとっては心の内の違和感を拭う為に確認するべき場所であった。


「心配はしなくても良い。もう許可はとってある」


「……仕事が早いね」


 彼女は僕に向かって手で大きな丸を作る。されど無表情ではある。


「……ところでなんだけれど、君ってそんなに表情豊かな子だったっけ?」


「昔からこうだったぞ。鉄仮面の鳩野と言えばすぐに私と分かるくらいには」


「やっぱり無表情じゃないか。ではなくて君の動きについて聞いているのだけれど」


「今は後輩が一緒に居ないからな。先輩としてちゃんとした姿を見せないといけないというプレッシャーも無い。だから、ゆったりしているところはあるかもしれない」言って、彼女はまた片手でピースをする。


 ゆったりしているどころの次元では無いような気がするけれども、人が違うみたいだ。見るからに本人なのだけれど自分の感覚を疑いたくなる。


「それに信頼している人間の前で素を出すのは別に変なことでは無いだろう」言いながら、決めポーズ。


「…………」


「当たり前だが、私は誰しもがそうであるように信頼をおいた人間の前でしか、本当の自分というものを出そうとはしない」

「分かってくれるだろう?」再度、別の決めポーズ。


 ゴクッと唾を飲み込む。強く一際強く。多分、何か別の大事なものも一緒に喉奥へ沈んでいった。


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